復習1 メリルの初夜
また更新が遅くなってもなので、幕間挟みました。
メリル視点のおさらいのお話です。
前話を読んでいない方は、先にそちらを読んでからこちらを読んでいただけると幸いです。
ドアが閉まると同時に、私はベッドの中で今日あった出来事を一つ一つ思い起こす。
今日あったこと、と言っても、今夜、それも一時間程度の間に、あいつ―シンから言われたことが中心だが。
「あ、自己紹介って、結局どうすればいいのか聞いてない」
全く、ちゃんと説明してくれなきゃ困る。これから私の教科書になってくれるんだから、私がわかってないこと、全部教えてくれないと。
「でないと、天界に帰れないじゃない」
私の目的は、シンと共同生活をすることじゃない。大天使のテストに合格して、天界に戻ることなんだ。そのためなら、シンを存分に利用するし、言うことだって聞くつもりだ。
だって、今の私にはあいつしか頼れるものがないのだから。
「教科書は捨てられちゃったし」
おそらく、明日には灰になってるだろう。せっかく持ってきた、思い出の品だったのに。―まあ、思い出と言っても、大したものではないからいいのだけど。
しかし、眠れない。
どうしてこうも、人間界の寝床って固くて寝心地が悪いのかしら。
「人間も、雲の上で寝れば、こんなまがい物の寝床でなんて寝られなくなるわ」
天界ではずっと、雲の上で寝ていた。日が落ちると同時に、ぐっすりと眠ることができる雲は、朝になるまでに疲労を完全に消し去ってくれる。
対して、この寝床―確か、ベッドという―は、とても柔らかいとは言えない代物だった。これじゃあ、次の日まで疲労が残ってしょうがないだろう。
「あ、だから人間って短命なのかしら」
聞いたことがある。人間は天使の約四分の一の寿命しか持たない、と。それは、シンがやってきた日本のように、医療技術?が発達しても変わらない。
しかし、羽がある以外の構造はほとんど同じで、私みたいな羽をもたない天使と比べると、その差もほとんどないに等しい。単に、天界に生まれたから天使、地上に生まれたから人間というだけなのだ。
遺伝子的な構造もほとんど同じなのに、どうして天使のほうが四倍も長生きなのだろう―と、授業で思ったのを今でも覚えている。
「その時は、天使はより神に近しい存在だから、って教わったけど…もしかして、こんな寝床で寝てるからじゃないの?」
うん、きっとそうに違いない。いつもこんなので寝てるから、日々疲労がたまって最終的に早くに老衰してしまうんだ。
あれ?もしかして私、ここにきていきなりすごい発見しちゃったかしら?
「もしかしたら、天界で表彰されちゃったりして!」
ともなれば、早く天界に帰ってこのことを報告するためにも、テストに一発で合格しなくちゃ。
そのためには、やはりあいつ、シンは重要。そして、より多くを身に着けるためには、彼に気に入られるしかない。
「天界の学校でも、同じ方法で何とかなったし、行けるわね」
そうとなったら、今日教えてもらったことをしっかりと思い返して、明日までに自分のものにしなくちゃ。ああ、寝てなんていらない!
「ええと、まずは、自己紹介―は、また明日聞くとして、夜の挨拶が…」
一つ一つ声に出して確認すしていく私。
今日は、なんだか長い夜になりそう―
こうして、私メリルの、人間界初の夜は過ぎていった。
ありがとうございました。
次の更新はいつになるか…なるべく早いうちに投稿したいと思います。
三日~四日以内には、出したいなぁ、なんて(笑)
次話は、メリルに初めての宿題が出される予定です。裏切ったらごめんなさい。