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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、俺(トゥルーエンド)
329/332

俺、今、俺 恋バナ聞かされ中

「あ、勘違いしないでくださいよ」


 俺のドキッとした顔を見て、慌てて百合ちゃんが訂正する。


「勇くんが話しかけてくるのが嫌だったわけではないですよ。問題は私で……」

「あ、例のお兄さんだよね」


 でも、喜多見美亜(あいつ)が余計なこと言って、


「……はい、私なんかにここにいる資格は……」


 ちょっと百合ちゃん鬱入っちゃって、どうすんだよこれ。精神が不安定になって、みんなの結束が緩くなったらやばいよ。

 宇宙の危機だよ。

 と思ったのだが、


「あるに決まってるんじゃん」


 あいつがあっけらかんと言い、


「何? 百合さん何悩んでるのかな?」


 萌夏さんが関心を示す。

「ああ、百合さんには子供の頃から憧れの人がいて ほのかな恋心を持ってたけど……」

「勇くんに、心変わりしたってこと?」

 まあ、性格には憧れのお兄さんよりもその妹との愛憎入り混じり合う関係の方が重かったんだけどね。

 どっちにしても、

「なんだそんな話? それなら私なんかどうなるの」

 確かに。

建人(たける)と付き合うとか言ってみんなの前から消えたのに」

 俺達の前から萌夏さんが消えたときには従兄の建人さんと良い感じの雰囲気だったからね。

「それなのに年下の高校生が気になってこんな遠い宇宙まで引っ付いてきてしまってるし」

 なるほど。客観的に言われると萌夏さんやばいよな。正直、宇宙(ここ)まで、ちょっと面白そうくらいでついてきてるよね。

 ただ、その決断に、絶対に嘘も後悔もないようなのがこの人の凄いところ。

 さすがのエキュピリアン——パーティピーポー萌夏さんだ。

 それに、

「先生だって武蔵さんを略奪愛しようとしたの手伝わせておいて、今……あれ、私、教え子相手にこんなことしてて良いのかしら?」

 こっちのほうがもっとやばかった。

 考えてみれば、武蔵さんの奥さんに訴えられてもしょうがないようなこと手伝ってたよな。結局、稲田先生はそんな事はできない人で、別の人生(ループ)においても、どこかで思いとどまって身をひいているのであったが……


「まあ今がどうなのかで良いでござる」


 ユウ・ランドがしみじみとした様子で言う。

 そういやこの聖騎士も、ここにいる経緯が変だよな。

 俺が入れ替わってゲーム世界(異世界?)にいた間は、ユウ・ランドは地球にいた。実際の交流がほとんどなかったんだよね。

 なのに、結婚しようとかいってPCの画面から突然飛び出してくるし。


 まあ、とはいえ、ユウ・ランドは、ゲームでの俺自身のアバターになってもらっているのだから親しみがあるし、実は、別の宇宙にいて俺の因果のつながりがあった唯一の女子であった。霊力に優れた聖騎士である彼女もそのつながりをなんとなく感じてくれているのだと思う。

 それにロータスさんがあおるもんだから……


「そういやランドさんって向ヶ丘を好きになったのって最近なのよね。というか直接あったのも今日なのよね」

 和泉珠琴がちょっと悪い笑みを顔に浮かべながら言う。

「そ……そうでござるが」

 なんとなく質問を察したユウ・ランドがちょっとキョドりながら答える。

「そういうとこどうなのよ」

「何がで……ござるか」

「もう、話の流れから分かるでしょ。ランドさんの恋バナよ恋バナ!」

「はっ、拙者でござるか?」

 真っ赤になるランド。

 ものすごいうろたえぶりで、


「あれ、なんか揺れた」


 まずいよ。

 空間が揺れている。

 みんなの因果をたどって宇宙のコントロールを得ているのに、ユウ・ランドの精神が乱れてしまうとバランスが崩れてしまう。

 これは、なんか話題をうまく変えたほうがよいが、

「やっぱ女騎士と言ったらあれだよね」

 下北沢花奈が話し始めたが——あまり良い予感はしない。

「なんでござるか……」

「……体は支配されても心までは」

「?」


 下北沢花奈が女騎士といったら定番のオークネタを思い浮かべているようだが、もちろん異世界人には全く通じてないというか、やっぱりそんなの起きてないんだよねリアルな異世界ではってとこだが、


「そういう花奈さんはどうなのよ」


 安心しきっていたところに和泉珠琴の容赦ないツッコミをあびる下北沢花奈(眼鏡っ子)

「僕ですか?」

「そう、付き合ってた人とか……好きな人とかいなかったのかな?」

「好きな人? それって……」

「……」

「嫁ということですか?」


 いや違うと思うぞ花奈ちゃん。

 おまけに、


「嫁? 下北沢さん、女の人が好きなの?」


 稲田先生が素で質問している。

 それは、たぶん、それこそ次元(・・)次元の違う質問だ。

 ひとまず先生の質問は無視して、

「……まあ花奈さん()の話は機会があればということにして……それよりも……」

 和泉珠琴は振り返り、

「緑の話も聞きたいな」

「!」

 ひえ! 宇宙が今一回転したような……

 キョドりすぎ、キョドりすぎだよ生田緑(女帝)さん。

 普段あれだけリア充のトップ然として合コンでも冷たい言葉でM系男子を悶絶させまくっていたのに、自分が攻撃されると突如一番乙女になって、

「……わ……私のことはともかく……他の誰でもよい……」

「誰でも?」

「誰でもじゃなくて……み……美唯ちゃんはどうなのよ!」

「え、私ですか?」

 おっと、中学生に助けを求めたが、

「お姉ちゃんがあこがれでしたが……初恋はやっぱり勇お兄ちゃんかと」

「……」 

 大胆に即答されてしまって絶句する女帝。

「……そうだ……珠琴はどうなのよ。珠琴は。人のことばっかり煽ってるけど……」

「え、私?」

「そう」

 話を和泉珠琴にふるのだが、

「……私ねえ……私家庭事情がああだったじゃない……ちょっと親切にされたぐらい……チョコひとつもらったくらいで……すぐに男子好きになって……」

「ああ、ごめんなさい……珠琴、その話今度聞く……」

 このまま聞いてたら宇宙が鬱に入っちゃいそうな身の上話から女帝は逃げて、

「……じゃあ、美亜はどうなの? 美亜は今まで好きだった人とか……」

「私? 私は……そうね……」


 喜多見美亜(あいつ)が口を開きかけた瞬間、


「あっ」


 俺は頭上を指し示しながら言う。


「セリナたちの戦いが終わるみたいだ」


 暗きモノたちの大軍団が爆発する瞬間であった。


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