8話:また来世でも
寝静まった住宅路を、二人で歩く。手が冷えないように、さっきコンビニで買ってきたカイロを恋人繋ぎをした手の間に挟んで握りしめている。
「リンは昨日、何してたの?」
「私は、朝起きたら本棚の気に入ってる本だけを読み直して、昨日の午前中に全部売り払った。」
「えっ〜!全部!? リンって、かなりの量の本、持ってたよね?」
「んー、そうだけど、1週間前からお気に入りの本以外はフリマに破格で出品して大体売り払ってあったから、合計しても大した冊数じゃなかったよ?」
「それで?それで?午後は?」
「そんなに気になる?まあ、いいけど。で、午後は売って得たお金で外食したりして遊んで…。あっ、そうそう。今日の為に、美咲にプレゼント買ったの。はい、コレ。私からの最後のプレゼント。」
一度、握っていた彼女の手を離してポケットにしまってした小箱からジルコニアダイヤモンドで装飾された指輪のアクセサリーを取り出して彼女の左手薬指に付け、自分にも付けた。
「本当は、着いてから渡そうと…えっ?何?何?も〜、泣かないでよ〜。高槻のLaFTで一つ300円くらいのアクセサリーなんだから〜。」
「だって…、プレゼント…貰えるなんて、聞いてなかったから…。しかも、お揃いだし…」
「ちょっと〜、小さなプレゼントなのに、流石に泣きすぎだよ。それに、事前に教えちゃったらサプライズじゃ無くなっちゃうでしょう。」
「…、代わりにコレあげる。」
そう言って、彼女は自分に付けていたネックレスを外し、私に付けてくれた。そして彼女は、彼女と水族館でデート中に彼女が土産コーナーで欲しそうにしていたので私がプレゼントした紺色の上に白く細い線でイルカの模様が描かれたチョーカーを付けた。
「じゃあ、お礼に私のネックレスをリンにあげる。」
「サプライズなんだし、別に無理して何か私にくれようとしなくても大丈夫なのに…。因みに、なんで首飾りを2つも持ってきてるの?」
「実は、このチョーカーはお守りとして持ってたんだ。だけど、やっぱりリンから貰ったものを付けてる方が安心するの。なんか、『私がリンのもの』っていう証明になるっていうか。ほら、例えば〜、リンに夜まで愛された、って事とかね?」
「っ、急にそういう事言っちゃダメ。ここ、家じゃないんだから。」
「今、二人きりだよ?それに知り合いに会う可能性もないし…」
「と、とにかく、ダメなの!」
「やっぱ、リン可愛い〜。」
二人で事前に今日と予定していたので、直前になっても穏やかで怖くない。天候も予報通り、雲一つないので、星空が私達を照らし出す。
「リンがくれた、この指輪、大切にするね!」
「…あのさ、美咲。私と逢ってくれてありがと。」
「どうしたの?急に。こちらこそありがとう。来世もよろしくね。」
「勿論。浮気しないでよね。」
「なんで、そうなるのよ〜。」
「次も人気者でしょ、貴方は。私以外を選ばないでよ。」
「当たり前じゃん!愛してるよ、リン。」
「知ってる。」
手を取り合って、建物の端に足をかける。『せーの』などの掛け声で合わせてタイミングを図るのは野暮な気がするので、どうしようかと迷っていると、彼女が微笑みながら声を掛けてくれた。
「じゃあ、一緒に、いこっか。」
やっぱり私の彼女は、こういう時にリードするのが上手い。やはり、彼女は私にとって一番の存在だ。彼女の温もりが伝わってくる程に彼女をギュッと抱きしめ、彼女と恋人繋ぎをして、重力に身を任せた。
〉ーーー貴女とならば何処へでもーーー〈
〜the end 〜
最終話までお読み頂きありがとうございました。時系列上の真のラストは導入として書きましたので、良ければ1話をご覧ください。
今後、気が向いたらこのシリーズのIFストーリーを創作するかもしれません。
次のシリーズもよろしくお願いします!