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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、女子魔法使い
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俺、今、俺脱出準備中

 なぜ?

 セリナが自信満々に『大丈夫』と受けあった理由が気になった。

 せっかく牢屋から逃げ出す手段を見つけたのだが、俺はそれ(・・)をつかうタイミングを心配していた。

 セリナの閉じ込められた牢屋に設置してあった避難器具。それは俺に先立ってこの異世界に来ていた佐藤さんが設置していたということがわかったのだが。それで牢屋から逃げて地上までは降りれるにしても、そこにちょうどそこに誰かいたりしたら大変だ——と俺は思ったのだった。

 が——セリナはそれは心配しないで良いという。

 もしかして、城の見回りの時間とか知っているのかもしれないが……

 ——それだけじゃないか。

 だって、城の高層階に設置されている今の部屋から避難器具をい、その後に残された、壁伝いにだらんと垂れ下がった長細い袋を見れば、初見の人にも用途はあきらかだ。

 セリナが逃げ出したことはすぐにバレる。

 そうなれば幼児の足で追ってから逃げ切れるとはとても思えない。

 街中の関心が別に向いているような時でないと避難器具は使えない。

 しかし、

「大丈夫……それは私の魔法能力に関係するの」

 セリナは、ちょっと自慢げな顔になりながら言うのだった。

「私は時の魔女なの」

 あ。

 それは俺の世界の、成長した(?)セリナも言っていたような気がする。

 その娘(?)というセナも、母の力を受け継いで、俺この異世界に来る直前の、時間の止まった世界を作り出したと言っていた。それも、まだ未熟な魔法とか言っていたが、じゃあ未熟じゃない時の魔法とは?

「……まだできることは少ないけど」

 ああ、でもこっちのセリナはまだ幼女だよな。

 でも、時間を止めるとか未熟でもできるとなると、

「時を止めるとか伝説の魔法使いが使ったようなようなものはもちろんむりだけど……」

 セナ!

 俺は、今、同じ体に入って転移していると思われる謎の幼女に心のなかで呼びかける。

 時を止めるなんて、全然未熟じゃないじゃないか!

 だが、


<……>


 無言で何も返事をしないセナ。

 まあ、そうだよな。

 時間を止めるとか絶対初級魔法とかじゃないよな。

 バトル物ラノベなりアニメでも、普通に中ボス以上の能力だよね、

 例えば、俺の世界でセナが少なくとも地元駅から多摩川をこえて、新宿まで時間をとめていたが、あれを戦いの最中にやったらどの世界でも無双できるよな。

 軍隊の動きを一斉に止めて指揮官を倒すこともできるし、止まった敵の下に爆弾置いたり、落とし穴掘ったり……

 正直、時間を止める能力を無効にできる相手でないと負ける気がしない。

 そんな能力が普通にあったら、この世界の軍事バランスは一人で覆すことができる。

 俺は、そんな能力を未熟と言ってた謎の幼女と、そんな彼女が自らを未熟と卑下させるJKセリナにあらためて底知れなさを感じるのだったが、

「……でもそんな私でも、ちょっとした先のことを知ることならできる」

 目の前の幼女セリなのぬ力はもっとつつましやかなものであった。

 いや、時間停止と比べればだが。

「セリナは予言ができるの?」

「予言……と言っても良いんだけど、心だけちょっと先に飛ばせる? そこで見たものを覚えて帰ってこれるの」

 ちょいちょい、ちょっと待って。

 それだって相当な能力だよね。

 一対一で戦ったときに、相手の動きが読めてたら、百戦百勝に鳴ってもおかしくないよね。

 いくら非力な幼女セリナといっても、相手の剣が狙う場所を避けて駆け寄ってナイフで一突きとかできてしまいそうだよね。 

「でも、まだあんまり鮮明に未来のこと覚えてられないの。ぼんやりと……まずい、危ないとか——そういうぼんやりとした感情だけ」

 とはえいえ、それくらいさえわかれば、

「今だ——とかもわかる。だから、逃げるのがいつなのかも。逃げる方法さえあれば」

 ということなのだった。

「フリオおじさんも私のこの能力を知っているので、きっとチャンスを作ってくれるはず。その時逃げ出せばよいの」

 なるほど、どういうやり方かはわからないが、フリオさん——セリナの父親と仲の良かった騎士の人も積極的には彼女を助けられないにしても、見張りがいないような状態ならつくることができるかもしれない。 

 それを待つということなのだろう。

「多分、明日にはフリオおじさん何か動いてくれると思う……そんな予感がする」

 予感——というには確信に満ちた表情で言うセリナ。

 もしかしたら、この予感というのも時の魔女の能力で感じているものなのかもしれない。

 その確実性は高いのかもしれないが、

「なら……俺は」

「どうしたの?」

 さらに避難器具のあたりを探る俺であった。

「いや、もっとなにか無いと思って」

 この城の設計や施工を取り仕切った佐藤さんから、俺に狙いをつけたメッセージがあった。俺が将来、ここに来ることはわかっていたのだ。佐藤さんが転生した時に予言のチートを得た彼末芋あるが、それだったら佐藤さんはそっちのほうでも逸話が会ってもおかしくないが、預言者とはいわれていないようだ。もちろん、佐藤さんが何らかの理由で隠していた可能性もあるが……

 協力者がいたのでは。百年以上先にセリナがここに閉じ込められて俺が異世界転移することを予言できるチート能力者が。

 ——ともかく、佐藤さんとは別に、そのチート能力者が俺に何かを残しているかも知れない。

 セリナをのこの場所から助けようと思っているその人なら、セリナのためになる何物かをこの場所に残しているのかもしれない。

 そう思って俺は、避難器具の鉄の箱の上をごそごそと弄るのであるが、

「なんかあるな……」

 奥の方にあった棒のようなものを引き出す。

「なんだこれ……」

 棒のようなものだと思ったら、棒そのものだった。

 驚きも、プレミア感もまるでない結果に、

「ハズレかな」

 俺はポツリとつぶやくでのあったが、

「あ、それ……すごい」

 セリナがなんかびっくりしているようだ。

……魔法の杖だよ。それもだいぶ業物っぽい」

 え、そうなの?

 正直、俺には年季の入ったすりこ木程度にしか見えな……

 あれ?

「ああ、でも、完全に壊れてるね。だからこんなとこに置いてあったんだ。強すぎる魔力浴びて魔法回路が焼ききれたんじゃないかな。もうガラクタだから捨てたんだね」

「いや……」

「?」

「見えるぞ……なぜだ?」

「ユウ、どうしたの」

「……回路が焼ききれているその通り。でもこれはがらくたじゃない。でも、なんで

俺に(・・)わかるんだ……こんなことかが、もしかして……」

 俺が異世界転生でうけた祝福(チート)

「セリナ。直るよこれ。俺が直してみせる」

 俺は、自信満々にそう言うのであった。


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