俺、今、俺 黒思い出し中
この宇宙を守るために、その完全なコントロールを得ようとしている。それが、今、女子たちと協力してやろうとしていることだ。
俺を復活させるためにセリナが無数に繰り返した歴史。因果が練りこまれ俺の魔導回路がくまなく通った宇宙。この宇宙は俺自身といってよいほどであって俺はこの宇宙限定でなら最強と言っても良いような存在となったが、俺の因果だけでは宇宙の全てを網羅することはできない。
完全のためには、同じように因果の織り込まれた、女子たちの協力がいるのだった。彼女たちの因果をたどることで俺の魔導回路は宇宙を俺の体のように扱うことができるようになる。
ただこの因果をたどるということの副反応として……
「色々思い出してしまいます」
困惑した感じで百合ちゃんが言う
それに頷きながら、
「説明してよね」
喜多見美亜が俺を睨めながら言う。
でも、そもそも、
「どんな話なんだ……」
俺との関連の話思い出しているのだろうけど、話して貰わないとわからない。
あいにく、ローゼさんやセリナと違って、俺には読心術の能力はないのだ。言葉をかわさずに仲間と話す、テレパシー的な魔法を使うことはできるが、言葉を出さないと会話が成立しないのと同じように、テレパシーで会話してきていない相手の思考を読むことはできない。
女子たちが何に顔を赤らめているのか、俺は正解を知ることはできないのであるが……
いや、あいにくではなく、幸いにもかもしれないな。
なにしろ、
「聞く気なんだ……変態……」
話し始めたのは喜多見美亜だろうが。
そんな恨めしそうな顔で睨まれても心外だ。
とはいえ……
どういうこと思い出しているかだいたいわかるような。
「……思い出している……んですが、なんか自分が経験したはずもない……」
百合ちゃんが困惑した様子の顔で言う。
たぶん俺の復活までに繰り返した今までの歴史での自分の記憶を思い出しているのだろう。
その中には確かに百合ちゃんと結婚したこととかもあり、
「あ……そんな薄い本が厚く……」
下北沢花奈は何を思い出しているのだろう。
聞く勇気は俺にも、他の女子にもないようだが、
「……だめ、聖職者として……」
「拙者は、聖騎士でござるが」
稲田先生とユウ・ランドもなにか怪しい感じだし、
「これ以上子供生まれたら家計がやばい……」
「パーティの後に酒の勢いで……」
和泉珠琴と萌夏さんも何か恥ずかしいことを思い出して顔を赤くしている。
「……」
「……」
美唯ちゃんと、実は一番乙女説ある生田緑は下を向いて黙ってしまった。
でもまあ、各自思い出して恥ずかしくなっていても、相互の記憶共有はなくプライバシーは保たれている。
はずだったが……
「あれ?」
キョトンとした顔になる喜多見美亜。
「なんか……今、百合さんの記憶がうっすら……」
見え始めてしまっているようだ。
宇宙をコントロールするために、みんなの因果を繋げて、個々人を超えた一つの歴史を作っている。それが、今、俺たちがしていることだ。
一つの歴史。すなわち一人の人間となると思ってもらって良い。
なので、因果の融合が進むにつれて段々と女子たちの記憶も入り混じってきて……
「ちょっと、こんなんじゃもう……これ以上できないんだけど!」
拒否宣言を出されてしまう。
とはいえ、俺たちが動かないとこの宇宙が消えてしまう。
恥ずかしいのはわかるが、そこをなんとか我慢してもらえないだろうかと思うのだが、
「あんただって顔が真っ赤じゃないの」
はい。俺にも女子たちの記憶がうっすらと漏れ出して来ていて、小っ恥ずかしくてうつむいてしまう。
まずいな。みんなが恥ずかしがって、自分の因果をたどるのをやめると、このまま敵の攻撃を食らってしまう。
どうしたらいい?
と思っていたら、
「もしかして……こうしたらどうでしょうか」
百合ちゃんが何か案があるようだ。
「別の人生の私たちのことではなくて。この半年の私達のことをみんなで話すのはどうでしょうか」




