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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、俺(トゥルーエンド)
306/332

俺、今、俺焦燥妖精を観測中

 さて、食事に夢中で大事を忘れていたフェムであったが、

「たいへんなんだよ」

「それはもうわかったのじゃ……」

「何が起きたんですか……まあ、フェムの『たいへん』なんてたかがしれてますけどね……」

 話し始めようとしても、ローゼさんとサクアさんはたいして興味もなさそう。

「……さっきのあたしの話を聞いてた?」

「何が? ですか? ……あ、ランドさん、そのお茶私も貰って良いでしょうか?」

 ロータスさんもフェムのたいへんよりも食後のお茶の方が大事(・・)なもようだ。

「……ちょ、セリナ……」

「なに?」

「みんな真面目に聞いてくれないよ」

「なにが?」

「たいへんなんだよ」

「それはもうわかりました……」

「じゃなくて、さっき聞いてたでしょ? 勇は……?」

 助けを求めるように俺を見るフェム。

「聞いたって……? あれ?」

「言ったでしょあたし?」

「言ったな」

「たいへんだって……言ったな」

「そう、それ」

「世界がたいへんなんだよな?」

「そうだよ危ないんだよ。このままじゃ……この世界が……滅んじゃうんだよ!」

「ああ……」


 なんだ、


「「「「「そんなこと(か)(じゃ)(ですか)(でしたか)(なの)」」」」」


「ちょ、ちょ……みんな」


 食いしん坊のあわてもの妖精の言うことなどにはいちいち驚かない俺たち——かつてのパーティメンバーであったであった。

 でも、

「……大丈夫なんですか?」

「ん?」

 俺の斜め横の視線に振り向けば、心配そうな顔をしているのは百合ちゃんである。

「世界が終わる……なんていきなり言われても素直に信じられませんが……勇さんたちはそんな(・・・)ことが起きるような冒険をしてたって聞いて……」

 そんな百合ちゃんを見て首肯する喜多見美亜(あいつ)、下北沢花奈、生田緑、和泉珠琴。そりゃ、世界の危機とかいって駆け込んできたあやしい妖精の話を聞いたら不安になるよね。

 普通は世界の終わりとか言われたら冗談なのかやばい人なのかと思ってしまうだろうけど、俺たちがそういう(・・・・)世界に生きてたことを女子たちもすでに知ったわけだし。

 しかし、


「うん。確かに私たちは何度も宇宙消滅の危機なんてのを乗り越えてきたけど……乗り越えすぎてるんだよね」


 セナがちょっと疲れた感じで言う。

 そういうことなんだよね。

 そんなの(・・・・)日常茶飯事だったのだ。

 ここにいるパーティメンバーにとっては。

 そして、多分、

「俺がいなくなってからも……そうだったん……だよな」

 ということなのだろう。

「そうだよ。私がパーティに参加してからも何度、いくつの宇宙が滅びかけたことか……覚えてられないよ」

 セナが一生で食べたパンの数扱いくらいの感じで世界の危機を語る。

「そうか、俺がイクスたちのパーティにいた昔と全然状況は変わっていないようだな」

 まあ、当たり前か。

「……勇がいなくなったくらいで世界が穏やかになるのなから、妾が何度でも殺してやるのじゃ」

 だよね。

「いや、ローゼさん。死んで宇宙が平和になるのならお父さんじゃ無くてローゼさんの方でしょ」

 それもそのとおりで、

「それは否定せんのじゃ」

 否定しないどころか少しドヤ顔のローゼさん。

「自覚はあるんですね……」

「もちろん妾の生に一片の悔いもなしじゃ」

「さすがはローゼ様です! というか昔の迷惑度合いで言ったらドジっ子聖女様(ロータス)も相当なもんですが」

「……あ、それも否定できない」

 と言ったのは直属の部下の聖騎士ユウ・ランド。

 ——と話は宇宙の危機から少し脱線してしまいそうになるが、

「ちょっと、ちょっと!」

「ん? なんなのじゃ?」

「ともかく……たんへんなのにみんななんでこんな余裕にしてるの!」

 フェムがのんびりとした俺たちを叱責する。

「……って、君たちなんか危機感なさ過ぎなくない?」

「そうですかね?」

 ロータスさんも、お茶をフェムに差し出しながらのほほんとした表情。

「……って、みんな焦らないの? あたしたいへんなのを見てしまったんだよ」

「どこでじゃ?」

「ああ、勇たちは知ってると思うけどこの間、暗きモノたちの進行を食い止めたじゃない? あたしら」

「ああ」

 俺が全てを思い出して、イクスの魔剣プライマル・スクリームを直しに行ったときのことだな。

「あの後、あたしふらっーとあちこちぶらぶらしてたんだよね」

 あの後——暗きモノたちとの戦いが終わった後という意味であった。

 地球から数十億光年離れた場所と地球の因果がつながり、俺はそこに行き、そして戦いに魔道士(エンジニア)として参加した。

 俺がパーティから抜けてからも酷使され続けていたらしきイクスの剣はひどい状態であったが、とりあえずの応急処置でも銀河を越える大きさとなった敵を蹴散らすことができた。

 とはいえ、剣のひどい状態を見て、俺はその場に残って修理することをイクスに提案したのだが、


『ここまでの大勢力を敵が再編成するのは時間がかかる……お前にはお前のなすことがまずあるのだろ』


 友の言葉に俺は安心して地球に戻り……まあ、やってることはハーレムラブコメなわけだが、

「……イクスが心配ないって言うからあの辺りの監視は任せて、あたしは勇のところにでも行ってみるかなってこっちにむかったのだけど……途中で……気分がのって……ぶらぶらというか……」

「迷ったのじゃな」

「……」

 図星のようだ。

「迷ったんじゃないから。ついでだから、このあたりの銀河でちょっといろいろ調べなきゃと思ってうろうろしている内に……」

「迷ったのじゃな」

「……はい」

 ガクッとうなだれるうっかり妖精であった。

 セリナの話では、フェムはこの間地球に来た時も実は結構迷っていたらしいが、あらかじめ迷うだろうなと考えてだいぶ余裕を持ってセリナが呼んでたそうだ。

 だが、

「でもね! 迷ったせいで見つけたんだよ」

「何を?」

「乱れだよ! 宇宙の乱れ」

「乱れ?」

「宇宙が危ないんだよ。時空が乱れてぐちゃぐちゃになってしまうんだよ。このままだと、この宇宙が壊れてしまいそうなんだよ!」

「あっ」

「それはじゃな……」

「ん?」

 フェムが俺たちの微妙な顔を見て不審そうな表情を浮かべるのだが、

「どう? 皆さん。食後の散歩というところで……ちょっとそこいらまででかけてみませんか?」

 とセリナが言う。

 フェムはそれを聞くと、焦って、

「セリナ! だからそんなゆっくりしている場合じゃ……」

「いえ、フェム。あなたがせかすから、行くのよ、そこに……」

「?」

「その宇宙の乱れの元凶の場所にね」

 そう、フェムの言う乱れの元凶は、わりとこの近所にあるのだった。

 それは……


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