6話 古代人
目が覚めると知らない天井だった。
なんだか体にも違和感がある。特に股間だ。まるで…
いや、考えるな。見るな触るな。
今考えるべきことじゃない。
まずはこの状況だ。
知らない天井。
違和感のある体。
人類にあるはずのない股間の異物。
どうやら私は古代人の体に憑依してしまったらしい。
それも…いや、考えたくない。
なんだかんだと考えていると、部屋のドアが開いた。私にそっくりな人が入ってきた。
「シンメ…いつまで寝てるんだ?」
………
「ウワアアァァァァァァァアアアアアアア!!!!」
「は!?ななななんだなんだいきなりウワアアアアア!??!!」
「ドッペルゲンガーだああああァァァァ死ねぇぇぇ!!?」
「やめろォォォォ!?死にたくないぃぃぃぃ!?!!というかドッペルゲンガーじゃない!?こっち来るなぁァァ!!!」
そういって彼は逃げていった。
「逃げるなぁぁぁぁ!!!」
そういいながら彼を追いかけて部屋から出る際に鏡で見た自分の姿は…
憑依前の私とそっくりだった。
つい、その場で制止してしまった。
一体どういう事だ?
どうして私にソックリな奴が2人もいるんだ?
……。
「ウワアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ァァァァ!!?!ドッペルゲンガーが二人もいるぅぅぅぅぅ!?嫌だ嫌だ嫌だまだ死にたくはないッ!!!」
昨日は自分の部屋で寝たはずだ。
昨日失敗した召喚の魔術が原因でドッペルゲンガーが発生したのか!?
むしろ私はもう既に死んでいる…!?だからドッペルゲンガーに憑依したとか……!?
「なんてことだぁぁぁぁぁぁ」
「おい、シンメ?」
どうやらドッペルゲンガーは"シンメ"というらしい。
「おいシンメ!」
ん?なんか怒ってる…?
肩をガシッと掴まれた…
「お前いつまで寝ぼけているんだ!?母様に怒られるぞ!?」
あ、ママが怖いのかこの人。かわいいな。愛し合おう。
「…なんでいやらしい目で見てくるんだ?さっきはドッペルゲンガーだとか言って…頭おかしくなったのか?」
かなりハッキリという人なんだなぁ…
…ちょっと待て。今、ドッペルゲンガーに肩掴まれているじゃないか。
なんて考えているとだれかがこちらに向かってくる。この人のママか?
「そんな所で何やってるのよ…?!早く準備しなさい!」
と、まぁ、怒鳴られた。
でもおかしいな。親っていうのはもっとこう…愛情に満ちた目をしてるものではなかったか? このママさんの目は…
「シンメ!なにぼさっとしてんのよ!!また痛い目にあわないとわかんないの…!?!」
「え?痛い目?どういう事?まって怖い。怖い怖い怖い。やっぱりママさんはドッペルゲンガーのママさんだ。待ってこっちに来るな。うわあああああああああ殺される死にたくないいやぁだああああ!!!!」
私はママさんとドッペルゲンガーの不気味さと恐怖でパニックになり泣き出してしまった。もちろん逃げるために走りながらだ。
「…え?…お、おい!?どうしたんだ急に!?
か、母様…!シンメ、さっきからまるで別人みたいにおかしくなっていまして…今回だけは見逃してやってください!!」
「…確かに中身は別人みたいね」
「もしかして入れ替わりの魔法…?たしかあれは24時間たてば元に戻る魔法だったから…24時間で元に戻るのか……」
「そこのお前。名前は?どこから来たの?」
「ウワアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「話せそうにないわね」
30分後…
捕まった。簡単にいうと、この体ももう一人のそっくりさんもドッペルゲンガーではなかったらしい。だから生きてる。良かった…
でも…
でも本当にもったいないことをした。今の状態は24時間しか保てないとさっき言っていたのに30分も時間を無駄にしてしまった。
せっかく古代人になったのに30分も無駄にしてしまった…
「落ち着いたか?」
私が冷静になったことに気づいて話しかけてきたこの人はアスカという名前らしい。
そういえばこの家は魔法の研究をしているらしい。
と、なればやる事はひとつ。
「おい!アスカとやら!」
「うわ!?い、いきなりなんだ!?驚いたぞ……」
「私に魔法を教えてくれ!」
「は?」
「教えろください!!!」
「命令してるのかお願いしているのかよくわからん…」
土下座をしてまでお願いしているのだから教えてくれるだろう…へへっ
「…まあ、いいだろう。教えてやる」
「ありがとうございますっ!!」
アスカとやらが呆れ返った顔をしているのは無視しておこう。