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1話:彼女と私

当サイトでの白の初投稿です!

他の投稿サイトにて年齢制限なしに掲載している1話です。2話以降は年齢制限を付ける場合があります。

〉ーーー全身のあちこちがぼんやりと痛い。しかし、その痛みすら遠のいていくほど意識が薄れていく中、空に満面に広がる星の輝きと指飾りの輝きが、より一層、貴女の整った顔を綺麗に魅せた。『私は貴女が最期の相手で良かった。貴女は今、どう思っているのだろう?』こちらに向いた顔から伺える私と同じ様に、うっすらと開いた目からは何も分からないが、最期に抱き寄せたい。しかし、私の華奢な腕にはもう力が入らない。ならば、せめて、今、握りしめてあっている手を最大限強く握ってあげたい。力を振り絞った後、微かに握り返してくれた、そんな気がした。ーーー〈


今朝のホームルームルームで模試の成績が返却され、クラス全体が一喜一憂している。もちろん私も。


…比較的レベルの易しい新研模試で、偏差値48…。いつの間に、こんなレベルまで落ちたのだろう…。中学の頃はもう少し偏差値は高かった。今からでも巻き返せる!などと、言わないで欲しい。そんなに簡単だったら実行している。中高一貫校だった事もあり、偏差値的にもメンタル的にも、もう実力不足だ。中1の頃は定期テストで学年4位を取り友人も多かったが、順位が落ちるに連れて徐々に私を取り巻いていた友人も離れていった。

…結局、あなた達が興味を持っていたのは私じゃなかったのね。まだ、あなた達よりはマシな成績なのに。

そんな風に独りで捻くれている間に私より頭が良くなり、中3の冬ごろには、私の立場は完全になくなった。また、その頃からは今更過ぎる関西弁でない事に対する陰口が増えた。そんな状況なので、休み時間は主に読書をして時間を潰し、帰宅してからは気が向いた創作活動をするだけになっていった。しかし、何かしらの創作活動をしても完成品のクオリティーが自分の理想に届かず、途中で放棄してしまう事も多かった。どんどん周りからは置いてかれ、自暴自棄になりがちになった今の私に、なぜ彼女はこんなにアプローチしてくるのだろう。彼女は、今のクラスで早くも中心的存在になっている。噂によれば、成績優秀でクラストップ、過去に大会で入賞した事がある程スポーツも得意で運動神経が良く、おまけに容姿まで整っているという、まるで漫画に出てくる様な3拍子揃った主人公だ。

そんな彼女と私が話す様になったのは私がクラスのホームルーム委員に、内申点に弾みが付くというので立候補した事がきっかけだった。ホームルーム委員の募集枠は2人なので、友人とペアで立候補するのが通例なのだが、中学からの友人とはクラスが分かれてしまったのでソロ立候補を強行した。運良く、他に立候補者はいなかった。しかし、担任がどうしても2人という規定は変更できないと言うので、今度は私のペアの立候補を募る事になったのだが、誰も立候補しなかった。そんな時に、クラスの中心的存在だった彼女が立候補したのだ。私は当初、彼女をクラスの同調圧力で選ばれた私への生贄の様な存在だと思ったので、クラス委員の仕事は私が率先してやるしかないと思っていたが、彼女は私よりも真面目に仕事をこなし、更には先生から指示されていない事まで自発的に行っていた。その事を知った時は驚き感心したが、私が彼女を無意識のうちに観察していたので彼女は、私が彼女自身を気にかけている親切な人などと勘違いしたのか、積極的に私に話しかけてくる様になった。


「そんなに落ち込む事ないって!元気出してよ〜!」

「廣田さん、慰めてくれなくていいから。それに勝手に成績表を盗み見てきたのは、あなたでしょう?。」

「見えちゃっただけだもん!盗み見たなんて人聞きの悪い事言わないでよ、シバリン〜!」

「シ、シバリン?それ、私の事?もう少し、マシな呼び方ないの…?」

「じゃあ、シバサキ リン?」

「それ…、そのままじゃない。まあ、いいけど。」

「ヤッタ!公認されたぞ〜!」

「…それ、容認しなかったら、私の名前無くなっちゃうじゃない…。」

「ハッ、確かに…。じゃあ、リン……とか、他にも…。」

「そんな事より、今はホームルーム委員の仕事やるべきでしょ。」


いつも、彼女がマシンガントークをするので私は基本、内容に合った返事をするだけだ。彼女が私に日常的に話しかけるようになった初めの頃は、彼女の周りは私と関わる事をやめる様に彼女に勧めていたが、しばらくすると強要はしなくなった。もちろん、依然として私には話かけてこないが。

今年は昭和の日が月曜日だったので3連休に入った。せっかくの祝日なので、複合施設にショッピングを兼ねた散歩に行った。帰宅中に偶然、廣田さんと彼女の親らしき人が塾から出てくるところを見かけたが、心なしか廣田さんにいつもの元気が無さそうだった。流石に彼女でも勉強した後は少し疲れているのだろう。


「明日からゴールデンウィークだから今日も休みが良いよね〜。そう言えば、リンって3連休中は何してたの?」

「大して何もして無かったかな。オンラインゲームくらい?」

「あ〜、そうなんだ…。」

「?。何のゲームなのか聞かないんだ。いや、別に良いんだけど。大抵、ゲームの話すると食いついてくる人多いじゃん?」

「あまり、ゲームやらないからタイトル名を聞いてもわからないんだよね〜。」

「そっか。そういえば、廣田さんって塾行ってるの?この前、見かけたんだ。」

「あ〜、うん。」

何故か、彼女の表情が曇る。まるで、何かを思い出したくないような、恐れるような、どこか不安そうな顔になる。

…この違和感はなんだろうか?別に大して嫌がるような話題でもないと思うが。最近、このような事が増えたような気がする。あまり構ってあげられてないから私が彼女のことを理解出来ていないのだろうか。以前、彼女からリクエストされたし一緒に遊ぼうかな。

「廣田さんが良ければ、ゴールデンウィークの最終日に私の家で一緒にゲームしない?」

「本当?いいの?前、私がリンの家で遊ぶ事を提案した時はリンに拒絶されたのに…?」

「拒絶て…。別に拒絶はしてないわよ。その時は予定が合わなかったの。」


そして、当日。

「ちょっとリン!こんな朝から友達が来るなんて聞いてないわよ!」と母親が私の部屋に飛び込んでくるまで私は寝ていた。決して昼まで寝ていた訳ではない。確かに廣田さんには、午前中ならいつ来ても大丈夫とは伝えてあるが、午前7時半に遊びにくる人がいるのだろうか。休日だった事もあり、ついさっきまで寝ていて何の準備もしていないところに彼女は入室してきた。

「リン〜。おはよー!って、そのパジャマかわいい〜!あっ、勉強机の上の小物、チビカワじゃん!それに目覚まし時計、ユデタマじゃん!あっ…あれも…。」

「…なんで、あなたは朝からこんなに元気なのよ。それに、まだ私、着替えてすらいないし…。とりあえず着替えるから、少し廊下で待ってて。」

「えー。いいじゃん、女の子同士だし〜!」

「はいはい、いいから外で待ってて。」

たまに、彼女はとても子供のような言動になる。そんな彼女を私の部屋からなんとか押し出し、今日のために選んでおいた私服を着て髪型も三つ編みにセットし、彼女とスイッチやカードゲームで遊んでいると、彼女のスマホの電話の着信音が鳴った。偶然、私の方が彼女のスマホに近かったので手渡す為にスマホを取ると、どうやら彼女の父親からの電話のようだ。彼女に手渡すと、顔色が蒼白になりながら、電話に出た。しばらくの間、暗い表情で会話をした後、電話を終えた。

「廣田さん、大丈夫?」

「早めに帰ってこいって。ごめんね〜、リン。もうそろそろお昼だから、一緒に昼ごはんを食べに行かない?その流れで帰ろうかな。」

表情は笑顔で話しかけてくれているが、瞳の奥はどこか憂鬱な様子だった。塾帰りの彼女の様子と少し似ている。どこまで踏み込んで良いのか、私には掴めなかったので、その後は一切その事には触れずに雑談をして、彼女と別れた。


ゴールデンウィークが終わり、これまでと変わらない学校生活が始まった。ひとつ変わった事があるとすれば、いつも廣田さんの周りにいたクラスメイトが廣田さんと一緒にいる回数が減った事ぐらいだ。どうやら、廣田さんはスクールカーストのトップに担ぎ上げられ、逆に話しかける事を躊躇する人が少し増えたようだ。それでも相変わらず、彼女は私に積極的に話しかけてくる。そんな日々が続く中、梅雨も過ぎ、段々本格的な夏が始まりかけていた。高校にしては珍しい水泳の授業も始まり、廣田さんに関してようやく気づいた事がある。それは、廣田さんは夏には普段から日焼け防止のアームカバーをしていて、水泳の授業中もラッシュガードを着ているので、一見すれば、年中長袖を着ているように見える。確かに、日焼け防止の観点で考えれば、そんなに不思議でもないのだが、ここまで徹底している人は滅多にいないので少し驚いてしまった。なので、本人に理由を聞いた事が一度ある。すると、意外な返事が返ってきた。

『そんなとこまで観察してたの?偶にリンって、ちょっといやらしい時あるよね…。じゃあ、今度、プライベートで一緒に遊びに行った日に教えてあげる…。』と。腕についての事なのに『いやらしい』などと言われた真意は掴めなかったが、幼い頃に怪我をしてしまいその傷跡を隠しているのだろうと言う勝手な想像がついた。私が彼女の事を見過ぎだと言いたいのだろうか?確かに言われれば、無自覚に見ている気も少しはするが…。なんとなく彼女のことが気になって仕方ないのだから。

今後の美咲とリンの関係を是非お読みください!

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