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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、女子貧困家庭
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俺、今、女子カフェ探索中

 

 和泉珠琴の執拗な、恋バナというか……喜多見美亜(あいつ)と俺の関係の詮索から逃れるように始めた、中目黒彷徨。

 この辺にいるのは間違いないが、どこにいるのかわからない、和泉家母——美江子さんを探して、当て所なく目黒川沿いを歩いている俺らであった。

 もう1時間以上は経っただろうか。

 でも、歩いた距離はそれほどでも無い。

 母を訪ねて三千里ならぬ、3千歩くらいの俺らであった。

 というのも、寄り道だらけなのであった。ただ単に歩くのも芸がないと、時々、立ち並ぶ店に入って服を見たり、雑貨を手にとって見たりで、時間の割には歩みは遅々としているが……

 これはこれで悪くないのかもしれない。

 別に、早く歩いてもその間に美江子さんとすれ違ってしまうかもしれないじゃないか。

 どうせ、あてもなく歩いているのだ。

 必死に歩き回って、美枝子さんを俺等が見つけるのも、俺等がいる店にたまたま美枝子さんがやってきて会う可能性もそんな違うとは思えない。

 今、歩いてる、目黒川近辺にいると決まっているならば、集中的に桜並木周辺の店に入ってみれば良いが、この付近にいるということがわかっているのみで、代官山や、下手したら恵比寿に近い当たりにいるかもしれない。

 中目黒駅に近い場所が目的地とは聞いているが、代官山で下りて、そちら側を散策してから向かうかもしれないし、ちょっと遠くなるが恵比寿から散歩かねて歩いてくるかもしれない。


「どうだろ? お母さん、あまり歩くの好きじゃ無いから、恵比寿から歩くって事は無いんじゃないかな? 電車代もケチりたいと思うから、一駅余計に行くより、中目黒でおりたと思うけど……目的地が坂の途中なら、登りたくないから代官山から下りてくるというのもあるかもしれないな」


 つまりどっちか、全くわからんという実の娘、和泉珠琴の貴重な意見であった。


「……どっちにしろわからんとなると、カンで動くしかないな」

「そうだね」

「となると……」

「あっち側かな?」

「ん?」

 代官山の方向を指さす和泉珠琴。

 何か、思うところあるのだろうか。

 ただのカンにしても。

 と思うが、

「私が、そろそろあっち側にも言ってみたいなって思って」

「……」

 おいおい、母の危機なのに、相変わらず真剣味に欠けるな。

 いや、まあ、

「どうせ、カンなんだから感覚で良いでしょ」

 そりゃ、そうなんだけど。

 それでも少しは悩むとかないのかな。

 ほんと、この母娘の関係は不思議な感じだ。

 だが、

「……じゃあ、行ってみるか」

 俺も、別に、人の居場所を特定できる探索超能力とかあるわけじゃないので、ひとまず美枝子さんの実娘の感覚を信じるとするが、


「……あれ……うわ!」


 歩き出そうと、踏み出した途端によろける足下。


「向ヶ丘、大丈夫?」

「……すまない」

 横にいた和泉珠琴というか喜多見美亜(あいつ)の腕につかまってなんとか転ぶのはさけるが……

 なんだ、結構足に来てるな。

「……私の体、そんな体力無いから。栄養も不足気味だし。昨日も随分歩いたから、今日とかだるくなかった?」

「あっ」

 そういえば、朝、なんだかつかれてるなあとか、足に疲労たまってるなとかいう感覚はあったが、そんなのは喜多見美亜(あいつ)の体にいるときは当たり前のことだからな。

 毎朝、10kmとか走らされるし、この頃は、夜寝る間も筋トレサボってないかメッセージくるしな。

 俺が、走っているだけだと、痩せない体質になってしまって体型も長距離ランナーみたいになってしまうと余計なこと吹き込んだせいで、筋トレもやらされるようになったので、自業自得ではあるのだけれど……

「美亜の体のつもりで動いたら、だめだよ。疲れたら、その時は休まないと」

「……」

 癖で、昨日の夜も筋トレしてた俺であった。

 ベンチやダンベルとかあるわけじゃ無い(喜多見家には最近常備された)ので、スクワットとか、ベットで腹筋とかだけど、一日歩き回って休まないといけない和泉珠琴の体を、逆に酷使してしまっていたのだった。

 それで、今日、ちょっと歩いたくらいで足がヘロヘロというわけだが、喜多見美亜(あいつ)の体に入れ替わっているときは、少し疲労感があるくらいが通常なくらいになってたのであまり気にしてなかった。

「どっちにしても、お母さん見つかる気配もないから、ちょっと休もうか。美亜の体は、おそろしいほどピンピンしてるけど」

 まあ、俺が入れ替わってからもダイエットと健康管理の鬼とかした喜多見美亜(あいつ)によって、その体は鍛え上げられてるからな。

「ちょうどお腹も空いてきたとこだから、どこかこの辺で何か食べたいような気もするけど、合コンでもないのに食事にあんまり出費はしたくないな……」

 ぐるっと周りの店を見渡しながら、そう言う和泉珠琴だった。

 まあ、確かに、周りのおしゃれなレストランはみんな高そうな感じに見えてしまうな。

 ランチとかだったら、そんなかわらないのかもしれないけど、やっぱ、おしゃれな店構えとか見ると、必要以上にびびってしまうのは、こんな場所慣れていない俺も同じだった。

 ならば、

「コンビニで何か買って、ベンチで食べるか?」

 俺は提案するが、

「え? せっかく中目黒まで出てきたんだから、もうちょっと気の利いたとこ行きましょうよ」

 あっけなく却下。

 とはいえ、気の利かない俺には、なんのアイディアもない。

 なので、

「……こうしようか。どこかカフェにはいって飲み物だけ飲んで、あとで腹が減るようならコンビニでなんか買おうよ」

「……ああ、それで良いんじゃないか」

 俺は、和泉珠琴の提案あっさり同意すると、

「じゃあ、どこにしようかな……服屋と一緒のあそこもよさそうだけど……」

 カフェを探して歩き始めるのだが、

「……席がいっぱいか。それなら、こっちのチョコも売ってるとことか……え、こっちもいっぱい。

 かわいい雑貨あるこの店……ここもだめ?」

 日曜の良い時間のカフェはどこも満杯。

 だが、

「あ、あの店、今、集団で5人くらい出た。あそこ、あそこ!」

 と言うと走り出す和泉珠琴。

 カフェ探すとなったら、生き生きとしてスタスタ歩き出した和泉珠琴を追っかけて、もう足がヘロヘロな俺であったが、最後の力を振り絞って追いかけると、


「あった、あった! 席空いてるよ。ここで休もう」


 なんとか一息つけそうな様子でホッとする俺なのであった。

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