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転生したので宿題です。  作者: あおい
2/11

一時間目 初対面

免許の関係で、更新遅くなりました。

待っていてくださった方、大変申し訳ありませんでした。

はじめからこれだと先が思いやられてしょうがないです…


「…で?」

 路上に座り込んで僕を睨みあげる、銀髪銀眉の小さな天使、メリル。その背景はすでに日が落ち、街灯もないため真っ暗であり、月明かりを反射したメリルの銀髪だけがとても浮いて見えた。

 よく見えないが、どうやらレンガ造りの家のようだ。窓の数からして三階建てだろうと予想がつく。そして、あたりの家で唯一この家だけ明かりがともっていない。

 つまり、この家はだれも住んでおらず、リルが僕たちに用意してくれた家なのだということが分かった。

「というわけで、メリルの世話役兼監視役を務めることになった、三浦信(みうらしん)だ。これからよろしく」

「よろしく、じゃない!ですよ!どういうこと!?ですか!?」

 何が納得いかないのだろうか、僕の自己紹介に異議を唱えるメリル。しかし立ち上がる様子はなく、掴みかかったり、ここから逃亡する、なんてことはないだろうと踏んで、この場で話を続ける。

「どういうことも何も、僕もメリルのお姉さんのリルから頼まれたばかりなんだ。詳しいことは、メリルのほうが知っているんじゃないか?」

 聞くと、メリルは何か知っているのか、口をきゅっと結んで固まった。

「…知ってるなら、教えてくれないか?でないと、僕の立場と、メリルの扱い方がわからない」

「え、ええっと…い、嫌!ですよ!」

「なんでだよ!」

 わけもわからず拒否される。別にスリーサイズや年齢を聞いたわけではないし、デリケートなことは何も聞いていないはずなのだ。拒否されるわけがわからない。

 理由を知りたくて、何かヒントがないかとメリルの様子を観察―しようとしたが、するまでもなかった。何やら気まずそうに目をそらして、何やら聞かれたくないことを黙って隠している子どものような、わっかりやすい表情をしている。

「…どうやら、僕が知るとメリルには不都合があるようだな…主に、めんどくさいだとか、そういう感じで」

 揺さぶる目的で言うと、一瞬肩を跳ね上げるメリル。実にわかりやすくて助かる。

「そ、そんなことない。ですよ」

 一瞬で嘘だとわかるほど言葉に詰まっており、顔中に冷や汗をかいていた。

「そうか、じゃあ、リルに確認するしかないかな?」

 そういって、メリルに背を向けて、先ほどもらったメリル監視装置をおもむろに取り出す。別に通信機能なんてついてないと思うが、リルに聞くふりをするには充分であった。

 僕が取り出した装置に通信機能がついていないことなど知らないメリルは、本当にリルに連絡されると思ったのか、慌てて「い、いう!ですよ!だから、お姉さまへの連絡だけは…!」と、涙目になりつつ必死に縋り付いてきた。

「よし、じゃあ、素直に話してくれ」

 待ってましたと、僕はしゃがみこんでメリルと視線を合わせると、目をじっと見て話し始めるのを待った。

「…とりあえず、中に入りたい。ですよ」

「あ、そうだったな」

 話を聞き出すことに注力していたので、うっかり今ここが外で、路地に座り込んでる状態だということを忘れていた。

 すっと立ち上がると、すぐ隣にある、リルが用意してくれたらしい家のドアに手をかけ、引く。鍵もかかっていなかったようで、何の抵抗感もないままドアは自然に開いた。

 しかし中には照明らしきものもなく、真っ暗な闇が広がっていた。これでは、どこに何があるか全くわからない。

 早く入って明かりを灯そう。そう思い、中に踏み込む。

「ちょ、ちょっとまって。ですよ」

 一歩踏み込んだあたりで、メリルに呼び止められた。

「ん?」

 振り返ると、未だに地面にしゃがみ込んだままのメリルが、何か訴えるようにこちらを見ていた。

 どうしたのだろう。疑問に思っていると、メリルがすっと右手を差し出してきた。

「ん」

「ん、って…なんだ、その手?」

「立てないから、連れてって。ですよ」

「…は?」

 一瞬あっけにとられる。なんで?

「おいおい、いくら小さいからって、まさか二足歩行できないレベルとは思ってなかったぞ。生まれて一年の赤ん坊でも歩けるんだ。

 …まさか、生まれたばっかりだったとか言わないよな?」

「ちがう!ですよ!全く失礼な人間、ですね。…ほら、これをみて、ですよ」

 そういって、自分の両足首を指さすメリル。見ると、その部分が真っ赤に腫れ、こぶし大の大きさになっていた。

「おいおい…どうしたんだ、これ?」

 両足首を捻挫―骨折?―するなんて、どんな器用なこけ方をしたのか。と言うか、僕と同じくらいのタイミングでここにきたんだから、まだ何時間もたっていないのに、どうやったらこんなケガできるのか、不思議でしょうがなかった。

 するとメリルは、ばつの悪そうに。

「…さっき、お姉さまに落とされたときに、着地に失敗したの、ですよ」

「ああ、あのときか」

 放り投げたと言っても、さすがに妹がケガしないように考慮したのかと思っていたが、そんなことはなかったらしい。リルは本気だった。

「それで、立てなくなったから、抱えて欲しい、と」

 小さく頷くメリル。若干恥ずかしいのか、少し顔を赤くしている。そんな恥じらっているメリルに気を配りつつ、僕はそっとメリルを抱きかかえる。

 抱え方が悪かったかお姫様抱っこのような形になってしまう。そのせいか、メリルのほほがさらに赤くなった。そんなに赤くなられると、こっちまで恥ずかしくなってくるから困る。

 …裸で貝から生まれてくるようなイメージだったので、このくらいなら恥じらいも何もないと思ってたけど、意外とピュアなんだな。

「…ねぇ」

 メリルが弱々しい声で呼びかけてきた。たぶん、恥ずかしくなって下ろしてくれとか言うんだろう。

「すぐ家に入るから、ちょっと待ってな」

 言いつつ、開けておいたドアから中に入る。真っ暗な部屋の中では、やはりメリルの銀髪は一層輝いて見えた。

 とりあえずドアの近くにメリルを据えて、明かりがないか探してみる。窓から差し込む月明かりだけが頼りなので、何かにぶつからないように慎重に進む。しばらくして、テーブルの上に一つランタンが置いてあるのを見つけた。

「…ランタンなんて使ったことないけど、どうすればいいんだ?」

 テレビとかでよくつりさげて使っているのを目にしたが、ランタンの点け方なんてしっかり見てなかった。

「たしか…ええと、この辺にスイッチがあるんだっけ?」

 なけなしの記憶を頼りにして、手探りで着火スイッチを探す。すると、指の関節一つ半ほどの大きさの、ねじ回しのようなつまみが右手に当たった。

「おお、あった。あとは、どっちかに回せば…」

 時計回りに回して―失敗。じゃあ、と反時計回りに回すと、カチッ、という軽快な音とともに、炎が灯った。

「お、できた!」

 ついたばかりの炎は風が吹くでもないのにゆらゆらと揺れており、マッチ売りの少女はこの火に幻覚を見たのだと言われると頷ける。

 ランタンの明かりは思ったよりも明るく、部屋全体を日常生活ができるくらいには照らしてくれている。

 明るくなった部屋を見渡すと、床はフローリングになっおり、その上にはふかふかであったかそうな白い絨毯、その上に二人掛けのソファーが設置されている。ソファーのドアから向かって右側には茶色いテーブルと、それを囲むように同色の四足イスが四脚。どれも木製のようだ。さらに向こう側にはキッチンのようなものもある。しかし、パッと見た感じどれも現代日本のようなものではなく、どちらかと言えば江戸時代や中世~近世ヨーロッパに見られそうな作りだった。―つまり、火をおこすところからやらなくてはならない。

 この分で行くと、おそらく電気やガス、水道などもないだろう。はてさて、まずはここでの生活に慣れるところから始めないといけなさそうだ。せっかくなら、元の日本に転生させてくれれば―ってのは無理か。

「…なにしてるの?ですか?」

 きょろきょろしていたのを怪しまれたのか、メリルがいぶかし気にこちらを見ていた。声も若干引いている。

「いや、一応これから生活するところをしっかり見ておこうと思って…ここって、近くに井戸とかあったりするのか?」

「私が知ってると思おう?」

「思ってるから聞いたんだけど…」

 この言い方だと、どうやら知らないらしい。僕の知らないことを知っててもらわないと、この先大変なんだが…。

「ま、明日から考えればいいか。とりあえずメリル、また抱えるぞ?」

 言うが早いか、先ほどと同じ要領でメリルを抱え、近くのソファーに座らせる。そして、僕もその隣に座った。

「…なんで隣なの?ですか?」

「ここ以外、メリルの話をしっかり聞けて、かつ座れる場所がないからだ」

「床に座っては…」

「いや、痛いじゃん。しかも、疲れるじゃん」

「だからって、乙女な天使の隣に、無許可で、しかも無遠慮で座る?ですか?」

「乙女な天使なら、こんな地上に落とされたりしないだろう?」

 ぐっ、と悔しそうに押し黙るメリル。図星を突かれて何も言い返せないようだ。

「…話を進めよう。ここで、メリルは何をしなきゃならないんだ?」

 僕が聞くと、メリルはうつむきがちに答え始めた。

「あなたにわかるとように言うと、再教育を受けなきゃいけないの。ですよ」

「まぁ、そこまではリルの話からなんとなく分かってた。で、どんな再教育を受けなきゃならないんだ?」

「ええと…地上教育カリキュラムだと、人間生活、社会活動、及び、集団活動における責任感、の三項目を、定期的に行われるテストまでに身に着ける、だったはず。ですよ」

「へぇ、カリキュラムまであるのか。結構しっかりしてるんだな」

 メリルが、ただ罰ゲームで地上に落とされたわけじゃなかったんだとわかった。と同時に、それならば僕もそのカリキュラムを満たすように、メリルを監視・補助しなきゃいけないのだと、自分の中で責任感が増したのを感じた。

「それで、そのカリキュラムに具体的な内容項目はあるのか?」

 あるならそれに従っているか確認するだけでよさそうだ。そう思ったが、メリルの返答はそれを否定する。

「ない。ですよ」

「ない?じゃあ、どうやってテストするんだ?」

「すべて、その時担当した大天使の見極め。ですよ」

 なるほど、項目に問わず、その大天使が認めればその場でクリアできるという事か。

 しかし、問題がある。具体的な内容項目がないと、何をすればいいのか、どんなことを意識させればいいのかがわからないから、サポートのしようがないのだ。

「…とりあえず、人間と同じ生活をすればいい、ってことになるのか?」

 僕の問いに頷くメリル。要するに、メリル《こいつ》としばらく共同生活して、メリルがテストに受かったら一人暮らし、って感じなのかな?

「わかった。それじゃあ、とりあえず自己紹介な」

「?どうしてそうなるの。ですか?」

 突然の会話の転換についてこれなかったのか、不思議そうに小首をかしげる。両足がぶつからない程度にぱたぱた揺らしているのも、その可愛らしさを強調している。

 ここで可愛さを出されても、しょうがないんだけどな。

「だって、ほぼ初対面だろ?だったら、自分はこんな人です、ってほかの人に紹介しないと。自分がどんな人間か―メリルの場合は、天使か、なのか知ってもらうことが、仲良くなるための秘訣だ」

「別に、仲良くなろうなんて思ってない。ですよ」

「じゃあ、秘訣とか関係なく―人間生活、の一部だ。これができないと、テストには100%受からない」

「やる。ですよ!」

 先ほどまでの嫌そうな態度とは打って変わって、ぜひやりたい!オーラを全身から噴出しながらこちらを見るメリル。その変わり身の早さは一周まわって感心してしまう。天使ってのは、どうしても地上にはいたくないと思おう存在なのか、それともメリルだけが特別そうなのか。

「…それじゃ、どうぞ」

 あきれ半分で、メリルの自己紹介を促す。

 対するメリルは、自信満々ではっきりと答えた。

「私は、メリル。メリル=ミザース。ですよ!」

 それだけ言うと、どやぁ、と決め顔をしたメリル。

 ―え?

「それだけ?」

 続きを待っても待ってもなかなか言わないので、つい聞いてしまった。

 しかしメリルは、きょとん、とするだけで、その続きを言うことはなかった。

「終わり。ですよ?」

「メリル…それは、自己紹介とは言わない」

「なんで!?ですか!私は、ちゃんと名前を名乗った!ですよ!」

 なんでって、こいつは、自己紹介をただ名前を名乗るだけの行為だと思ってるのか?

「メリル、自己紹介ってなんだか、説明できるか?」

「バカにしないで!ですよ!」

 メリルは再びどや顔を決めると、自信満々に答えた。

「自分の名前を言って、相手に伝えること、ですよ!」

 わき腹に手を当てて胸を張る。無い胸張っても何も揺れない―じゃなくて、なんでこんなに堂々といいきるんだ?

「違うぞ」

 覚え間違いは、すぐに訂正しなくちゃいけないな。これから大天使とやらにテストを受けさせられるんだから。

「違うの!?だって、教科書にはそう書いてあったのに!ですよ!」

「その教科書、今持ってるか?」

「これ!ですよ!」

 言いつつ、メリルはキトンの内側から一冊の本を取り出す。それを左手で受け取ると、まず表紙の「はじめての地上生活」という、なんとも胡散臭い文字列が書いてあった。

 中身をパラパラとめくってみると、これはこれはひどい内容。先ほどの自己紹介しかり、人間の文化についてはたいていのことは「神のおぼしめし」なんて書いてあって、どう考えても地上(人間社会)のことを教える気がない。

「なんだこれ?」

「何って、天界の学校で使ってる、必修科目「地上社会」の教科書。ですよ?」

 これが教科書?本気で言ってるのか?

 ここに来る前、日本でも教科書の内容がひどいと思ったことは多々あったが、ここまでじゃなかった。何をどうしたらここまでひどくできるんだ…?

 とりあえず、使い物にならない以上に、邪魔にしかならなそうな教科書は暖炉にポイした。後で火をつけておこう。

「あー!なにするの!ですか!」

 真っ赤になって抗議するメリルだが、足を痛めているせいで取りに行けないようだ。必死に僕を睨んで「とってこい!」と訴えてくる。―まぁ、無視するけど。

「あのな?あんな教科書ともいえないようなふざけたもの、さっさと忘れた方があとあとのためだぞ。参考にすればするほど、合格点から遠のいていく」

「だからって、捨てることないじゃない!私の学生時代の思い出の一つなんだけど!ですよ!」

 確かに、いたるところに落書きが施されていた。この分じゃ、教科書の丸暗記はできていいても、内容の基本的な部分は全くわかってないだろう。それでなくても、書いてる内容は全く使い物にならないのだから、基本を理解せずに丸暗記していいものじゃない。

 ―とか言っても、頬をぱんぱんに膨らませて憤慨しているメリルには通じないだろう。なので、聞き分けのない小さい子を諭すような調子で伝える。

「あのな、あれは天界用の教科書だろ?メリルは、美容の本を参考にしながら料理を作るか?」

「…作らない。ですよ」

「だろ?それと同じことだ。あの教科書は、地上生活用じゃない。あんなもの見てても、地上生活は上手くならない。だから、変に影響受ける前に、早いとこ捨ててしまった方がいいんだ。―わかったか?」

 ぐっと押し黙るメリル。それから少しして、小さく首を縦に振る。若干涙目になっているが、とりあえず理解してくれたようで何よりだ。

「でも―そしたら、どんな教科書を参考にすればいいの?ですか?地上生活について書いてある教科書は、あれだけなの。ですよ」

 天界の教育レベルが驚くほど低い。なんて思ったが、そんなことは後回しだ。

 言い方からするに、今メリルに「教科書なんてない。慣れろ」というのは簡単だが、しかし納得するわけがない。それどころか、できることがないからと何もしなくなる気がしてならない。

 だからと言って、新しい教科書なんてものはないだろうし、そもそも、地上生活全般について書かれた教科書なんて入手しても、実践で役立つとは思えない。自動車や自転車と同じで、要は慣れが必要なのだから。

 そうなると、手っ取り早いのは、身近な人物をまねる、という方法だが、メリルの身近な人物って、リル以外に誰が―あ、そうか。

「教科書ってわけじゃないが、僕が参考だ。僕が生活するように、メリルも生活すればいい。わからないことがあったら、僕に聞く。教科書の代わりみたいなものだ。―で、どうだ?」

 これが、今考えつく中での最適解だった。メリルの身近な人間なんて、僕以外―僕も出会いたてだが、他の人に比べればまだましだろう―に、いない。なら、話は簡単で、僕がメリルの参考になってやればいいんだ。

 この提案に、メリルは少し考えるように下を向いたが、数秒もたたないうちに顔を上げて、納得したような表情を向けた。

「わかったわ、ですよ。これから、あなたが教科書ね、ですよ」

「よし、決まりだ。あと、あなたじゃなくて、信、な。三浦信」

「わかったわ、シン。ですよ」

 頷いて、少し笑って見せるメリル。

 これで、とりあえずの問題は解決した、かな。

 そうと決まれば、今日はもうお開きにしてしまうのが良いだろう。夜も遅いようだし、早寝早起き、という健康習慣も人間生活の一端だ。

「それじゃあ、今日はこの辺にして寝るぞ」

 足を怪我しているせいでベッドまで行けないであろうメリルを軽々と抱えて、階段に向かう。そんな俺をメリルは不思議そうにじっと見ていた。

「どうした?痛むか?」

「いえ…これも、人間生活の、地上生活の一つなのかな、とおもって、ですよ」

「と、いうと?」

「もう三回目だからかもだけど、私が何も言わなくても抱えてくれたじゃない、ですよ」

 ああ、天界だと、こういう人間界の当たり前のことすらやらないのかな?

「そうだよ。これが人間社会が育んできた―いや、他の動物でも、かな。”助け合い”ってやつだ。困ってるやつがいたら、何も言わなくても助ける。助けられた方は、助けてもらったお礼に「ありがとう」って感謝を伝えるんだ」

 暗に、「ありがとう」を言え、と強要しているみたいでいやだったが、しかしこれから素直に礼も言えないんじゃ話にならない。少しばかり強引でも、初めから基本をしっかりと叩き込んだ方がいいのは確かだ。

「そう―じゃあ、ありがとう、シン。ですよ」

 恥ずかしかったのか、言ってる途中で顔を伏せてしまうメリル。本当は目を見て言い切れると良いんだが―まぁ、最初からできたら僕はいらないだろう。

「それから、その不自然な「ですよ」とか「ですか」はなくした方がいい。かえって相手に失礼になってしまうときもあるから」

「そうなの?じゃあ、これからはつけなくていいのね!」

 やはり無理してつけていたのだろう。不自然すぎてどうしようもなかったので、日常ではなくした方がやはり自然で良い。

(敬語とかも練習させないといけないな)

 これからは目上のひととも会うだろう。目上でなくても、相手に敬語を使う場面は多々あるのだから、早いうちに身に着けさせた方がいい。

 会話したり考えているうちに、二階についた。やはり寝室になっているようで、部屋は四つあった。そのうち向かって右側の一番手前の部屋をメリルに行ってドアノブを回してもらい、中に入った。

 クローゼットや引き出しなどの家具は一式そろっており、カーペット、時計などの調度品も最低限とはいえしっかり準備されていた。

 窓側に設置された、大人一人が悠々寝られるベッドにメリルを横たえる。小柄なメリルだと、だいぶん多くの部分が余ってしまうが、まぁ問題ないだろう。

「それじゃあ、また明日。おやすみ」

 そういう僕を不思議そうに見ると、メリルは何か理解したように目を細めて、「おやすみ」と返してきた。

 真似したり、出来事を理解するのは早いみたいだ。

「おう。明日から頑張ろうな」

 言って、部屋の外に出てドアを閉める。寝息はまだ聞こえないが、しばらくすれば寝るだろう。

「さて、僕も寝ようかな」

 言いつつ、そういえば歯ブラシとかどうなってるんだろう、と考える。風呂もだ。

「―ま、今日はいいか。明日聞いてみよう」

 誰に?―まぁ、多分町の人かな。

 誰に話すでもなく、僕は独り言を言いつつメリルの斜め向かいの部屋に入り、靴を脱いでベッドにダイブした。睡魔は異常とも思えるくらいすんなりやってきて、僕はすぐに夢の中に意識を飛ばすことになる。

 ―また、明日。

 誰に言うでもなく、一人で思って、眠りにつくのだった。

はい。と言うわけで、二人の初対面会話でした。

自分の中でもキャラが固まり切ってないので、変なところがあったらコメントしていただけると幸いです。


次回更新はいつでしょうか…明後日仮免許なので、しあさってあたりになるかな?と思います。

次回、「復習」です。

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