俺、今、俺魔法確認中
俺が直したという魔法の杖。それはどうにも、伝説級といえるようなとてつもないしろものでっあったらしい。
そのうえ、俺は、それをさらにパワーアップさせたようだ。
なんでそんなことができたのかはわからない。いや、そもそも、魔法の杖なんてものを、直したりできてしまうことから信じられない。
魔法なんて物語の世界の中にしかない世界からやってきた俺が、そんなことができてしまう……
「すごいよ! ユウすごいよ!」
セリナは大興奮であった。
「ちょっとやってみるね!」
何を?
「で、どう?」
何が?
「あれ? そうか……時間止めたけど、ユウも一緒に止まっちゃたから、もっかい……」
と言いながらセリナは杖を振り、
「時間止まったよ」
「ん?」
え、そうなの。
——であった。
と言われてもである。
本当に時間が止まっているのかもしれないが、この部屋にいるのはセリナと俺だけ。
その二人が動いていると時間は動いているようにしか思えない。
「ううん……確かに時間が止まってるんだけど、ユウを止めてしまうとさっきみたいにその間のことわからないし……そうだ、また時間動かすね」
セリナは杖を軽く振る。
すると、なんとなくモヤッとした感じだった周りの雰囲気がリアルな感じに変わったような感じがしないでもないが。それが時間が止まっていたのが動き出したせいなのかはよくわからない。
そんな困惑中の俺に向かって、
「これ見てて」
とセリナは言うと、そういえば、中からメモが出てきた後いろいろ話をするほうが先で、まるで手を付けていなかった料理の皿を持ち、
「えい!」
「えええ!」
放り投げた。
だが、その後すぐに杖を一振り、
「あれ?」
「どう……」
皿は空中でピタッと止まっていた。
セリナは自慢そうに微笑む。
「これで信じられる?」
彼女は時間を止めたということを、
「……ああ」
俺は首肯した。
もしかしたら、これは魔法は魔法でも、時間を止めるなんてすごい魔法でなくて、空中で物を止める魔法じゃないのかと思わないでもないが、
「すごいよ。セリナ、時間を止めるなんて大魔法使えるようになっちゃった!」
セリナは時間を止める魔法を使っているというのならそうなのだろう。時間を止めようと思ったら偶然皿が空中に浮かんじゃったというのの方がありえないだろう。
「確かに……すごい……」
だが、しかしだなあ。
すごすぎて問題なのではないか。
この魔法。時間を止めるというのはこの世界でも伝説級の難易度魔法のようで、それを幼児がひょいと使えるようになるのは、
「……ユウの直した杖がすごいんだよ。いや、ユウの直し方がすごい……というか絶対に元の杖よりすごくなっているよこれ」
ずいぶんと興奮しているセリナであるが……
俺は少し嫌なこをが頭に思い浮かぶ。
「どうしたの?」
険しい顔になっただろう俺を見て、ちょっと不安そうな口調のセリナ。
「……時間を止めるというのはすごい魔法なんだよな」
「そうだよ。すごいことだよユウ」
そうだよな。時間を止めるなんてのが普通に使えたら、戦争で絶対手に優位になるし、泥棒しようと思ったら簡単にできてしまうし、普段の治安から考え直さないといけないよな。
絶対普通じゃないし……あまりに強力だ。
誰もが欲しがるような魔法、それを弱々しい幼児ができるようになった。
なら、
「これは、秘密にしておいたほうが良いと思う」
と俺は言った。
「秘密? 時間を止めれるようになったこと?」
首肯する俺。
「すごすぎるかもしれない」
「……すぎる?」
「そう。もし、そんなすごい魔法をセリナみたいな小さい子が使えるようになったって知ったらみんなどう思うかな」
「褒めてくれる……?」
「そうかも知れないね。大変な魔法なんだから。でも、褒められたらそれで終わりかな?」
「……褒められたら……そしたら……」
「時間を止める魔法、何に使えるかな?」
「使い方? いろいろあると思うよ。もちろん悪いことに使っちゃだめだけど……そうだ、時間を止めているうちにエストの騎士を縛ってしまえば戦争は終わって……」
そのとおりだが、
「戦争を終わらせたのが、時間を止める魔法だったことがバレたなら、そんな危険な能力を持っている小さな女の子のことをみんなどう思うかな?」
「褒める……? だけじゃないってことだよね」
時間を止めるなんて能力が敵国にあるなんてわかったら、なんとしてでもそれを排除しようとエストは思うだろうし、味方のワドムにしたって、いつ自分の寝首をかかれるかわからないような能力を持った者が自由に行動しているという状態は……
「ユウが危ないって言うことだね……」
「へ……俺?」
「そうだよ?」
なんで俺が驚いているかって表情のセリナ。
「だってそうじゃない。こんなすごい杖が直せちゃう……いえ、作り変えれちゃうユウなんだよ。危険に思う人も出てくるかもしれないよ」
言われてみれば、確かにそうだが、
「でも、俺は杖を直しただけで魔法を使えるのはセリナじゃないか」
「そうだけど、こんな杖使ったら誰でも時間を止めることぐらいできる……かな?」
さすがに、誰でも使えるかは、セリナは少々自信なさそうだ。
時間停止の大魔法を今使えているのは、杖があってこそなのは間違いないのだが、セリナの力があってこそなのかどうなのかは、サンプルが彼女だけではわかりようもない。
ただ、どちらにしても、杖とセリナの組み合わせがこの世界の戦争の常識を変えるほど危険なのは間違いなく、
「……本当に使わないと行けないとき以外は使わないようにしよう」
という俺の言葉に、セリナは頷いて、
「じゃあ、ともかく、そろそろ魔法をとくね……」
杖を振りかぶったのを見て、
「おお……ちょっと待った!」
「ん? ああああ!」
間一髪、空中に浮かんだ皿の下に滑り込んだ、俺は、夕食がだめになるのを間一髪防ぐことができなたのだった。




