俺、今、俺 あいつ活躍中
さて、敵は宇宙——は女子たちと俺にまかされることになったのだが、その前にちょっとやっておくことがある。最後の力を振り絞って突撃を仕掛けてきている闇魅の妨害である。
俺に宇宙衝突の邪魔をさせないようにとのことなんだろうが……
「闇魅が何でこんなことをするのか、やはり理解しかねるのじゃがな」
ローゼさんの言うとおり。
一緒にパーティを組んでいた時から、一貫して生き汚くしぶとく行動するのが闇魅の信条であった。迫り来る異宇宙の真ん前で俺たちと戦ったら、自分も虚無に分解されるのがわかりきっているのになぜ……
「どうあってもイクスさんを諦めるとは思えないですからね」
俺もロータスさんと同じ考えだ。
闇魅は虚無となりイクスと二度と会えなくなるということだけは選択するわけがない。
何を考えて、彼女の最愛の男と別れてまで、敵についたのかわからないのだが、その理由も含めて、すべてイクスとの未来に関係していることは間違いない。
なぜなら、
「あの女は多元宇宙最凶のヤンデレだからね」
「え……」
「?」
「「「「「……」」」」」
自分の行動の自覚無いセリナの発言にちょっと微妙な雰囲気になるが、
「? ともかくさっさと、闇魅を私たちで抑えて勇タンが準備する時間を作りましょう」
本気で空気の変化に気づいてなさそうな様子だ。
でも、確かにさっさと闇魅に対処した方が良いのはその通りだ。
「じゃあ、お母さん……みんな、行こう」
今までの戦いではあまり消耗していない塞栓して先方をかってでようとしているが、正直セナの力は他のパーティメンバーに比べるとまだまだなので心配な感じだ。とはいえ他の人たちも今までの戦いで消耗しているのでセナが一番マシな状態なのも間違いないのだが……
「そうだ」
良いこと思いついた。
「ん? 何?」
俺が喜多見美亜の手を握り、
「お前も活躍したいだろ?」
この宙域は喜多見美亜が力を万全に利用できるように選んだ場所だ。
せっかくなのでそれを生かさない手はない。
それに、
「確かに……私だけ、少し役立ってない感じもしてた」
地球での戦いでは、他の女子たちがいろいろ攻撃したのに喜多見美亜はまだ何もしていなかった。それが後で不満になっても困るので、
「それじゃ、派手にいって見ようか」
首肯するあいつを見て、俺はより強く手を握る。
すると、
「あ、見える」
突然ニュータイプみたいなこと言い出すが、
その気持はよくわかる。
この宇宙区間は、まさしく喜多見美亜の領域だ。
この宇宙に織り込まれたあいつの因果を通じて宇宙の魔導回路を操作すれば、
「……これぶつけちゃって良いかな」
俺たちに向かって飛び込んでくる闇の前に突然現れたのは、
——ピコピコハンマー?
暗闇の中から現れた巨大なおもちゃのハンマー。
しかし突然動き出したそれは、見た目に似合わず、
「ほう。闇魅を止めおったの」
鉛の塊を亜光速まで加速して叩きつけられて後ろに吹き飛ぶ闇魅。
「まだまだだ……いくぞ」
すぐに体制を立て直してこちらに向かう闇の前に現れたのは、今度は数百個のピコピコハンマー。
それらが次々に闇魅に向かって飛んでいく。最初の何十個かはかわしていたが、その後はサンドバック状態。体がバラバラになりながら、どんどんと後ろに下がって魔法陣の真前まで押し戻されるが、
「でもあの女の人またやってくるみたい」
こちらのピコピコハンマー攻撃が途切れた瞬間に体の破片がくっついてそのまま虚空から取り出した巨大な豹と一体化する。
うわ、もう限界ギリギリだと思ってたけどあんな奥の手残してたんだな。
さっきセナが突っ込んでいたら結構危なかったなと思いつつ、
「なら、もっとすごいのぶつけて、また押し戻せば良いだけだ」
あいつと俺は闇魅=豹の周りに今度は大量のブラックホールを出現させる。
地球でやられたのの倍返しの量を、たっぷりとたたき込み、
「お、やった?」
いや、フェム安定の『やったか』であるが、
「次も行くぞ」
どうやら防御魔法陣でブラックホールを耐え切った闇魅=豹。
なら、やられたことをやり消すだけ。
何物でも侵食し同化してしまう、ストレンジクォークでできたストレンジ物質を魔法陣取り囲むように配置させ、そのまま狭めていけば、
「ガラ空きじゃのう」
ローゼさんの言う通り。
魔法陣は穴だらけ人なったうえに、豹はストレンジ物質に同化されその原型を留めていない。
あわてて、豹から自らを切り離す闇魅。
「ここで、一気にやっちゃうぞ」
「うん」
あいつが頷くと、宇宙にはまた巨大ピコピコハンマー。
今度は、数百個どころでなはなく、無数のハンマーが次から次へと襲いかかり闇魅はどんどんと体を消滅させていって、
「さすがしぶといな」
攻撃が終わった後、それでも人形程度の体にまで縮小して生き残っている闇魅であった。
でも、
「ここまでやっておけば、いくら闇魅でも簡単に反撃できないだろ。じゃあ、セナ、後は頼むよセナ」
俺は、あとはセナ他のパーティメンバーに任せて、迫り来る異宇宙への対策にうつるのだか、
「うん……はいだけど……」
なんか「私いるの?」とでもいいたげな娘の表情であった。




