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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、俺(トゥルーエンド)
321/332

俺、今、俺 攻撃結果確認中

 ローゼさん。俺たちの今いる世界ではゲーム、プライマル・マジカル・ワールドのキャラクターである『ブラッディ・ローゼ』として知られる、アダルトな雰囲気満点な妖艶な女性だ。

 実際、今回の俺の人生において、秋葉原のビルの屋上のレストラン主として現れたときも、ゲームの中からそのまま抜け出したようなダイナマイトボディのSキャラ美人であったのだが、


「む!」


 今目の前にいるのは、そんなローゼさんとは似ても似つかない、女性であった。

 セクシーどころか、萌とさえ言えなく、服がぶかぶかで袖をぶらぶらさせて、ローブの裾を引きずっている、三頭身の……

 ゆるキャラであった。


「む! む!」


 言葉は『む』しか言わない。


「おお、ローゼ様! さすがです!」

「むぅ……」


 しかし、


「なるほど、偽物とはいえイクスはイクス、生涯でも何本の指に入る敵であったと」

「む」



「だが、本気を出したローゼ様にはとてもかなわないと」

「むむ」

「もちろん強者は油断しない。つねにベストをつくしてこその強者だと……ローゼ様! 素敵です!」


 サクアさんは、『む』だけでも、ローゼさんががなにをいっているかがわかるのだった。

 心を読んでいるとかではない。

 多元宇宙全体を見渡しても、ローゼさんの精神ブロックを突破して、心の中を読み取ることのできるような者はいない。そうではなくて、サクアさんには、ただわかるのであった。

 ローゼさんが自らの全魔力を注ぎ込んで創り出した最高傑作のホムンクルス、サクアさんだからわかる。阿吽の呼吸であった。

 雰囲気でローゼさんの言わんとすることを完璧に察するのであった。

 俺には、


「む」


 としか聞こえないが、


「はい、そろそろ元のお姿にお戻りですね」

「む……む……わ……わら……わらわ……」


 ほら、サクアさんの言う通り、


「わらわ……妾の今回の役芽はこれで終了かえ?」


 最強形態をたもてなくなって、ぬるっとメタモルフォーゼを行い、元のお姉さんの姿に戻るローゼさんであった。。 

 確かに偽物とはいえイクスのコピーを倒したのだから、もう十分に働いた。あとはゆっくりしていてください。

 というか、俺ももうゆっくりしたい。

 ……と言いたいところだが、


「やはり、そんな甘くはないようね」


 というセリナの言葉と同時に、目の前の宇宙を覆っていた光が消えて残ったのは、


「この後は勇にまかせても良いのじゃろう?」


 俺は、ローゼさんに首肯して、ロータスさんとセリナの全力の連携攻撃の後もいまだ残る巨大な魔法陣を見つめる。あの攻撃を食らったら、いかに闇魅でも、無事で済まないだろうと思うのだが、


「暗きものたちが闇魅を守ったようです」


 ロータスさんが言う。

 そういえば、闇魅の周りにいた、暗きモノたちはもう1体もいない。

 闇魅と一緒に地球に攻め込んできていた奴らは、今までに見たことがないほどの大群だったが、それが一斉に防御に回った。

 セリナの故郷の和ドムでは、1体でも現れたら国が滅ぶという言い伝えがあった暗きモノたち、それが無数に寄り集まってやっと防ぐことができたと考えれば、逆にロータスさんとセリナの合体攻撃が以下にものすごいものであったのかということになるが、


「……勇の仕事が残ったのじゃ」


 ローゼさんの言う通り。

 禍々しく輝く巨大魔法陣の中心、体の下半分を失いながらも薄気味悪い笑いを浮かべる闇魅を倒すのは俺……


「私のもでしょ」


 喜多見美亜(あいつ)が手を握りながら言う。

 首肯する俺。

 闇魅が今度は何を出すのだとしても、この宙域ならば俺と喜多見美亜(あいつ)は無敵……

「いや、ちょっと待て」

「どうしたのじゃ」

 俺の焦った口調にただ事でないのを察したローゼさんが、

「なんと……」

「そうきたのですね」

 ロータスさんも気づいたようだ。

 闇魅の最終兵器。過去に見たことがないほど大きさの魔法陣を作って引き寄せたのは、


「宇宙?」


 喜多見美亜(あいつ)の言う通り。


 最後に闇魅が俺たちにぶつけてくるのは……


 別の宇宙であった。


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