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俺、今、女子リア充  作者: 時野マモ
俺、今、女子中学生
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俺、今、女子参拝中

 世の中、というかオタク界にはアイドルアニメという分野がある。

 アイドルを育てるプロデューサーになるゲームや、アーケードでおじさんが専有して女児を泣かすのが問題になったアイドル活動ゲームなんかを原作にアニメ化した人気アニメ——。他にも東北地方の震災復興を願って仙台を舞台にした少女が起き上がりそうな名前のアニメだとか、いろいろ人気作が目白押しだ。

 それぞれのアニメにコアなファンがついて、アニメそのものの人気の他に、中の人の声優の大ホール、ドーム級のコンサートなんかも行われ、オタク界の中にとどまらず、エンタメ全体の中でものすごい大きな一角をしめる分野となっている。

 これはこの頃のオタクエンタメ界では、まさしく事件と呼んでも良いような現象と言えるだろう。

 元々、アニメの中で、主人公がアイドルやってるとか、ヒロインがアイドルだとかと言う作品はけっこうあったようだ。クリーミーマミとかマクロスのリン・ミンメイとか。神が味噌汁つくりそうなアニメの中川カノンもそうだな。もっと古いアニメでパーマンのパー子の正体はアイドルの星川スミレだったりとかもした。

 まあ、そういうわけで、アニメの中でアイドルが出てくるという事自体はありふれた設定であったのだが…….。

 最近のアイドルアニメの盛り上がりは、アイドルというものが手段ではなくて目的になっていることが昔との違いなのではないだろうか。

 ただ、何で今になって? というのは不思議な感じがする。

 マンガとか、映画とかではアイドルになることが目的の作品など昔からいっぱいあったような気がするので、アニメでは、そういう作品が今まであまりなかった、あるいはあったのかもしれないけど人の記憶に残るほどのインパクトを残せなかった——というのは謎ではある。

 アイドルというのは、少なくとも日本においては、ずっと憧れの職業であったのだろうと思うので、それがテーマのアニメも一つや二つ伝説な作品があても良いと思うのだが、ネットで検索してみても特にでてこない。

 なんか妙な感じはする。

 アニメって、採用される物語のジャンルが、その顧客層にあうSFやファンタジーなどが多いのは間違いないが、その顧客たる子供(子供の大きなお友達も含む)のあこがれの職業、スポーツ選手や、レーサーなんかが主人公のものがたくさんあるのだ。

 でも、アイドルそのものがテーマになっているアニメはなかった……?

 アイドルってテーマになるようなものって思われてなかったのかな?

 子供が目指すようなものとは——それが人生のテーマになるものとは思われてなかった? 

 でも、ともかく、21世紀に入ってからは、それが真面目に子供が目指すべき目標と思われるようになった?

 あるいは深夜アニメの隆盛などで、アニメの顧客の年齢が上がったら、その人達にはアイドルというのは真剣なテーマとなりえた?

 

 とかとか……。


 なんか、この辺のことを考え出すと。日本の色んな文化的背景とか、社会情勢とか、とてつもなくいろんなことを考えないと答えが出ないようなきがするので、ここらで素人社会学者の考察は終わりにする(中途半端ですみません)。

 ただ、アイドルアニメというジャンルがここ最近大きな盛り上がりを見せているのは事実で、その中でも化け物級の多さでファンをかかえているものといえば……。


 もちろんラ◯ライブである。


 ファンの過激さ、熱狂度も度々ネットでネタにされるこのアニメ。

 声優ユニットの年末の国民的歌合戦出場まで果たした、まさしくお化けアニメである。

 そして、その作品中でも度々舞台として登場した神田明神。

 そこが今回の俺のOBAKE作戦の最後の戦場となるというのは、なるほどいかにもふさわしい。お化けつながりである。

 まあ、アキバに近い神社なので作戦の舞台として選んだだけといえばだけであるが、本日の作戦の集大成がここで行われる。

 ならば、


「良く考えれば妾も一緒に来る必要があったのか? なのじゃ」

「枯れ木も山の賑わいだよローゼさん」

「妾を枯れ木というののか? なのじゃ」

「一緒にされちゃ、枯れ木に失礼だよローゼさん。ローゼさんの本当の歳は……」

「セナよ。それ以上言うと、この宇宙が滅ぶことになるのじゃ……」


 いてもたってもいられずに、神田明神までやってくることになった俺であったのだが、勢いでついてきたローゼさんと、現地で合流した謎の幼女セナとの会話で滅びそうになっているのがなんともヤバイ感じの我らの宇宙であった。

「……いやいや、今は宇宙の行く末よりもお父さんの作戦の行く末だよ」

「……ふむ、確かに、沈みかかった船なのじゃ。この作戦の結果は妾も気に名のところなのじゃ」

「沈んじゃダメだよローゼさん……確かにもうだめな感じもしないでもないけれど」

 目の前の二人の間では、俺の小さな一歩が、宇宙にとっての大きな一歩と比べられているのが気になるところであるが、ともかく人類どころか全宇宙の危機は去ったようでなによりである。

 というわけで——。ローゼさんのアキバ駅前高層ビル屋上のレストランから神田明神まで移動した我が精鋭たちであった。

 俺が、現場に行って直接作戦の行く末を見守りたいと言ったら、ローゼさんもついてきて、

「私も忘れちゃ駄目ですよダーリン」

 もちろん片瀬セリナも一人で残っている訳がない。

 結局、

「……私は力足らずで申し訳ありませんでした」

 百合ちゃんも合流。

 今、出番に備えて近くのカフェに控えている下北沢花奈以外の作戦メンバーがフルで神田明神境内に集合となっているのだった。

 でも、

「これじゃ目立つよな……」

 境内に美麗女子大集合である。

 外国のファッションモデルかなってくらいの美形のローゼさんを筆頭に、明らかにただもんじゃないオーラ漂うセリナとセナ、天使の百合ちゃん、さすが喜多見美亜(あいつ)の妹あだけあって将来傾国の美女かってくらいのポテンシャルを感じさせる中学生美唯ちゃん——まあ今はその中の人は俺なんだけど……。

 特にローゼさんはゲームプラマジのコスプレそのままで来てしまって目立ちまくりというか、ゲームの中の魔法帝国元首ブラッディ・ローゼそのものにしか見えない完成度なので、こっそり写真取られたりしているな。この神社来るのオタク多いし、——やっぱり、俺ら、あきらかに注目あびすぎだろう。これから、こっそOBAKE作戦の最終局面を見守ろうというのに、何もかも台無しである。

「ところで、完成度とは何のことを言っているのじゃ? 妾は本物のローゼであるが」

 いや、そういう——心の中を読んでまで——の良いから。

「……まあ良いのじゃ。お主がすべて思い出したらすむ話じゃからな」

 思い出す……? 何を?

「……それこそ良いのじゃ。疑問に思わなくともの。覚えていないものをいくら考えてもわからないじゃろうしな」

 とローゼさんに言われて、頭の中に微かに走る違和感。こめかみのあたりがピリッとするよなうな痛み——気持ち悪さ。きっと何か、俺には思い出すべきものがある。そんな風に感じられてしかたがないのだけれど、ぼんやりとした、雲のようなモヤモヤが頭の中に満ちるだけで、何も具体的なものは思い出せずに、ただ眉間に深くシワを寄せるのだが、

「勇タン……今はそれ以上考えても無駄よ」

 セリナが、俺の心を読んだかのように言う。

「そうだよ、お父さん。それよりも、このまま境内にいるとまずいんじゃないの」

 おっと、そうだった。

 今のこの女子集団が目立ちすぎるからどっかに隠れなくちゃと思っていたのだった。

 でも、広いけどみ通しの良い境内、あまり隠れるところもないのだが……。

「本殿の後ろの方なら大丈夫じゃないでしょうか」

 確かに、百合ちゃんの言うとおり。

 というか、それくらいしとかないと見つかってしまいそうなほど俺たちは目立ってしまっているのだった。

 でも、

「せっかく最終決戦を目の前で見ようとここまで来たのに、とんだ無駄足じゃったな」

「はい……」

 ローゼさんの言うとおりであった。

 勢いで現地に来たのは良いが、現地にみんなでいると、あっさり見つかって、そもそもの作戦がなりたたなくなってしまいそうであった。

 さすがに知り合いにいっぱいに、デート中なのを見られたら美唯ちゃん構えちゃうよね。そんな状態で下北沢花奈が冷静に彼女を演じられるとも思えないし。作戦が続行できるとはとても思えない。

 と——。俺は、自分の無計画さにしょぼんとなりながら、カメラ(?)を操作するセナだけを残して本堂裏に移動。結局、そこでローゼさんの水晶玉を通して喜多見姉妹が神田明神にやってくるのを監視することになったのだった。

 確かに、これじゃローゼさんのレストランにいても同じだったな。

「そんなことはないよ。勇タン。やっぱりこうやって現場にいると臨場感が違うよ」

「あ、それはそうかな……」

 水晶玉を通してしか、作戦の様子を見れないのは同じだけど、やっぱり、すぐ近く、この本堂の先に本日最後の戦場がデートあるというのは、自分もちゃんと作戦に参加している気がして——違うな。

 心に緊張がビシッと張り詰める。

 そう、この肌触りが戦場よ……ととても35歳に見えないジ○ンの不遇の軍人の言葉が心に浮かぶ。

「それに、せっかくですから神田明神に来てみたかったですし」

「そうじゃの。妾も初めて来たが……」

 店をアキバにもってるのに神田明神に来たことがないのかローゼさん。

「何がご利益あるのじゃ?」

 それも知らなかったのかい。

 でも、

「商売繁盛とかですよね? ローゼさんのお店にも良いのではないでしょうか」

 百合ちゃんナイスフォロー。

 でも、

「平将門さまが祀られていて……」

「あ、それちょっと違う」

「え……違いました?」

 違うんだよね。

「平将門さまが神田明神に祀られていている三柱の神様のうちなのは間違いないけれど、商売繁盛は恵比寿さまで……将門さまは勝負強さとかのはずで……」

「ほう、平将門といえば当時の朝廷に反乱して最後には鎮圧された人物のはずじゃが、それが勝負強さの神様になるというのも不思議じゃの」

「それは、徳川家康が平将門さまに祈願してから関ヶ原合戦を戦って勝ったからと言われてますが」

「なんと、伝説には徳川家康、あの狸親父が関わっておったのか」

「……なんか知り合いみたいな口調ですね」

「ふむ。最後に会ったときは鯛の天ぷら食い過ぎで気持ち悪いとか言ってたがその後どうしたんじゃろな」

 いや、その後あんまり長くなかったから、内府さま。

「まあ、どちらにしてもだいぶ昔の話じゃからな、もはや生きてはおるまいと思っておったのじゃが……」

 いやいや、江戸幕府がなくなってからでも百年じゃきかないから。

「ふむ。もう一度一緒に鷹狩をしてみたかったのじゃ……とまあ亡きものをいつまでも悔やんでも仕方ないのじゃとして、時に……」

「はい?」

「お主、さっきこの神社に祀られる神は三柱と言いおったな。なのじゃ」

「はい……」

「じゃあ、もう一柱の神様は何なのじゃ」

「それは確か大黒さまで……そのご利益は……」


 ——縁結び!


 良く考えたら……美唯ちゃんその気まんまんでくるんだけど……大丈夫かそれ。


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