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《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は最強の娘たちと共に「世界」を再構築中―合計4⃣9⃣0⃣0⃣PV  作者: ざつ
第2章:王国編:知識争奪戦とトライアドの崩壊

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第33話:【号砲】救済のイレブン、キックオフ

 ――地響き。それは、世界を再定義するための鼓動。


 自由都市セーラの外縁、荒野へと続く街道。そこには、歴史上類を見ない異様な軍列……いや、「キャラバン」が形成されていた。


 中心に鎮座するのは、私が心血を注いで改修した移動要塞「アーク」。真鍮の装甲とマナ吸着アンテナを光らせるその巨体は、今やリュックのAdmin権限によって物理法則のバグを寄せ付けない「絶対聖域」と化している。


 アークの巨大なキャタピラが地表を粉砕して進むたび、不快な魔法の残り香であるオゾンの匂いはデリートされ、代わりに高出力エンジンの澄んだ熱気と油の匂いが大気を支配していく。


 その後方には、アストレイド公爵家が提供した10台の装甲支援車両が連結され、さながら鋼鉄の百足ムカデのように地平線を這っていた。


「……出力安定。次元のアンカーのノイズ干渉率、0.02%以下。リュック、いつでもいけるわよ」


 私はアークのブリッジ、特注の操縦席でコンソールを叩きながら告げた。

 隣に立つリュウガは、漆黒のコートを風にたなびかせ、黄金の瞳で前方――遥か彼方の王都アステリアを見据えている。


「了解した。……キャラバン全機、マナ・ブースト開始。……これより、王都内戦区域への介入プロトコルを『キックオフ』する」


 リュウガの号令と同時に、アークの巨大なキャタピラが回転を速めた。


「おらぁぁ! 野郎ども、遅れるんじゃねえぞ! このアークの『ケツ』についてこれるのは、選ばれた連中だけなんだからな!!」


 キャラバンの最後尾、武装バギーを駆るヴォルフが叫ぶ。その隣で、セフィラが屋根の上に座り、退屈そうに肉を頬張っていた。


「……ヴォルフ、うるさい。……排気ガスの粒子が、お肉の味を阻害する。……Admin、早く王都に着いて。……もっと、マシな食材があるはず」

「セフィラ、王都は今、お肉どころか食糧難の地獄よ……。あんたの胃袋、進軍前に満たしておくべきだったわね」


 私は溜息をつき、通信回線を開いた。


「オーボエ! シスターズの陣形はどうなってるの!?」

『……規律に則り、完璧なフォーメーションを維持しております。母様』


 十一女オーボエの冷徹な声が響く。


前衛フォワードには機動力に優れた三女コルネ、五女ユーフィ、十女ボーンの「三馬鹿」……失礼、特攻班を配置。中盤ミッドフィルダーには私と二女オルガ、長女チェロが展開し、後方バックを八女テューバが固めております』


「今、あーしらのこと三馬鹿って言った!? マジありえないんですけどオーボエちゃん! あたしたちは『期待のルーキー・アタッカーズ』っしょ!」

「そうだよ! ボクの火炎放射で、王都の腐った空気も物理的に焼き払ってあげるからね!」

「あたしのスピーカーも最大出力ですよぉぉ!! 王都中にあたしたちの勇姿をストリーミング開始だお!!」


 メイド服姿のまま、武装バイクやバギーを駆る三人が、砂塵を巻き上げてアークの周囲を飛び回る。


 彼女たちがアクセルを踏み込むたびに、慣性を無視した爆発的なトルクが地面をえぐり、加速のラグを完全にデリートした機動が荒野を切り裂いていく。

 モニターの隅には、アークの直後を移動する八女テューバのバイクが映っていた。


 完璧なまでの縦巻きロール(ドリル)を左右に揺らし、その姿はどこかの高貴な悪役令嬢を思わせる威圧感に満ちている。だが、彼女は一切口を開かない。ただ無言で、風に舞う砂塵が自らの装甲に付着するたび、眉を寄せては魔導ワイパーで念入りに磨き上げている。


「テューバ! 見た目だけならあんたが一番強そうなんだから、もう少しこう、威厳のある台詞とかないの!?」

『……(ふるふると激しく首を振るテューバ)』

『母様、テューバに無理強いはいけませんわ。彼女、本当はすごく恥ずかしがり屋で、誰かと話すだけでマナ回路がオーバーヒートしそうになるんですもの』


 オルガが慈愛の笑みで補足する。なるほど、あのドリル状の髪型も、少しでも強気に見せて視線を逸らそうという彼女なりの防御結界(コミュ障対策)なのね……。


『……(小声で)不浄。滅、却。……。』

『あ、今テューバが「不潔なものはまとめてミサイルで滅却する」と言いましたわ! 流石は私の自慢の妹、今日も清潔クリーンですわね!』


 九女ハープ、八女テューバ、そして王都にいる四女ルーテ。


 誰が言ったか(いや私なんだけどね)、世に言う「清潔トリオ」が揃った時の、あの「世界の汚れ(物理的・倫理的双方)」を一切許さない殺伐とした空気……。正直、産みの親としては王都の連中より彼女たちの方が数倍怖いわ。


 その時、アークのメインモニターにノイズ混じりの映像が割り込んできた。


『……あ、あー。聞こえる? 母様、父様。こちら王都潜入中の七女クララ。……電波のノイズがヤバいけど、ライブ配信の帯域は死守してるよ!』

「クララ! 無事なの!? ルーテとヴィオラは!?」


 画面が切り替わり、屋根の上を跳ねるように移動する人影が映る。


『……(頷く)』


 四女ルーテだ。彼女は画面越しに私と目が合うと、面倒くさそうに人差し指で「一」を作った。


「ルーテ、何よそのジェスチャー。一分で終わらせるってこと?」

『……否。喋るの、だるい。……異常、なし。……以上。』

「ちょっと、ちょっと。それじゃ状況わからないわよぉ。ヴィオラ補足して?」


 相変わらずの省エネ無口。ルーテにとって言葉を発することは、物理的な負荷が最も高い重労働なのだ。


 その隣で、漆黒のメイド服を翻し、大型の魔導鎌を振るう六女ヴィオラが、血に汚れた教団騎士の死体を一蹴した。

『母様、王都はもはや「国」ではありません。……聖騎士団長イグニス率いる教団騎士団が、市民を「盾」にして技術院のオートマタ部隊と正面衝突しています。彼らの魔法陣は発動までに数秒のラグがあり、その余剰熱で周囲の建物を無駄に焼き払っている。あまりにも非効率な地獄絵図ですわ。……そして、王政復興派の老人たちは、地下シェルターに籠もって貴重なマナを自分たちだけに供給し続けているわ』


 ヴィオラの冷徹な報告。画面の端では、クララが「実況」を続けている。


『……見てください、視聴者の皆様! これが「正義」を謳う教団の正体です! 物理的に腐ってますねー、最低ですねー!』

「……不合理だな」


 リュウガが低く呟いた。


「ナノマシンによる環境維持システムが、三勢力の奪い合いで限界に達している。このままだと、あと数時間で王都の中枢部で『物理法則の消失ディレート』が発生する。……そこにある命ごと、な」

「……リュック。行きましょう。……教団も、技術院も、老害たちも、まとめて私の技術で叩き潰してやるわ!」

「ああ。……キックオフだ、エリー。……シスターズ、全機、フルドライブ。……ターゲット、王都アステリア・全域」


 その瞬間、アークの周囲を固める「三馬鹿」が叫んだ。


「行くよー! ボクたちの『勝利』、物理的に確定させてくるからね!」

「マジぶち上げ! 王都の奴ら、あーしらのフルオーケストラにビビりまくればいいっしょ!」

「あたしの実況を世界に届けますよぉぉ!! 救済キャラバン、進撃開始だお!!」


 地平線の向こう、暗雲に覆われた王都アステリア。

 そこへ向かって、鋼鉄の巨獣「アーク」と、11人の「家族」が、砂塵を巻き上げて突進する。


「母様。……また歩行姿勢が乱れています。……そして、その不安げな表情も規律違反ですわ。……笑いなさいまし」


 通信回線越しに、末娘オーボエの冷徹な、けれどどこか慈愛の混じった声が届く。


「……っ、はいはい! 正論ね、分かったわよ! 私だって、あんたたちの『母様』なんだから、最後はどっしり構えててあげるわよ!」


 ――産みの親なのに、また末娘にガチで怒られた。私の創造主としての威厳、今この瞬間に霧散したわね……。


 私は、サイズの合わないドレスの胸元を正し、前方の荒野を指差した。


「救済キャラバン、進撃開始! 私たちの不完全なシンフォニー、王都中に響かせてやるわよぉぉ!!」


 号砲。


 それは、絶望が支配する世界への、反撃のファンファーレだった。


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