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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、女子魔法使い
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俺、今、謎の幼女

  俺、今、謎の幼女。


 和泉珠琴の件が解決。喜多見美亜(あいつ)の体に戻った俺は、今度はセナと入れ替わった? それは地元駅の構内という、いつ知り合いが通りかかるかもしれない、目立ってしょうが無い場所でのことだった。

 喜多見美亜(あいつ)が、俺に、キスをしようと迫ってくる、その瞬間、時間を止めて(?)、割り込んで入ったセナが代わりにキス。

 すると、俺は、入れ替わり、俺をお父さんと呼ぶ、謎の幼女になっていたのだった。

 でも……

 ——なんで?

 セナは俺とキスしても入れ替わらない特異体質のはずじゃなかったのか。

 キスして入れ替わらないのを特異体質と呼ぶのもなんだが、体入れ替わり現象に巻き込まれてからも、セナとセリナとのキスでは、今まで入れ替わりがおきていなかったのだった。

 なので、セナと、体が入れ替わることは無いとおもっていたのだが……


「お父さん、それは違うよ。私は入れ替わっていないよ」


「え?」


 俺はセナの声の聞こえた方に振り返えろうとしたのだけれど——

 どこから聞こえてるのこれ?

 相変わらず、誰もがピクリとも動かない駅の中。キスしようと前のめりになったせいで、妙な姿勢で止まっている喜多見美亜(あいつ)(俺の体)。

 で、俺が反射的に逃げようとバックステップ踏みかけたせいで、不安定な状態で静止している喜多見美亜(あいつ)の体。

 その他の、たまたま通りかかったせいで、この時間停止に巻き込まれている老若男女様々な人々。

 というか、俺がセナと入れ替わったのだから、セナは俺が入っていた喜多見美亜(あいつ)の体に入れ替わってないとおかしいのだけど……


「あ、今回、お父さん一人じゃ行けないとこに行くから……セナも一緒だよ」

「一緒?」

「そう……」

 ——?

 セナはどこでしゃべってるんだ。

「私は私だよ……というか私がしゃべってるに決まってるじゃん」

「え?」

 俺は、自分の……入れ替わった幼女セナの唇が、セナの言葉の瞬間も動いているのに気づいた。

「——!」

「そうだよ」

 入れ替わりでは無かった。正確に言うと、

「お父さんは、私の体に入ったけど……」

 セナはそのままなのか!

「そうだよ。セナの体にお父さんも一緒に入ってもらったってこと。お父さんは、まだ(・・)そこまで、ちゃんと昔を思い出してないから、この後行くところに一人で行ったら、一瞬で死んじゃうと思う。そしたら、セナも帰る体が無くなっちゃうじゃん。だから一緒なんだよ」

「……」

 わかったようなわからないような。

 俺が、なにやら、大変な場所に行かないといけなさそうなのはわかった。

 でも、具体的に、どういうことで、どこに行くという

のか、さっぱり要領をえないのだが、

「それは、説明しても信じられないかも……行くのは、世界を何個も渡った宇宙の彼方だから」

 うん。確かに、信じられない。

 そんな、突拍子もない話、普通の幼女に言われたのなら、無邪気な子供が妄想のままに適当に言ったと取り合わないところだが、相手がセナだからな。

 PC画面のゲームキャラクターにキスして入れ替わって行った先の世界(異世界?)でアルバイトで女神をやっていたような幼女だ。

「まあ、、信じてくれても、信じてくれなくても、お父さんは、すぐに行くことになるんだけど……行って見て貰えればわかるとと思うよ。百聞は一見にしかずだから」

 そもそも、今、セナと同じ体の中で話している、ということを本気で信じている俺が、冷静に考えればどうかしている。

 だが、体入れ替わりという超常現象に巻き込まれてしまって——今更それくらいでとは思う俺もいる。宇宙の果てとか言われると、さすがにそれにしても突拍子もなさすぎるとはいえ、

「世界を渡るとか、宇宙の果てとかというのは信じられないけども、まあ、この後、そこ(・・)に行ってから本当かどうか確かめよう」

「うん、それがいいよ。信じるも何も、事実なだけだから、それを見て判断して」

「ただな、どっちにしても、俺たちは、どっか遠くに行くのは間違いないんだよな」

「ん? そうだよ。それでなにか?」

「……いや、セナの言うとおり、俺たちが今から、宇宙の果てに旅だつなら……これどうするんだ?」

「これ?」

 俺は、駅のトイレの入り口前に静止して、ピクリとも動かない喜多見美亜(あいつ)の体見ながら言う。中から、俺が今抜けて、かわりに誰も入っていないのだとしたら、今この体は魂が無い抜け殻ということになるが、そのまま放ったままいなくなっても良いのか?

「ああ、なんだそんなことか。心配ないよ。もちろん、私たちが戻ってくるまで、この喜多見美亜(どろぼうねこ)の体はこのままだけど……時間止まっているんだから、私達がこの瞬間に戻ってくるまで。止まっている人たちの時間も止まっているんだよ。また、動き出した時にも、自分たちに何が起きたかまったく気づくことはないよ」

 なるほど、このまわりの状態が本当に時間が止まっているのならばそういうことになるな。でも、本当に時間が止まってるのだとしたら、それは、それで、

「でもだな……」

「なに? まだ心配事あるの?」

「ああ……もし、もしだな。俺たちが戻って来たら、それで良いんだけど、何かの不測の事態で戻れなくて、このままになったら……」

 世界は、このまま止まり続けてしまうのだろうか?

「戻れない? ……まあ、そんなことはないと思うけど、その時はお母さんが世界を元に……」

 ああ、そうか、謎の転校生セリナだったら、謎の幼女セナの仕掛けた時間停止の中でも普通に動いていて、ちょちょいと直してしまいそうだな。

 と、俺は納得したのだが、

「あ……でも、今、お母さん弱っているから、セナの未熟な魔法でも、解除するのに、何百年かかかってしまうかも……」

「何百年!」

 どうも、さすがのセリナでも、ちょいちょいとはいかないようだ。

 それにしても——何百年。

 そんな時間がたったらセリナは、

「あ……この世界の時間は止まっているから、お母さん歳取らないよ。何百年といってもお母さんの体感時間ではということだけど……」

 とはいえ、セリナが病院のベットで何百年もじっと時間が動き出すのを待っていると考えると、心配になる。

 だが、セナは、そんなことは気にしなくてもと、

「大丈夫だよ、お父さん、お母さんなら、何百年くらいなんでもないよ。なぜなら……」

 その瞬間、なんとなく、セナの声に哀愁が帯びたような気がした。

「何百年などと言わず、もう、何万回かわからない生を繰り返して待っていたのだから——お父さんを」


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