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中華花街物語  作者: 稲穂
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今回、初めてこのサイトを利用します。初心者です。

使い方間違っていたりしたらすみません。

シリーズにちゃんとなっているか不安です。。。

この作品は某pi●ivにも連載しております。


中国や韓国をメインとした、ある一般平民のお話です。

乱文ではありますが、お楽しみくださいませ。


Twitter @piyosn

 私、田美礼(みれい以下美玲)には肉親というものがいない。ぱっときいたら大体の人は可哀想だと思うか、それでなくても哀れみの目を向けてくることだろう。だが、そんな心配もご無用、物心ついたころから養父(じぃ)に育ててもらったおかげですくすくと育っている。ちなみに、じぃは私に対して肉親でないという言葉を放ったことは一度もない。じゃあ何故知っているのか、とおもうかもしれないが、まぁ、勘だ。というか、それを幼馴染みの蓝龙(せいりゅう以下青龍)にいつだったかぽろっとこぼした時にまわりにきいてきてくれたのだ。青龍は物心ついた頃にはもう隣に居た、いつも居て当たり前な存在だ。青龍と呼ぶのが小さいわたしには難しかったのか、兄さんと呼ぶようになり、それが抜けなくて今でもじつのきょうだいではないのに兄さんと呼んでいる。私と丁度5つ歳が離れており、もうすぐ朝廷の外朝の徴兵試験を受ける、と言っていた。まぁ、じぃ仕込みの武術があれば一発合格どころか、体探人(ちぇたみん、スパイ)に抜擢されるんじゃないかなと思っている。

 とまぁ、ここまでつらつらとわたしの出生について語ってきたわけなのだが、じぃも中々に苦労してきたひとのようだった。村の人に聞いてみてもいつだったかわからないがいつの間にかいて、なんだかんだあって助けてもらったなぁ、ぐらいのしょーもないことしか返してこない。取り敢えずまぁ、うまれたときからの育ちでは無いってことだ。その上、じぃは元武官であったとも本人が言っている。武官である役人が定年を迎える以外で朝廷からでてくることは何か問題を起こした、としか考えられない。その上、じぃは私にみっちり教え込めるほどの教官としての才もあり、中々に強く、朝廷にいたころは重宝されていたのではないか、と平民なりに思っている。だがまぁ、さすが元武官といったところか、超堅物で頑固だ。押しても押しても効きもせん。そこだけが、なんとかなってほしいところだ。

 私の住む村は宮廷、花街、都とくるような場所で、小さいながらも花街の華やいだ空気と市場の活気、それらが流れ込んでくるところだ。そんな感じの村であるからか、村の人はとても温厚でみんな優しい。とても快適な場所だ。だが、村を下りるとそこはあっという間に、下級民族、老百姓が住んでいる区域へと変わる。花街も一筋はいれば人身売買も強姦だってあると聞くが、そういったものは当たり前の世界だ。いつ行っても汚臭が漂い、地面にも汚物がそのまま放置され、そこらかしこで耳が腐るような声が絶え間なく聞こえる。



 其の街の名を妖来という。



 この国の名は秦韓(しんかん)。現王が即位された時に後秦(ごしん)から変わった。この国の特産は絹、銀、そして女だ。この国の女に対する情熱は並々ならぬもので、普通は区域わけされない花街の中でも大きく二つの区域に分けられている。まず、夜伽を専門とした水泡夢(ありむ)や、対に夜伽が絶対に行われない摩天楼などがある。他にもお酌をするだけの麗であったりなど二つの区分からより細かく分けられている。私のような貧相なすがたをした奴でさえでも、底辺の花街に属さない遊郭や曲輪からお声がかかったりもする。いわゆる勧誘(スカウト)である。

 勿論、花街のなかの遊郭はこんなものではない。というよりかは勧誘せずとも志願者は山ほど勝手に集まってくるのだ。その集まってきた中からとくに優秀だと思われた者は禿という下働きになることができる。そこから幾年もの歳月を経て、端女郎になることができる。そこからまた歳月をかけ、実力が認められると、局、格子、太夫と階級をあげることができるようになる。太夫はみなさんもご存知、花魁と呼ばれる者であり、花街にいる女で憧れない者はいないという。しかし、この花街の頂点に君臨するとも言われる桜美館(おうみかん)という遊郭では、そこの主である紫萱(ずーしゅえん)という人が直々に街に出向き、勧誘をするという。勧誘というよりかは誘拐だ、という噂も聞いたこともあるが。まぁ、全く私にはかんけいのないことではあるが。

 そんなことを考えているうちに段々と悲しくなってきたのでそろそろじぃに頼まれたものを市に買い揃えに行こうと思い、準備を始める。よいしょと竹籠と財布と兄さんに貸してもらった本を持ち、家を出る。

「あれま!みー!どうしたんだい?じぃのお使いにでもいくのかい?」

「あぁ、おばさん。ちょっと市まで行ってくるように言われてなぁ。」

「そうかいそうかい。気をつけて行ってくるんだよ。」

「うん。おばさん。行ってきます。」

私は近所の人からは美玲のみからとってみーと呼ばれている。じぃがそう呼び出したからいつの間にか広まった感じだ。畦道を歩いていると、そこらかしこからの畑や家から声をかけてもらう。時々野菜をくれたりと、いい人たちばっかりだ。

 てこてこと歩き続けて約15分。目的の都最大の市についた。ざわざわという喧騒が昼でも夜でも続くこの街は、花街と同じく、眠らない街、と言われている。人混みを掻き分け、目当てのしなを確実に籠に入れていく。あらかた揃ってきたところで、この市にある兄さんの店に行くことにした。兄さんの店は、一応経営者は兄さんのお父さんの筈なのだが、実権は兄さんのお母さん、若輪(るぉりん)が持っている。やっぱり夫婦って男の人が弱くなるものなのか…

 そんなことを考えているうちに、兄さんの店、青果香店についた。

「兄さん。美玲だけど。」

奥の方に声をかけると、若輪が出てきた。

「あら、みー。久しぶりねぇ。まぁたそんな前髪してぇ…早く切りんしゃいよ。」

「あぁ、もういいって。前髪はじぃから言われてんだよ。」

私の髪は確かに長い。というか顔が隠れるぐらいだし、異常なんだと思う。だけど、じぃが伸ばせって言う。なんでかわかんないけど、取り敢えず逆らったらくそ怖いから理由もわからずに伸ばしてる。

「あら、そう…まぁ、じぃはみーには過保護だからねぇ。まぁ、青龍に会いにきたんだろ?さ、あがってらっしゃい。」

「あー。いや、今日は兄さんに本返しに来ただけだから。それにお使いの途中だし。」

「あれま!そうかい。なら、青龍呼んでくるから籠下ろして待ってなさい。」

と言いつつ、若輪は奥の方に消えていった。

若輪はよくいるおばちゃんだ。ほんとに。体だけでなく、心も大きいお節介おばさんだ。少し西の方のなまりが入っており、その頭にあるお団子は崩れているところを見たことがない。

「お、みー。よく来たな。」

店の奥からふらふらと兄さんが出てきた。てかこいつ絶対寝起きだろ。寝癖ピンピンだよ。

「兄さん。これ、この間借りた本。ありがとうね。お陰で政がよくわかった気がする。」

「ふぅん。そうか。ん、じゃあ皇帝に順来様がおつきになってから、妖来がますます荒れてきていることについてはどう思った?」

うわ、来た。兄さんは時々私にこうやって本の感想と共に問題を出してくる。それも、しっかりと読んでいないとわからないのが恨めしい。私は兄さんを少し睨みながら、頭を回転させた。

「あー…順来様はまだお若いから…だから、全ての政は正妻の妖麗様だと本に書いてあったから…で、妖麗様は大変お金に無頓着って聞いことあるから、そう言うこと?だから政が不安定ってことかなぁ?」

兄さんは私の回答を聞くと、少しふふんと鼻を鳴らせ

「及第点だ。」

と言いながらニヤリと笑った。

「はぁ!?なんでだよ!!私ちゃんと答えたよね!?」

「本の内容を丸ごと言うんじゃねぇっていつも言ってんだろ。お前の脳みそは藁でも詰まってんのか。」

「いや!!聞いたことも言ってんだろうが!!」

「はいはい。喧嘩しないのー。」

若輪の長閑な声ではっと我に返ったが、兄さんのニヤニヤとした顔を見て怒りが再熱する。

「なんで兄さんは笑ってんのよ!」

「いやぁ?ムキになってんなぁって思って。それに説明するときの口調が説明口調なんだよ。何回も言ってんだろう。」

「このっ「はい。青龍もみーを虐めないの。氷砂糖あるから食べて、頭冷やしな。」

そう若輪に言われ、私はしぶしぶ手を洗いに奥へ行く。青果香店は一言で言うと、果物屋と甘味屋の融合物だ。なんでも、北の方から来たというくれぇぷというものや、けぇきというものをこの店ではだしている。その甘い香りが奥では漂っており、怒りも忘れて鼻をひくひくさせた。さーっと出てくる冷たい水に手を浸し、ほうっと息をつく。顎の間に挟んであったお気入りの手拭きを手に押し付け、水気をとりながら表に戻ると、もうそこには氷砂糖をボリボリと食べる兄さんの姿があった。

「なんで先に食べてんの。」

「ん?君は僕より5つも年下の癖によくそんな口がきけるね?」

「兄さんの性格の悪さを考えたら、私の方が精神的に年上だと思うけど。」

「みーはわかってないな?この市一番のモテ男こと青龍君にそんな口の効き方でいいのかい?」

「兄さんは外面がいいだけだろ。」

「それは、僕の顔がいいってことを認めてるのかな?」

「市のみんなはそうなんじゃない?私はただのクズとしか思ってないけど。」

「あれれー。美玲ちゃん。反抗期かなぁ?」

「うるさいなぁ。」

「ふーん。そんな態度でいいのかなぁ?そろそろ時計も見た方がいいと思うんだけどなぁ。」

そう兄さんに言われ、はっと壁に掛けてある時計を見る。

と、この店に来た時から随分と時間が経っており、もうすぐ帰らないと門限に遅れてしまう。

「うわっ!やっべ、なんではやく言ってくんないのさ!!」

「今言ってやった僕に感謝すべきだと思うんだけど。」

兄さんの誇らしげな声を背中に受け止めながら急いで籠を背負っていると

「あらあら、みー。もう帰るのね。またいらっしゃいね!」

私がどたばたしているのに気づいた若輪も奥から出てきた。

「うん!おばさん、またね!」

そう言って、私は青果香店を後にした。

 たったっとリズムよく走りながらこれから帰る道順を考える。いつも市から帰る道順だと最悪、門限に間に合わない。しかし、いつもと違う道順で帰れば、門限までに帰ることができる。ふつふつとこみ上げてくる焦燥から思わず唇を噛む。急がないと。

 こんなにも私が門限にかき立てられるのにも訳がある。一度、だいぶ前に兄さんと遊んでいて時間を忘れて遊んでいたことがあったのだ。気づくと辺りは真っ暗で、小さかった私は恐怖で震えた。一緒に兄さんと家に帰ったのだが、兄さんが隣にいることもかまわず、じぃは私を思いっきり叱った。そこまでは予測できていたのだが、その後、野犬がうろつく外に2人で朝まで放り出されたのだ。

 できることなら、あんな思いはもうしたくない。意を決して私は今まで通ったことのない道に足を踏み入れた。いつも通る道とは違い、少し狭いと感じる。だが、周りの活気や店の雰囲気に大きな違いも感じられず、少し安心した。それなりの速度で走ってきたためか、伸ばしている髪が汗でペッタリと顔につき、鬱陶しい。致し方ないが、持ってきた紐で手早く髪を纏める。と、一気に視界が明るくなり、夕陽が目に入ってくる。思わず眩しさで目を細めた。

 少し走っていくと、いつも通っている道との合流地点に来た。ここまでくればもう5分もかからない。ふぅっと息を吐き、夕陽の位置を確認する。まだ、門限には半刻ほどありそうで、急いで来たおかげか、余裕そうだ。

「あら、みーじゃないかい!今日はその可愛い顔を出しているんだねぇ」

「みー!昨日ぶりだなぁ!どうだ、この汁食ってくか?新作なんだぜ!」

「お、可愛いお嬢ちゃんおでましだぞ!」

色々な顔見知りから声をかけられ、色々なものをもらう。いつもならそうするところだが、今日は夕餉の支度をしないといけないので、全て遠慮する。まぁ…汁はありがたくもらったが。

 どんどん歩いていくと、商店街の出口にきた。後ろを振り返ると、おばちゃんやおじちゃんが私に手を振ってくれていた。あったかい雰囲気に名残惜しさもかんじつつ、手を振りながら帰路を辿る。あともう少しで私の村の畑の畦道にかかる、というところでいきなり私の体が横に移動した。いや、そうじゃない。とてつもない力で引っ張られたのだ。ここは妖来でもないし、治安はいいほうだ。なのに、なんで私は誘拐まがいのことをされているのだろう。大変な状況の筈なのに、妙に頭が冴えてくる。冴えてくる筈なのに体は動かない。そんな葛藤を繰り返している間にどんどん元いた道は遠ざかっていく。

 夕餉の用意をしないといけないのに。

 門限に遅れちまうのに。

 そう思っているうちに腹に鈍い痛みを感じ、私は意識を失った。

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