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須賀幸平は凡人である〜case2.もしも凡人が異世界召喚されたら〜  作者: 井上むくすけ
Case2.~もしも凡人が異世界召喚されたら~
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case2.異世界ってのは僕等の夢なんじゃないですかね_1-2

1-2


「……んん、んぁ……? ……ア?」


 目が覚めるとそこは馬車の上、同乗している面々は明らかに日本人ではない。


「ハリレレ バリトゥーア ジ ホウレホウレ ハムニカッタ?」


 隣の浮浪者風の男が話しかけてきたがさっぱりわからん。何語だ? 聞き覚えの無い言語だ。


「…………何で俺、パンツ一丁で縛られてるんだ……?」


 この感じ、まるで追剥にあったかのような……。

 周りを見れば同じく荷馬車に乗せられた面々は俺と同じように縛られており、一様に暗い顔をしている。荷馬車を囲むように歩いている奴らも何となく盗賊っぽいビジュアルをしている。何ならリーダーっぽい奴は制服の上着をホクホク顔で羽織っていた。


 …………。


 これ完全に追剝されて身売りされそうになってない……?

 何々、なんなのこれ!? 何ですか、この状況……⁉ 

確か学校の帰り道に急に地面が光り出して……。嘘だろ……?



「異世界転移したってコト……⁉」



「ヘイガ! スットリグルバッ! ヘイルゲイルバリッヘ!」


 盗賊っぽい奴の一人が怒鳴りつけてくる。何となく『黙れ! 大人しくしてろ! ぶっ殺すぞ!』と言われている気がする。

 と、その時――――



『グェエエエエエエエエエエエ――――――ッ⁉』



 耳を抑えたくなるような奇声と共に、荷馬車が横転する。


「いったぁ……ってアレは……⁉」


 見れば頭部は鷲、体は鶏のような間抜けな見た目をした鶏が盗賊達と戦闘を繰り広げていた。驚くべきはその巨大さ。羽を広げると、たった今ひっくり返された荷馬車の三台分はある。盗賊達も剣や弓、槍で応戦しているが戦況は悪そうだった。


「と、取り敢えず今のうちに逃げよう」


 俺は混乱に乗じて森の中へと走り出した。


※※※


「うっ……うっ……心細いよう……ここどこだよぅ……。ずっと森だよぅ……。擦り傷が痛いよぅ……。うぅ……お家に帰りたい……」


 泣きべそをかきながら一人森を進む。心細さが半端じゃない。幼少期、出先で母親とはぐれた際のことがフラッシュバックし、より心細さが増していく。

 それに森の景色を見れば見るほどここが自分の世界ではないことが伝わってくるのも心細さに拍車をかける。その辺に生えている草や花、木の葉の形が、少なくとも日本では見たことがないものばかりだし、森のどこから聞こえてくる鳥の鳴き声も聴きなじみがないものだ。

 しかも追剥されてまさに着の身着のままパンツ一丁である。異世界のスタートとしてはあまりに心もとないのではなかろうか。今の俺の手元にあるのはこのパンツと、さっきそこで拾った良い感じの木の棒「エクスカリバー(命名)」だけである。


「そ、そうだ……! ここが異世界っていうなら……!」


 俺はラノベから得た異世界の知識を思い出し実践する。



「ステータスオープン!」



 スガコウヘイ ハ ジュモン ヲ トナエタ シカシナニモオコラナカッタ



 あれ、おかしいな……今まで俺が読んだラノベだと大体、ステータスオープンと言えば謎のウィンドウが表示されて自身のステータスが確認出来て、チートスキルとかが表示されるのが定番パターンなんだけど……。



「ステータスオープン!」



 スガコウヘイ ハ ジュモン ヲ トナエタ シカシナニモオコラナカッタ



「ステータスオープン!」



 スガコウヘイ ハ ジュモン ヲ トナエタ シカシナニモオコラナカッタ



「タッカラプト ポッポルンガ プピリット パロ!」



 シェンロン ハ アラワレナカッタ。



 やっぱりナ〇ック語もダメか……。



「女神様~⁉ 召喚された僕、ここにいますよ~ッ⁉ 手違いが起きてると思うんすけど~⁉ チートスキルとか貰ってないんですけど~⁉」



シンタク ハ サズカラナカッタ



 どうやら女神様的なものもお留守らしい。


「……なるほど、これはあれだな……世界観が違うっぽいな……」


 何でだよ!? おかしいじゃん! 異世界と言えばチート無双じゃないのかよ⁉ そもそもスタートが盗賊の馬車スタートって何だよ⁉ 召喚するならちゃんと王宮とかに召喚してくれよ! 四つ這いになって悔しがるも現実は変わらない。


「……ン? そう言えば翔は何処に行ったんだ? アイツも魔法陣に入ったってことはこっちの世界に来てる筈だよな……?」


 そもそもアイツが無理やり魔法陣に侵入してきたから俺がこんな目に遭っているのでは? 何か腹立ってきた。見つけたら絶対に一発殴ってやる!


※※※


往年の国民的RPGであるドラゴンあんまり関係ないけどドラゴンの名を冠しているRPGのテーマが脳内に流れ出す。

目の前には半透明で液状の体を震わせるモンスター。いわゆるスライムと対峙していた。

 半透明で液状の体を震わせながらジリジリと距離を詰めてくる。


「ふっ、いきなり草むらから出てきたときは女の子みたいな悲鳴を上てしまったが、所詮は雑魚! 俺は知っている! お前はモンスター界ヒエラルキーの最底辺! 始まりの村出立レベルの勇者にすらボコられるような雑魚よ! 俺が負けるわけが無い! このエクスカリバーの錆にしてくれよう!」


 エクスカリバーを構えると同時に、スライムはこれまでと打って変わった俊敏な動きで飛び掛かってきた。


「遅い! その程度のスピードなら十分捉えられるぜ!」


 エクスカリバーはその伸でスライムの中心を捉える。

 勝った……!


 ――ジュッ




「……ほわ?」




 エクスカリバーが消失した。

 正確に言うならばスライムを捉えた部分が丸ごと溶解し、プスプスと煙を上げている。



「え、エクスカリバァァァァアアアアアア――――――ッッッ⁉」

 


 無残な姿となった相棒の名を叫ぶ。

 どうやらこの生物は体を覆ている表面以外は酸のような液体で出来ているらしい。

 え、話違くない⁉ 

雑魚じゃないじゃん⁉ 

スライムと言えばゴブリンに次ぐ雑魚モンスターの代名詞じゃないのかよ⁉

 そんなのどうやって倒せば良いんだよ! 触っただけでアウトじゃんか!



「あ、あはは……スライムさん、僕、悪い人間じゃないよ……」



 俺のそんな媚びた台詞が伝わる訳もなく、スライムの表面が波打ち出す。

 あ、これ不味い奴だ。


「なぁあああああああああああああああああああああああああ――――ッ⁉」


 酸を飛ばしながら機敏な動きで迫りくるスライム。

再び森を全力疾走する。

 振り返るたびに増えるスライム。合体してデカくなってるし!?

 チクショウ! 異世界なんて来るんじゃなかった! 

 今の俺には分かる。世の中で流行っている異世界転生だの召喚系の話は上澄みなのだ。異世界に来た人間全てがチートスキルが貰えたり、魔法の才能が開花するなんて思ったら大間違いだ。俺のような凡人が異世界に来てしまったらどうなる? 奴隷になるか、野垂れ死ぬのが良い所だろう。

 折角の異世界なんだ。ちょっとくらい良い夢を見せてくれたって良いじゃないかクソッたれ!


「ヤバいヤバいヤバいって!?」


『――――平君』


「うぉぉおおおおおお! 助けてぇ~っ⁉」


『――幸平君、聞こえるかい?』


「あああああああああああああああああああっ⁉ なんか幻聴も聞こえて来たし本格的にヤバいよぉ~⁉」


『幻聴じゃないって、君の脳内に直接語り掛けてるんだ。『箱庭』の南雲だよ』


「な、南雲さん⁉ てか何コレ頭の中で声が響いて気持ちわるっ⁉」


 脳内に響く声の主は秘密結社『箱庭』第357428支部の代表である南雲一。俺が巻き込まれた「主人公育成計画」の責任者でもある。


『気持ち悪いって酷いなぁ。折角助けてあげようと思ったのになぁ』


「助けるってどーせこれもあんた等の所為なんだろ⁉ っいィ⁉ パンツが溶けてるゥ⁉」


『いやーそれが今回は我々なーんにも関係ないんだよねぇ』


「なんでも良いから早く何とかしてくださいよ!」


『ま、今のままじゃまともに会話も出来ないしね。水木くーん誘導よろしく~』


『須賀幸平さん、お久しぶりです。水木です。今から言うとおりに走って下さい』


 頭の中に響く声が一つ増える。水木さんは『箱庭』のオペレーターであり、代表である南雲さんの秘書というか尻ぬぐいのほうがしっくりくる苦労人だ。


「良いから早く何とかしてくださぁぁああああい!」


『ではこの先にある大きな岩を右に、50m程先に川があるのでそこに飛び込んでください』


「わ、わかりましたッ!」


 言われた通りに走ると目の前に川が現れ、そこにそのまま飛び込む。


「ゴペポッ⁉」


 深い⁉ あ、足が付かない……⁉ てか流れつよ……⁉


「ゴオボポポポポポポポポポポポ…………」


 濁流に揉まれ意識が遠のいていく………。


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