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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、女子中学生
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俺、今、女子自由が丘到着中

 リア充JK——喜多見美亜(あいつ)——と身体が入れ替わってしまってから、その前には近寄らなかったような様々な場所に、頻繁に行くことになってしまった俺であった。

 都内の様々なオシャレスポットやイベント会場。

 原宿や表参道、青山あたりの、オタクボッチの元々の俺からすると、なんでそこが存在しているのかから理解できないような街から、渋谷とか池袋など栄えているんだろうなと思いつつ、なんかチャラい若者いっぱい集まってそうな街とか、——自分が避けていた街の数々へ。俺は、落ち着いて静かだったボッチ生活を懐かしみながらも、そんな様々な街や都内近郊観光エリアみたいなところへ、散々行くことになってしまったのだった。

 で、その行った先では。オシャレなカフェやら、デートしている男女で一杯の小綺麗なレストランで合コンをやらされたり、女どうし(中身は俺だが)で出かける時も、なんたらヒルズだなんたらフォートだみたいな、キラキラとした商業施設連れ回され、まるで興味のない服やらアクセサリーやらを目が死んだ状態で物色することになる俺。

 といっても、残りのJK連中だって、そんなとこの高い服は買えないんだけどね……。

 まあ、それはおいといて、この半年のリア充生活で、俺は、昔の自分では考えられないほど、様々な街や施設に足を運ぶことになったのだったが、


「よく考えたら自由が丘って来たことなかったかもしれないな」


 と、降り立った駅前の風景を見ながら、俺がポツリとつぶやくと、

「そうなの? お父さん身体入れ替わってからあちこち行ってるんでしょ?」

 俺をお父さんと呼ぶ、謎の幼女セナが意外そうな表情。

「そうだけどな……考えたら初めてだった。たまたまだけどな……」

 地元から結構近いといえば近いこの街。その中途半端な近さのため、かえって行き先として微妙になっていたのかもしれないが、

「二子玉は行ってるでしょ」

「そうだな」

 もっと近い「東京」の二子玉川になら、俺は行っている。

 思い出すのは、喜多見美亜(あいつ)と一緒に牛丼食べた時だが。

 その後も何回か二子玉は何回か合コンが行われたし、喜多見家の買い物で、一家総出で、車に乗って出かけることも度々の、俺らの地元に一番近い「東京」なのであった。

 というか、喜多見美亜(あいつ)と体入れ替わる前の俺でも、さすがに二子玉には定期的に来てたな。社畜両親とはいえ、週末の買い物とか、服を買いにデパートとか、俺の誕生日のお祝い会とか……考えてみれば、地元から多摩川を越えてすぐのこの二子玉の街は、引きこもり気質の俺や俺の家族でも、なにゃかんやで、それなりに頻繁に訪れている場所なのであった。

 でも、

「そこまで行けばすぐじゃん」

 と、セナは不思議そうに言う。

 確かに、二子玉まで行けば自由が丘は私鉄ですぐである。

 なら、たまに自由が丘に行こうとならないのかと。

「でも行く用事もないしな……」

「そうか、お父さん可愛い店とか興味ないもんね。美味しいスイーツとかもいっぱいあるんだけど自由が丘」

 そりゃそうだ。

 実は、甘いものは興味がないわけではないが、いくら女子に入れ替わったからといって、ほいほいと女子力(フォース)の暗黒面に落ちるわけにもいかない。

 乙女ちっくなカフェで、クレープやパフェを食べて落ち着くようになってしまったら、男として大事な何かを失うのだと俺は思うのだ。それが例え、どんな活力を俺に与えるものだとしても……。

 それに、無計画に、カロリー多い物食べると喜多見美亜(あいつ)にしばかれるしな。

「……でも、そういうのにも興味ないなら、場所替えたほうが良いかな? よく考えたらお父さんが好きなようなジャンルの店ないよね、この街」

 どうやら、言われるがままに自由が丘までついてきた俺だが、実は、あまり気乗りしてなかったのではと、セナは思ってしまったらしく、ちょっと困ったような表情である。

 だが、俺は首を振りながら答える。

「いや、このまま由が丘でいいんじゃないかな」

 だって、俺が好きなジャンルの店を探していったら行き先は、秋葉一択になるのである。 昨日も行ったばかりのその街にまたまた今日もというのは流石にと思う。

 また、俺が行きたい場所というのならば、次善の策で、他の街を提案できないわけでもないが……。

 古本だけでなく、新刊とかも含めていろんな分野の本がある神田の書店街とか、実は密かに趣味である建築物探訪で、いろんなビルとかの建築物とかが見れる新宿ビル街とか。ああ、この頃高層ビルがバンバン立っている大手町とかもいいな。


 ——って、だめだろ。


 いや、さすがに書店街とか高層ビル街とか、幼女と美唯ちゃん(JC)で行く場所ではないよな。セナがそんなのを好きだとか聞いたこともないし。

 となると——。特に行きたい店がないのに他の都内の繁華街とかまでわざわざ移動するよりは、近場の自由が丘というのは疲れなくて良いのではないだろうか。

 と、俺は思うのだった。

「……そうだね。お父さんが良いならやっぱりこのまま自由が丘で今日は遊ぼう」

 すると、嬉しそうににっこりと微笑みながらセナは言う。

「きっと、一緒ならどこでも楽しいよ!」

「そうだな……」

 俺は、彼女の言葉——一緒なら楽しい——を当然のことのように、なんの疑問も持たずに肯定している自分にきづいていた。

 俺の娘だと——どう考えてもありえないことを平然と言うセナであった。

 だが、彼女を前にすると、もし娘を自分が持ったらこんな気持ちなのかもしれないな……という感情が心の中をいっぱいに満たすのであった。

 愛おしく、守ってやりたくなるようで、落ち着く、なんとも幸せな感情。

 正直なところ、セナの言うように、一緒なら、いつも楽しいのであった。

 まあ、俺を全面的に信頼して、慕ってくれる幼女がいたら、それって娘みたいに感じて当然なのじゃないかな。と——俺は自分でセナへの感情をそういう風に理解して納得していたのだけど……。 


 俺は、後に、それ(・・)は間違っていたことを知る。ある意味では、——あくまでもある意味ではだが——セナは本当に俺の……。


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