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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、俺(トゥルーエンド)
315/332

俺、今、俺反撃中

 ——あなたたちの助けが欲しい。


 というセリナの言葉に、何を言ってるんだという顔の女子たちであった。

 そりゃあ……当然である。

 みんな、一体何ができるのだと思っているだろう。

 天変地異のような戦いが繰り広げられている目の前の光景を前にして、かなり個性的な面々とはいえ、普通の人間の女子がやれることなんてないように見える。

 いや「女子たち」だからなんともならないというレベルでは無い。

 全地球の兵器をつかって抗っても、蚊に刺されたほども感じないような相手との戦いである。どんな屈強な男でも、できることなど何も無い。


 しかし、


「あっ…でもまずはこの攻撃しのいでから説明するわね。みんなにできること……」


 セリナははてなマークが頭上に浮かんでいる女子たちをいったん放って、空の敵に向き直る。


 天空には再び偽魔剣プライマル・スクリームを構えた偽イクス。稲妻を纏いながら振り下ろされる斬撃が俺たちに向かって飛んでくる。どんな堅い盾で守ろうと、空間ごと切り裂くので防ぎようが無いイクスの必殺技であるが……


「ちょっと本気出したので、大丈夫でした」


 にっこりと微笑むロータスさん。

 斬撃はあっさりとロータスさんの張った結界で止まった。

 先ほどはイクスの攻撃に少しひび割れたのだが、もう大丈夫——攻撃パターンも解析済みのようだ。

 ならば再度の攻撃にも、


「破れる様子も無いね」

「そうですね」


 フェムとサクアさんは余裕の表情で結界を眺めながら言う。

 ロータスさんが本気で張り直した結界は、繰り返し襲ってくる偽イクスの攻撃にも、ひび割れ一つできないようだった。


「やっぱ偽物だね」

「本物のイクスならこんな芸の無い攻撃しないですよね」


 まあ、その芸の無いイクスにこの二人はさっき叩きのめされたのだが、確かに本物のイクスならこんなもの(・・・・・)じゃない。闇魅はイクスの能力を再現することはできても、幾多の死線をくぐり抜けて作り上げられたイクスの本質をコピーすることはっできていないようだった。

 本当に本物のイクスが敵になったら、正直、今、ここの全員が生死の境を彷徨っていてもおかしくないぐらいなのだが、闇魅の創造の能力にも限界があって助かったというとこである。

 で、偽イクスの能力のほどが大体わかったところで、俺たちの反撃が始まる。


「偽物くらいなら、妾が引きつけておくくらいできるじゃろ」


 そう言うとローゼさんが偽イクスにむかって飛びかかる。瞬間移動を何度か繰り返して、敵の目の前に現れ、


「飛んでけ……なのじゃ」


 杖でぶったたく叩く。


 すかさず逃げようとした偽イクスは、その避けた場所に杖の先端が引きつけられて、まるで吸い込まれるようなクリーンヒット!

 ローゼさんの大魔法未来確知(プレコンファーム)

 未来を予想するのではなく、創るのだ。

 逃げようとしたその未来もすでにローゼさんに確認(コンファーム)されていて……


 吹っ飛ぶイクス。

 もちろんローゼさんのはただの殴打ではない。

 ロータスさんに引き続き、ローゼさんも本気。

 杖を魔力による硬化したうえで、質量増により、木星一個をまとめてぶつけられたような衝撃を受けたはずだ。

 とはいえ、偽物ではあるがさすがにイクスを模した戦士。さっきのフェムとサクアさんとは違い、地面にぶち当たる前に体制を整えると反転してローゼさんへ突きを!


 ……かわされて、また杖で殴られる偽物。


 そのまま、何度も何度もたこ殴り。

 しかし、偽イクスもそれで倒れることは無い。何度打たれてもたいして効いてる様子もなく、ローゼさんに隙あらばたちまち反撃をしてくる。

 ローゼさんが圧倒的に押しているように見えるが、少しでも気を抜くと致命傷となりかねない魔剣の一突きが待っているので、今以上の大技は放てない。

 結局どちらも決定打のないまま、戦いは膠着状態となるが……


 これでよいのだ。

 ローゼさんは偽物を倒すのではなく、引きつけておくと言ったのだった。

 空には少し焦った顔の闇魅。偽イクスから離されて、残りの俺たちと一人で対応しなければならない。


「あたしたちで、いっちゃおうか」

「そうですね、邪魔者の偽物がいなくなったらあの根暗女なんて敵ではありません」


 さっきの雪辱なのかフェムとサクアさんがやる気になっている。

 確かに、今ならこの二人がかりで闇魅を倒してしまえるように思えるが、


「少し待ちましょう」


 ロータスさんが緊張した表情で空を睨みながら言うと、


「「ブラックホール!」」


 闇魅は空間に穴をあけるとそのなかか無数のブラックホールを取り出しておれたちに落下させてくる。

 ブラックホールのメテオクラッシュかよ!


「……いくら闇魅でもあの量のブラックホールを今創ることはできないと思います」

「この攻撃のために貯めておいたってことか」

 ロータスさんが首肯する。

「今回は準備期間が十分にあったから……私が勇タンを復活させている間……」


 偽イクスを創るだけでなく、いろんなヤバい物貯めまくって攻撃いに来たってことかい。

 ブラックホールの他にもまだまだ奥の手隠してそうだし。

 どうやら、闇魅だけでもそんな簡単に俺たちの勝利とはならないようだった。

 やっぱこれ喜多見美亜(あいつ)たちの助けを借りることになりそうだな。 


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