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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、俺(トゥルーエンド)
302/332

俺、今、俺幼女到着中

 というわけで喜多見家にまた来客。


「やっぱ心配だから来ちゃったよ」


 と言いながら喜多見家に入ってきたのはセナ。

 未来で生まれる俺の娘——であることがわかった(元)謎の幼女である。

「お父さんを信じているけど……女子に籠絡されてないか心配だからね」

 ちらちらとセリナを見ながら同意を得ようとしているが、当の母親の方は少し渋い顔。歴史の矯正力から逃れるため、微妙なバランスを取ってできたとりあえずの解がこの甘修羅場なんだから余計なことするなと言いたげな顔つきである。

 でも、セナは、そんなことはどこ知る顔で、

「……ともかく,私も入らせてもらうからね」

 と言うと玄関で靴を脱ぐと、

「セナちゃんいらっしゃい」

「あ、美唯」

 今、中学校のクラスメイトになっている美唯ちゃんがあいさつ。

「来てくれてうれしい」

「……ありがと」

 セリナ以外の女子たちを排除するぞという気合に満ちた勢いで喜多見家に飛び込んできたセナであったが、純真な美唯ちゃんの笑顔にほだされて、

「美唯はお父さんの近くにいることくらいは許してやるか……大切なクラスメートだし……」

 なんか腰砕けの様子でリビングで待つ女子たちと合流。

 と、女子と言うには艶美な女性を見つけ、

「ローゼさん、戻ってたんだ早かったね」

「おお、セナか。久しいの……といってもこっちの世界では二、三週間くらいかの?」

「そうだね……時間止めてお父さんと過去を再体験したり、イクスたちを助けに行ったり結構、私的には長かったけど……この世界ではそのくらいだね」

「そうかえ。妾は……随分と長く追ったのじゃがきゃつらを……」

 ローゼさんが長いとかいうのなら相当だな。

 一年や二年じゃなくて、もしかしたら数十年、数百年……へたしたら億……

 ただその宇宙から戻る時点の因果とつながっていたのはこの宇宙の数週間後であったということのようだ。


「残念ながら取り逃がしたがの……もう少しじゃったが……」


 ローゼさんとサクアさんは、歴史の矯正力の反作用が作り出した時空の裂け目に飛び込み、その奥に広がっていた暗きものたちの宇宙。そこにいるはずの敵、多次元宇宙を飛び回りながら俺たちのパーティが追いかけていた暗きものたちの主を追い詰めたようだが、

「……もうちょっとというところで、自らを消し去ってしもうた……あの宇宙ごときゃつを消し去る覚悟じゃったが、先に消えられては妾もそれ以上何もできないのじゃ」

「ローゼさん……相当暴れたんだね」

 セナがちょっとゾッとしたような顔で言う。

 過去にローゼさんの本気を——何度かしか無いが——見たことがある俺も同意だ。

 ああ、これはあの暗闇どもが溢れてきた宇宙は死屍累々。相当ひどいことになっただろうなと思うが、

「ふむ、死んでしまっている宇宙はそれ以上死なないじゃろ……暴れようもなきじゃ」

 ローゼさんの話では、完全に暗きものたちに汚染されていた宇宙をむしろ浄化して帰ってくることになったということだが、

「これで、あの宇宙にもまた星が生まれ数十億年もたてば、生命も誕生するかもしれない。そのころにまた行ってみるかの……」

「数十億年……? ローゼさん、そんなに生きる気? 冗談うまいな」

「珠琴、そこはスルーするところよ」

 なんか和泉珠琴と生田緑は、親戚のおじさんが子供に千円のお小遣いを1千万円とかいって渡してる的なノリでローゼさんが言っているように思っているようだが……

 この人マジだから。

 実際すでに生きてきた年齢は……

 止めとくか。

 女性の年齢。考えただけでも殺されそうだ。


 しかしまあ、そんなローゼさんと負けず劣らずのロータスさん、サクアさん、セリナ……昔の冒険メンバーが集まったこの部屋は正直とんでもなく危険な部屋だな。この世界の地球に魔力がすくなく十全の力を発揮できないとはいえ、ちょっと気分が地球滅亡となってもおかしくはない。

 俺は、今日の会は荒れないように細心の注意が必要だなと思うが、

「……皆さん」

 色々話し込んでいるみんなに向かって美唯ちゃんが言う。

「料理が冷めてしまうので、そろそろいただきましょう」

 なんか美唯ちゃんに言われると、くせ者どももたちまちにほんわかとなってみんな自然に席に着く。もしかして美唯ちゃんが多次元世界最強より最強と思わせられる一幕であった。

 しかし美唯ちゃんって本当によい子だよね。姉ラブのヤンデレが強すぎて、体が入れ替わった時は実は俺が姉の中の人になっていたことがばれたらどうなることかと恐怖してたのだが、結局は杞憂だった。いつのまにか、喜多見美亜(あいつ)と入れ替わった俺も、俺として美唯ちゃんとの良い関係ができていたのだったが、その「良い」とははたして……


「美唯ちゃんも勇くんのこと好きなのかな?」


 余計な爆弾を投下するのは萌夏さん。


「え……」


 赤くなる美唯ちゃん。


「じゃあみんなの前で言うのが恥ずかしいならお姉さんにだけこっそり教えて……」


 萌夏さんが耳をさっと美唯ちゃんの口元に近づけて、


「そんな……」


 もじもじとした表情の美唯ちゃん。


「んん? 教えて」


 中学生が弱そうな、大人のお姉さんパワーについついなんか口をモゴモゴとする美唯ちゃんだが、

「うんうん、わかった。みんなには秘密にしとくね」

 ニヤッとしたその顔で、

「……秘密になってないです」

「そもそも、聞かなくても僕でもわかってたけどね」

 百合ちゃんと下北沢花奈にもバレバレだったようである。

「……ぬぬ、美唯の気持ちが気になる……」

 セナ一人だけわかっていないようであるが。

「ともかく……食事しよ。本気で冷めちゃうよ」

 と喜多見美亜(あいつ)の言葉でみんなハッとなってやっと食卓につくのであった。


 で、喜多見家父母は外出済みで女子たちと俺だけの昼食が始まったのだが、


「ぬぬ!」


 なにやら最初にスープを飲んだ途端に驚愕の顔になるのはローゼさん。

 必要とあらば、平然と銀河一個を消滅させる、あの人があんなリアクションするなんて……

 なんだ? 一体なにがどうした?


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