魔女と薬のお勉強
魔女の家は楽園だった。
薬学についての様々な本を、人目を気にせずいくらでも読める。
試してみたい薬があれば、庭の薬草で幾種類もの組み合わせを試すことが出来た。
そして、既存のレシピよりも副作用を抑え、効能を高める組み合わせを魔女に提案すると、彼女はいつも頭を撫でて褒めてくれた。
「イヴァン、お前の才能は予想以上だ。私は素晴らしい後継者を見つけたようだね」
その後は、魔女から薬草の扱いや育て方について教わる。
家の裏口から出た先には庭があり、広大な畑には野菜や貴重な薬草が生えている。
なんでもここでしか育たない薬草も沢山あるそうだ。
ワクワクするような効能を持つものばかりで、今すぐ採取して薬を作ってみたい、!!
「この庭には、今私の魔力が充ちている状態なんだ。日光や水で足りない栄養を魔力で補っているイメージだな」
「魔力?それって俺にもできるの?」
「ああ、お前にもできるさ。私が後継者に選んだからね。まあその辺はおいおいやっていこう。さあ勉強はおわり!ご飯にするよ!」
俺は家へと引き返す魔女を慌てて追いかける。
数日この家に住んでいてわかったことだが、薬を作ることにかけては天才的な発想と技術を持つ彼女だが、料理の腕は壊滅的なのだ。
毒キノコを食卓に出すことなど序の口である。
オーロラのスープに、ネチョネチョとした白いなにか、緑のヘドロのようなものをさあ食えと言われた際には、魔女の正気を疑った。
何をどうしたらあの食材で、この色が出せるのか意味がわからない。
それ以来、食事に関してはイヴァンが率先して作るようになった。
昨日寝かせておいたパスタ麺がもう頃合だろう。
今日はカルボナーラにするか。
「いつも通り美味いなあイヴァンの料理は!何を使ったらこんなに美味しくなるんだ?」
「別に普通だよ。ったく、あんな料理の腕でよく今まで死ななかったな」
「なんだと!このガキー!」
「誰がガキだ!おい!離せー!」
髪をぐしゃぐしゃと掻き回す魔女の手を振りほどこうと暴れる俺を、魔女は笑いながらさらにもみくちゃにする。
「はーなーせー!!」
「ははは!暖かいなーお前!」
「離せっつってんだろ!話を聞けよ!」
どうしてこんなに陽気なんだ、魔女のくせに。
調子が狂う。
イヴァンは赤くなった耳を隠すように、そっぽを向いてカルボナーラを食べ続けた。




