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心配性の冬野くんと運命主義者の秋山くん

作者: 歯車 春希
掲載日:2025/12/23

 あたしがテーブルにラーメンを置き、丼から手を放して、コショーを取ろうとすると、向かいの席から冬野くんが言った。


「だめだよ、春希はるきさん!」


「えっ?」

 あたしは目をおおきく開けて、彼を見た。

「……何が?」


「その丼の置き方、キミの膝に近すぎるよ! もし今、地震が来たら、膝の上にラーメンがこぼれて、キミが火傷してしまう!」


「あぁ……。なるほど……」

 あたしは頬をポリポリと掻いて、笑った。

「そんなことまで予測してなかった。確かにあれだよね、なんだっけ」


「『憂いなければ備えなし』だよ」


「あぁ、うん。それそれ」

 なんか違う気もしたけど、あたしはうんうんとうなずいた。

「なんでもいつ何が起こってもいいように、身構えておけば、安心だよね」


「そうだよ! そして丼から手を放しちゃダメだ!」


 見ると冬野くんはいつ地震が起きてもいいように、ラーメンの丼にしっかりと手をかけて、両足は床に踏ん張っていた。


「ありがとう、心配してくれて」

 丼を少し自分から離して、しっかりと片手で支えると、割り箸を口で割り、前傾姿勢であたしはにっこり微笑み、お礼を言った。

「本当に、ありがとう」


「本当ならキミのことも……一瞬たりとも放さずに側に置いときたいんだ」

 あからさまに不安を顔に浮かべて、冬野くんが言う。

「そうじゃないとキミが他の男に取られちゃいそうで……。でも、束縛は嫌いなんだよね?」


「うん」

 ラーメンを食べはじめながら、彼を安心させる笑顔で、あたしは強く言った。

「大丈夫だよ。あたしのこと、信じてね?」



♣ ♣ ♣ ♣



「人間いつかは死ぬんだ」

 夕暮れの空を見上げながら、秋山くんが言う。

「だから何をどう気をつけて生きようと無駄なんだ。疲れるだけさ」


「そうだね」

 土手の斜面に彼と並んで寝そべって、あたしはうなずく。

「あんまり心配性だと、確かに疲れるかも」


「何がどうなろうとそれは運命なんだよ」

 感情の乏しい秋山くんの横顔が、夕陽に照らされて綺麗だった。

「だから春希はるきくん──キミが俺と出会ったのも、俺と付き合っているのも、そして俺といつか別れるだろうことも、どうでもいいことなんだ。運命なのだから」


「秋山くんと愛し合えることはどうでもよくはないよ? 少なくともあたしにとっては」


「確かに今は素晴らしい。キミといるひとときはこの上なく楽しい。しかし、キミがもし他の男のことを好きになったとしても、それは運命だ。俺が悪いことをしたとしても、そうなる運命だったんだ。どうしようもないんだよ」


「ふぅん……。そんなものかな」


「そんなものだよ。そして、それが自由というものなんだ」


 風が二人のあいだを通り抜けた。

 くっついてるつもりだったのに、風はあたしたちのあいだを通り抜けていった。


「じゃあ、今、別れよっか?」


「それは嫌だ」


「なんで? 運命なんだよ?」


「運命じゃない。それはキミの気まぐれだ。俺はキミとしばらくこうやって空を眺めていたい」


 それから二人とも黙って、暮れゆく空を見つめてた。


 いいな──


 冬野くんに守られるのもいいけど、秋山くんと自由な空気を楽しむのも、いい。


 でも……



♡ ♡ ♡ ♡



「春希ちゃん、次の週末、遊園地に遊びに行かない?」


 夏川くんに誘われて、あたしはにっこり笑ってOKした。


 冬野くんや秋山くんのことは好きだけど、個性が強すぎて時々息苦しくなったり心が離れてしまったりする。


 夏川くんはフツーだ。


 付き合っててフツーに楽しいし、バランスが取れてる。


 優しいのは冬野くんだし、カッコいいのは秋山くんだけど、夏川くんは一緒にいて居心地がいい。


 誰か一人にするならやっぱり夏川くんかな。


 でも、男のひとって、よく言うでしょう?


『いつも家庭料理を食べていたら、たまには外食がしたくなる』って。


 その言い訳、あたしも使わせてもらって、いいよね?


 味の濃いものばっかり食べてたら、やっぱり薄味のカレぴが良くなっちゃうんだもん!











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― 新着の感想 ―
脳内ノクタスピンオフ10万字よゆーですた♪
青春のネオロマンス。 選ぶのは彼女! 彼女こそが主人公! ……………刺されないようにね?
 主人公は春というよりも秋のイメージかな。  この移ろいやすく気まぐれな感じは幸せに満たされているからでしょうから。  これじゃ男の子たちも秋のように虚無的で寂しげだったり、冬のように厳しく拘束的だっ…
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