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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、俺(トゥルーエンド)
319/332

俺、今、俺宇宙へ

「……って本当に宇宙!」


 周りの漆黒の空間を見ながら、喜多見美亜(あいつ)がびっくりした表情で言う。そりゃそうだよね。近所の神社の境内にいたと思ったら、瞬きする間に遙か彼方の宇宙に移動していたんだから。

「というか、大丈夫なの」

 何がって……ああ。

 そりゃ、心配になるよな。

 宇宙だし。

 死んじゃうよな。人間。

 でも、

「……今、大丈夫だろ」

 頷く喜多見美亜(あいつ)

 そう。心配ご無用。

 空気はある。

 宇宙だからと言って窒息したりはしない。

 温度も極寒の宇宙空間とは違って、さっきまでいた秋の日本の心地よい気候そのままだ。

「あと、普通に立ててるだろ」

「あ……」

 そういえばといった顔になるあいつ。

 宇宙なのに無重力で無く、何も空間の上に、地球と同じように俺たちは立てている。

 なんとも不思議な状況に、

「一体なんなのよ……なんでこんなとこきてんのよ……」

 混乱してしまうのはしょうがないが、

「それに……」

 他も何か? そりゃ、こんな宇宙のただ中にやってきたらいろいろ言いたいことも、聞きたいこともあるだろう、と思えば、

「……何で女子たち(みんな)と順番に手を握ってるのよ」

 あ、そっち来たか。

 それって、

「あ、美亜さん嫉妬してる?」

「って……そうじゃなくて……」

 セリナのつっこみに少し顔を赤くして下を向く喜多見美亜(あいつ)

「あ、でも大丈夫よ」

 セリナは微笑みながら俺に目配せをし、

「なにが?」

 なんか不満げな表情で喜多見美亜(あいつ)が言う。

「そうでしょ勇タン?」

 俺は首肯しながら、


「……あ」


 喜多見美亜(あいつ)の手を握る俺。

「何? これ?」

 瞬間、体に流れ込んできた、なんともいえない感覚にっびっくりした模様のあいつ。でも、その理由を説明している暇はない。


「わかるよな?」

「あ、うん」


 何がわかったのか正直よくわからないのだと思うが、それでも「わかる』といった言葉以外では表現できない感覚を得たらしい。

「……見えるようなきがする」

 何がって、

「宇宙が」

 その通り。

 闇魅たちがまだ知らない、新生向ヶ丘勇の秘密。

 俺の魔導回路制御能力をフルに活用できる、この(・・)宇宙に関する無制限ともいえる操作能力。それが女子たちと一緒でこそ発現できるのであった。


   *


 ずっと昔。

 この宇宙ができる前の別の宇宙での話。

 俺——向ヶ丘勇はそこで一度死んだ。

 イクス他の仲間たちと多元宇宙を股にかける冒険をしていたが、闇魅の罠にかかって宇宙創成の爆発の中に巻き込まれてしまったのだった。セリナの時間操作でも、別の宇宙に入ってしまったおれの因果と魂を巻き戻すことはできずに、結局セリナは、俺が落ち込んだ世界の中で、俺を再生させることを選んだ。

 最初は物質さえできず、エネルギーの塊で終わるはずだったその宇宙を、セリナは気が遠くなるほどの回数時間を巻き戻し、繰り返すことによって、ついには俺を復活させることに成功したのだった。


 で、この繰り返しの中で、思いもよらぬ副産物が生まれた。


 俺の因果と魔導回路が宇宙に何度も織り込まれた結果、この宇宙全体に俺の魔力が張り巡らされル結果になった。そこに俺の、多元世界一かもしれない魔導力解析のチートが組み合わさった結果……


 俺はこの(・・)宇宙全体を操る力を得たのだった。

 まるで自分の体のように自由に空間や物質を操れる。ストレンジ物質をダイヤモンドに変えたり、地球と今の宙域をつないであっと言う間に戦場を移す。突然空中にハンマーや刀を出現させる。

 そんなことがあっさりとできるようになったのだった。

 まるで神のごときとんでもない力である、


 だが、実は、俺一人でのその力は十分には使えなかった。なぜならこの宇宙に織り込まれた、俺の因果は自分一人で全てたどれる物ではないのだ。

 というか、俺のたどれる魔導回路はかなり大雑把に宇宙に広がっていて、最小でも光年単位の操作しかできず、さっき地球でやったような物質や空間の操作なんて精密なまねはできない。

 なら、どうやってというと……


 女子たちの協力が必須なのだった。

 俺の復活には、女子たちとの入れ替わりが不可欠だった。

 宇宙の膨張と進化の中で、俺に集約できなかった因果を持つ女子たちから、入れ替わりにより因果を修復して「俺」は俺となれたのは前に言っていると思うけど、それって、俺がつながっていない因果を女子たちは持っていると言うことなのだ。

 つまり、俺がたどり着けない空間には、女子たちの因果につながり、彼女たちを通じてこそたどれる因果に魔導回路を通して、


「……なんか、なんだかよくわからないけど……いけそうなきがするけど」


 中でも、前の宇宙より続くセリナの思いが集まり人間となった喜多見美亜(あいつ)は、最大の魔導回路を俺に通じさせてくれる。


 例えば、今、闇魅たちを誘い込んだこの場所、天の川銀河とアンドロメダ因果の中間点は、喜多見美亜(あいつ)につながる魔導回路が密に集まる超結節点(スーパーノード)だった。

 ならば、


「ここなら誰に負ける気もしないな」


 俺は、また攻撃をしようと何やら大きな魔方陣を作り始めた闇魅を見ながら言うのだった。


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