嘘
嘘をつけない国があるらしい。
その国の人々は皆、嘘をつかない。
なんでも、その国の中では嘘がつけないというのだ。
何をどうしたらそうなるんだ?嘘をついたやつは殺される決まりでもあるのだろうか。
どうも気になるので行ってみることにした。
道中は特に何も無く、無事に嘘をつけない国とやらに到着した。
人々には特に変わった様子はなく、罰に怯えているようには見えない。入国する際にも罰があるなんて聞かなかったし、罰に縛られているわけではなさそうだ。嘘をついても死ぬなんてことはないだろう。
どうやって嘘をつけなくしているのかは分からないが、とりあえず嘘をついてみるか。
「俺はUFOを見たことがあるぞ」
...特に変化はない。どういうことだ。簡単に嘘つけるじゃあないか。
「実は俺、織田信長の子孫なんだよね」
変化なし。そよ風が心地いい。
「実は猫派より犬派なんだ」
変化なし。小鳥のさえずりが聴こえる。
「昨日から寝てないんだ」
変化なし。散歩中の犬がかわいい。
「こないだ足折っちゃって大変だったよ」
変化なし。陽気に当てられてウトウトしてきた。
これだけ嘘を並べても何も無い。なんだ、嘘をつけない国というのはただの噂話だったか。そう思っていた。
「実は俺、幽霊だったんだ」
口にした途端、俺は倒れた。持っていた松葉杖が音を立てて転がる。
意識が薄れていく。死が迫るのを感じた。
──なんだよ、やっぱり嘘をついたら死ぬのかよ。