異世界転生
気がつけば、そこは羊水だった。
その時、知覚していたわけではない。後から考えればそうだったということだ。
暖かい、優しい液体、プカプカと浮かぶ。
その中では思考は必要無く、ただ活力のみが全身を駆ける。
そして眠る。
動いて、眠る、
それをひたすら繰り返し、産まれた。
そうだったのだと、今では思い返せる。
ボクは今、6歳になっていた。
カイゴ村、何処かで聞いたような名前の村だが、山あいの小さな村だ。
モンスターも少なく、ゴブリンがたまに畑を荒らしたりするが、ゴブリンより野生の鹿の被害の方が多い。
その鹿も、踏むと矢が飛び出すという簡単な仕掛けで殺す事が出来る。
殺したあとは、鹿肉のバーベキュー大会となる。
まぁ、この罠を考えたのは僕なんだけどね。
この世界の人達は、剣や魔法の技術を持ってるので、こういう細かい工夫はあまりしない。
鹿を捕らえるのに、踏み板式の自動弓矢を作るよりも、魔法で眠らせた方が早い。
そんな風に考える。
確かにその通りだが、鹿が来るまで、魔法使いが小屋に隠れて畑の番をずっとするのも何かマヌケである。
魔法使い的には、番をしながら本でも読んでいれば良いと考えているようだが、ボクの作った罠なら、人はいらない。
畑の周りを柵で囲い、野菜を食べやすい、鹿の通り道を作り、罠を作動させる。
これだけだ。たまにゴブリンもこの罠にかかってしまうのだが、ゴブリンは食べられないので、山に埋める。
魔物は仲間の死体を恐れない。
ただ、警戒心を強め、自分達を殺せる存在を知覚して、攻撃性を高めるからだ。