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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、俺(トゥルーエンド)
320/332

俺、今、俺先制中

 闇魅との戦いは、地球をはるか百万光年離れた銀河間の宇宙空間に移った。

 まあ、移ったというか移したんだけどね。

 喜多見美亜(あいつ)の因果が濃く張り巡らせられていて、また他に迷惑かからなさそうな場所と言うことで選んだこの場所だ。ここならたとえ本物のイクスが相手でも負ける気はしない。

 ……と俺は思ったのだが。

「ずいぶん魔方陣がでかいな」

「もし地球の空であんなの出したら、空いっぱいが魔方陣ね。月の軌道より大きいんじゃないかしら」

「じゃあ、何を出す気かな、お母さん」

 姿は幼女だが、俺がいない間に準パーティメンバーとして活躍していたと言うセナ、ちょっとやそっとでは動揺しないはずの娘の口調が少し不安げだが、

「……何を出す気かしらないけど」

 セリナは逆に少し口元がにやける。

「……今がチャンスですね……結界の維持はセナちゃんに頼んでも大丈夫でしょうか」

「えっ、ロータスさん……いいけど?」

 ロータスさんが上げていた手を下ろして、振り向いて言う。

「では……セリナさん」

「ええ、闇魅が魔方陣に全てを集中してる間に……」

 二人がアイコンタクトして頷くと、


「「全力で攻撃です!」」


   *


 その通り。

 何をする気かわからないが、闇魅は今魔方陣をつくることに全力をそそいでいる。

 なので、そのせいで、守りが明らかにおろそか——隙だらけだ。

 このチャンスを逃すわけにはいかない。闇魅がたくらんでいるのが、とてつもない攻撃だったとしても……

 その前に倒してしまうだけだ!

 ということで、セリナとロータスさんが全力で攻撃を行おうとしている。

 のだが……

「勇タン……勇タン……しゅき……しゅきしゅき、大好き……すきしゅききき……だだだだだいしゅしゅしゅき……」

 セリナが魔力を集中させるために精神を集中させる時についつい漏れてくる言葉。

「なんなのよあれ……」

 喜多見美亜(あいつ)がなんか引き気味だが、

「ちょっと……なんというか」

「気持ちはわかるけど」

 百合ちゃんと下北沢花奈も少し背中をぶるっとさせる。

「……ああ大好きなの……しゅき……しゅ……しゅしゅしゅしゅき……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……しゅ……」

 セリナのちょっとあれな言葉と表情にそうなる気持ちもわかるが、あれはわざとやってるんではないから見逃してもらえないだろうか。

 精神を集中するとつい出てしまう、不可効力というか……許してほしい。

「……」

 実の娘のセナも光の消えた目で親の事をじっと見ているのは気になるが、こうなったセリナは、もうどうしようもない。

 それに、


「ああ……レオくん……何で無視したの」


 もっとやばくて意味不明な人が横に現れた。

「……ああああああああ……どうしてどうして……」

 ロータスさんだった。

 多元宇宙一の霊力の使い手。

 その人柄と誰からも尊敬されている完璧超人の聖女。

 ちょっと……というかかなりの天然ではあるが、欠点のない……いやドジっ娘ではあるが……

 常に気品があり典雅な身のこなしの華麗な人なのだ。

 それが、

「それに、ローゼに転移させられたあの男も……思わせぶりな……時々戻ってみれば幼なじみとイチャイチャして……」

 なんか黒歴史を思い出して身もだえしている。

「どうしたの? ロータスさん?」

 セリナの妄言は生暖かい目で見詰めながらスルーした萌夏さんも、聖女様の様子が急変したのは見逃せないようだ。 

「正直……ちょっと怖い」

 稲田先生も、いっちゃった目でぶつぶつつぶやくロータスさんの今までとのギャップにかなり戸惑っているようだ。

「ああ、あの時も……あの時も……ううぅうううううううううううううううううううううううううううう」

 手を当てて膝を折るロータスさん。

 そろそろ準備(・・)も佳境のようだ。

「うう……削れる……命が削れる……」

 そう、ロータスさんが最大の攻撃をする準備。

 過去の恥ずかしい体験を次ぎから次に思い出し、

 自らの命——ある意味——を削り、

「うう……だめ……もうだめ……恥ずかしい……死んじゃいたい……」

 削られた生命力を霊力に変えて、


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! みんな死んじまえ! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 神の裁きの雷(ゴッド・ライトニング)!」


 ロータスさんの最大攻撃が放たれて……


「あ……超絶時間牢獄ハイパー・タイム・プリズン


 ロータスさんの様子を見て、ちょっと冷静になったセリナの攻撃が合わさる。


 ロータスさんの雷を、セリナが一瞬の間の無数の時間ループに閉じ込めて、ループのたびにエネルギーを加算して極大化してぶち当てる。破壊力がビックバンクラスになるとんでもない合体攻撃である。これが直撃してたら、いくら闇魅であっても無事には済まないはずであるが、


「やったかな?」

「やったですか?」


 攻撃が終わり、爆発の残光に包まれた空間を見ながらフェムとサクアが不穏な感想を言っていると、

「ん……」

 俺たちのいる結界に向かって何かすごい速度で向かってくる、

「あれイクス……いや偽イクスか……」

「とローゼ様ですね……」

 そういや、ローゼさんが偽イクスを足どめしてたんだったが、

「あ、追いついたね」

「ローゼ様、素敵!」

 二つの光点が交錯する。

 振り切り俺たちに攻撃しようとした偽イクスの背後からローゼさんが接近して、

「しとめた……」

「さすがローゼ様」

 光点の片方が爆発する。

 もちろん残ったのはローゼさんで、そのままあっというまに俺たちに近づき、結界を抜けえ、


「む!」


 現れたのはぶかぶかの服を着た、ゆるキャラのようなちんちくりん魔法使い、

「え……」

「ローゼさん……」

 そう、これもローゼさん。

 それも最強形態の。

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