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須賀幸平は凡人である〜case2.もしも凡人が異世界召喚されたら〜  作者: 井上むくすけ
Case2.~もしも凡人が異世界召喚されたら~
33/41

case2.異世界ってのは僕等の夢なんじゃないですかね_1-1

はちゃめちゃ時間がかかってしまいました……。

仕事があるのがいけいない、あるのがいけいない……!


Case1をよまなくても問題ない話にはなってます。

よろしくお願いします。

これだけ分かれば大丈夫自己紹介

※別に自己紹介は読まなくても分かるようになってます。


須賀幸平(すがこうへい)

 本作の主人公。自他共に認める凡人。その平凡さ故に秘密結社『箱庭』の「主人公育成計画」の被検体に選ばれ、半ば無理やりラブコメ主人公をやることになった高校生。基本的にビビりで小心者、ことなかれ主義。夏休みの宿題は夏休み最後の一週間で片づけるタイプ。


神楽生芽(かぐらいぶき)

 「主人公育成計画」の為に『箱庭』が須賀幸平の好みを調査し創り出した。人造人間。

人造人間と言っても99.9%人間と変わらない。須賀幸平に主人公として陶酔していたがCase1で色々あり、関係を再構築中。現在は自分のやりたいこと探す片手間で須賀幸平のメインヒロインをしている。夏休みの宿題は最初の一週間で終わらせるタイプ。


喜姫劇司(きひげきつかさ)

 『主人公育成計画』に興味を持ち幸平の前に現れた少女。『箱庭』曰く、数多の世界を破滅へと追いやった第X級指定犯『語り姫』などと物騒な呼び名をつけられている。彼女の目的は不明だが、曰く最高の物語を探しているらしい。夏休みの宿題はそもそもやらないタイプ。


・『箱庭』

 あらゆる世界(並行世界、異世界含む)のあらゆる出来事を記録することを目的とした秘密結社。全容は不明。世界を存続させるためのエネルギーの供給が弱まっている原因不明の自称を解決させるため、エネルギーのパスとなる主人公を人工的に創り出す計画「主人公育成計画」を実施中



南雲一(なぐもはじめ)

 『箱庭』第357428支部の代表。スキンヘッドで巨躯と厳つい見た目で有能そうな見た目をしているが中身はチャランポランのおじさん。経費を使い込んだり、色々問題を起こしているらしく組織内では干されぎみ。部下の水木に殆どの仕事を丸投げしている。部下とは良好な関係を築けていると思っている。


・水木ほとり(みずきほとり)

 『箱庭』第357428支部の柱。仕事をしない南雲に代わって組織の運営を取り仕切っている。日々、南雲の尻拭いをさせられている。最近、転職を本気で考えている。




~case2.もしも凡人が異世界召喚されたら~


1-1


 俺、須賀幸平は凡人である。

 自分で言うのもなんだが、平凡で凡庸、凡才の凡人なのである。


「せんせー、あたしまだ転校してきたばっかりで教科書がないので、隣の幸平君に見せてもらいまーす!」


「先生、私も教科書を忘れてしまいました。須賀君に見せて貰いますね」


 左右二人の美少女が俺の教科書を覗き込む為に体を密着させる。


 …………。


 ……いやあの本当に僕は凡人なんです! 本当なんです! 信じてください! そんな『まーた量産型ラブコメ主人公かよ乙!』みたいな目で見ないで! 石を投げないで!

 どうして凡人である俺がこんなラブコメ主人公的状況になっているのか説明をさせて欲しい(切実)!



 ――『箱庭』という秘密結社が存在する。その秘密結社の目的はあらゆる世界のあらゆる出来事を記録すること。とある支部の代表はアカシックレコードの記録係などと評していた。

 彼等の話によると、現在あらゆる世界において大きな問題が発生しているらしい。そもそも世界というのは大きなエネルギーの塊、通称『世界樹』から存在する為のエネルギーが供給されているらしいのだが、近年その『世界樹』と世界との繋がりが弱まり、多くの世界に悪影響を及ぼしているという。

 その解決策として発案され現在進行形で進められている計画が、俺こと須賀幸平が絶賛巻き込まれている『主人公育成計画』なのである。ざっくり説明すると、『世界樹』と各世界のパスとなっているのはその世界で影響力を持つ人間、つまりは特別で主人公のような人間であり、供給が少ないなら接続先を増やせば良いのでは? という安直な発想のもと、どこにでもいる凡人を主人公に仕立て上げようという計画である。

 ちなみに予算の関係上、舞台のセッティングが安価に済むという理由でテーマはラブコメ主人公となった訳だ。ラブコメ主人公として選ばれた俺はそれはもう大変な目に遭ったのだがそれは別の話(Case.1参照)。



「生芽ちゃん……今、教科書、窓から放り投げなかった……?」


「なんのことかしら? 私はうっかり教科書を忘れてしまった。それだけよ?」


「生芽ちゃんって、もうヒロインは辞めるんじゃなかったのかな?」


「私個人としては、ヒロインに拘るつもりはないのだけど、ほら私って一応、実験の名目としては『メイン』ヒロインとしてここにいるわけだし? 最低限は役割をこなさないといけないの」


「『メイン』を強調してるあたり大分拘ってるように聞こえるけど……」


「あら『サブ』ヒロインにはそう見えるかもしれないわ。劣等感を刺激してしまったかしら。配慮が足りなかったわ」


「生芽ちゃんあたしのこと嫌いでしょ!」


「この前の件、裏で糸を引いていたのは貴方なのでしょ? 知ってるのよ」


「ギクギクゥ⁉ な、なんのことかな? あせあせっ、あたしは別に情報漏洩とかしてないよ⁉」


「目が泳いでる。意外と分かりやすいわね。司って」


「ちょっとやりすぎちゃったけど丸く収まったんだから良いじゃん! ね? 幸平君……幸平君……?」


「幸平どうしたの?」

 

 …………。


 胸が、密着してるんです。

 発育の良いおっぱいがね。密着してるんです。

 二人の体温が二の腕に伝わってくるんです。

 後小声で話す二人の声が近くて生ASMR状態です。

 どうして教科書を見せるだけなの二人とも腕を絡ましてくるのだろう。

 その所為でたわわな乳房の存在感がより押し付けられてるんです。

 おぱ、おぱぱ、おぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱっ――――


 俺の左腕に腕を絡ましている黒髪ロングのクール系美少女は神楽生芽。彼女は件の秘密結社が今回の実験の為に、俺の好みの容姿を研究し創り出した人造人間だ。つまるところ生芽はラブコメ主人公の俺に対してのヒロインという立ち位置になる。

 彼女とは先日の事件で色々あったのだが、お互いに問題を理解し、現在は関係修復中というか、構築中というか……まぁそんな感じの仲である。

 もう一方の右腕に抱き着いているウェーブのかかった亜麻色の髪を片口やや下でゆるいおさげに結んだ小柄な小動物系美少女は喜妃劇司。彼女は色々と謎だ。『箱庭』曰く、数多の世界を破滅へと追いやった第X級指定犯『語り姫』などと物騒な呼び名をつけられているし、喜妃劇司というのも本名ではないらしい。何故ここにいるのかすらわからない。実験に興味を持って介入してきたらしいのだが、先日の事件の後、急に転校してきて、いつのまにか俺の家で生活している。正直ちょっと怖いのだが、先日の事件では助けて貰ったとも言えるので接し方についてはこちらも模索中だ。


「おいそこ、仲が良いのは結構だが今は授業中だぞー。静かにしろ―。あと須賀はあとで生徒指導室に来なさい」


「どうして俺だけ……」


「そりゃお前、最近お前の周りで風紀が乱れてるからだよ。苦情も多くてな」


「お、俺は何もしてな――」


「自覚が無いのが問題だ。鹿山を見ろ。凄い顔してるぞ」


「はい?」


 おっぱ――考え事をしていたのと、そいつが前の席で後頭部しか見えてなかったので気付かなかったが、前の席の男子生徒は瞳孔が開いたまま無表情で涙を流していた。耳だけはダンボのようにこちらの声に反応している。こいつは鹿山翔、一言で紹介すると容姿が整った拗らせオタクだ。悪友であり自称親友ポジションなのだが主人公への憧れが強すぎて最近は情緒がお留守になっていることが多く奇行が目立つ。


「こっわ……」


「先生も目の前でラブコメされると灰色の青春時代がフラッシュバックするので、気を付けるように。このままだと先生も鹿山みたいになるかもしれないぞ」


「怖いこと言わないで下さいよ⁉」


「という訳で、授業再開するぞー」


「俺はこのまま授業受けるの……? あの二人とも教科書は見せるからせめて腕は話して……」


「「…………」」


 俺の発言はスルーされ、左右から美少女に抱きつかれたまま授業は再開されたのだった。


※※※


「ヒャッハーッ! おいおい須賀幸平さんよォ! 今日も随分とお楽しみだったじゃねェかァ! ヒャッハーッ! 見せつけてくれるぜェ! 俺たちゃ嫉妬でおかしくなりそうだぜェ――ッ!」


 放課後、俺はKIS(神楽生芽親衛隊)と最近新設されたKTM(喜妃劇司ちゃんを見守る会)のメンバーに拉致され、デカい三角錐のオブジェを担がされ、何故か旧部室棟の室内に建造された十字陵の頂上に立たされていた。

 いつもは上裸に紙袋を被る謎スタイルの彼等だが、今日はモヒカンにビジュアル系みたいなメイクをしている。世界観を大切にしているのだろうか。何その無駄なこだわり……。世界観が世紀末過ぎないだろうか。



「フハハッ! その頂きを積んだだけでは十字陵は完成せぬ! 貴様の血が漆喰となってこそ、十字陵はより堅固なものになるのだ! 十字陵完成の礎になる良い! ハーハッハッハ~ッ!」



 聖帝サ〇ザーのコスプレをし、周囲のモヒカンを先導しているのは翔である。

いわく定期的に嫉妬に燃える親衛隊(見守る会)のメンバー達のガス抜きをしないと危険だということで、俺は数日に一回程度の頻度でこんな感じで折檻されている。

 先日は、ショウゾウと名乗る変な仮面を被った翔に手錠を掛けられた上、鎖で繋がれ、ギリギリ届かない位置に手錠の鍵を置かれた状況で監禁されたりした。あれは中々精神的にキツかったが親衛隊的にはもっと派手な方が良いと不評だったらしい。

 そんな経緯があり今回はこの大規模な劇場型のような折檻になったのだろう。…………何で俺は自分の折檻について分析しているのだろうか……。


「おーい……この辺で勘弁してくれって……このオブジェ結構重くてキツいんだよ、この態勢……」


「羨望ゆえに……! これは羨望ゆえに……! 主人公への思いが我々をここまで狂わす! 羨望ゆえに人は苦しまねばならぬ……!! 羨望ゆえに人は悲しまねばならぬ!! 羨望ゆえに……時間だ……やれいッお前等ァ!」



「「「「「ヒャッハーッ!」」」」」「そのまま潰れちまいなァ!」「なっさけない姿を俺達に見せてくれよォ~ッ」「オラオラ辛いかァ~? お前のラブコメを見せられてる俺等の辛さはこんなものじゃないぜェ~⁉」



 翔の号令でモヒカンたちが十字陵に群がり棒切れて俺の膝や脇腹を小突き始める。


「ちょっ、お前等ほんと危ないって! やめっうおぉおおおおおバランスが崩れるぅ~⁉」


 その時だった。


「ここに幸平来てるかしら?」


「うはぁ~なにこのセット凄いねぇ~」


 突然扉が開き、現れたのは生芽と司さんだ。

 そして二人の視線の先にには、三角錐のオブジェを担ぎモヒカン達に小突かれている俺の姿。


「えーと……これは一体どういった状況なのかしら……?」


 ごもっともである。


「やぁ生芽ちゃん、司ちゃんも、これはえーとアレだよ、コウが体を鍛えたいっていうから手伝ってたんだよ! トレーニングの追い込みを手伝って訳!」


「その恰好は……?」


「こ、今度みんなでコスプレイベントに出ようって考えててさ! はははっ!」


「それは素敵ね! みんなも幸平と仲良くしてくれてありがとう。これからも仲良くしてあげてね」


「「「「「アッ、ウス……」」」」」


「その衣装良く出来てるねぇ。見せて見せて~」


「「「「「アッ、アッ、ドゾ……」」」」」


 こいつら基本的に俺と同じで陰の存在だから女子相手にはこんな感じになるんだよな。


「それで生芽ちゃんと、司ちゃんはどうしたの? コウに用事?」


「えぇ、今日は用があって帰りが遅くなるからって伝えたくて、メッセージを送ったのだけど既読が付かないものだから。探していたの」


「あたしは暇だったから付いてきただけだよ! 面白いものが見れて来てよかったぁ。じゃあ、あたしはもう帰るね~」


 生芽と司さんが部屋から出ていくと……。


「俺、生芽ちゃんと初めて会話しちゃった……!」「俺も!」「俺も俺も!」「これだけで暫くは多幸感で生きていけそうだよ」「心が浄化されたよな」「うんうん、こんな嫉妬で人を痛めつける行為は良くないよな」「悪かったな須賀」「俺達どうかしてたよ」「今日はもう良いや」

「な、これからファミレスに行って生芽ちゃんと司ちゃんの魅力について語り合わね?」「良いね、行こう行こう!」


 すっかり毒気を抜かれたモヒカン達はズラを脱ぎ解散ムードになっていた。

 助かった、のか……?

 俺は担いでいたオブジェを下ろし、十字陵を完成させる。にしても良く出来たオブジェだな。土台もしっかりしてるし。この情熱をもっと他のことに向ければいいのに。


「じゃあコウ、俺等も帰るか」


「お前はよく平然と俺に話しかけられるな」


 自分の行いに罪悪感とかないのだろうか。


「俺達、親友だろ? 俺は引くべき時には引くし、媚びるときは媚びるし、省みる男なんだ」

 無いんだろうなぁ。


 ※※※


 翔と二人の帰り道。


「やっぱり最近のトレンドは異世界だと思うんだよな!」


「最近か……? ここ数年はずっと異世界モノは大流行していると思うけど」


 異世界系と言えば人気ジャンルの一つで、転生やら召喚された主人公がチートなり伝説の武具なんかを手に入れてイキりちらかしたり、スローライフするのは鉄板ネタだ。大体どれも似たり寄ったりだとか展開が同じだとか揶揄されたりもするが、それはそれで様式美のようなものなんじゃなかいと思う。俗にいうテンプレみたいなものだ。


「コウは異世界行くとしたらどんな設定が良い?」


「あー、そうだな……」


 こういうのって授業中とか考えたりするけど、それを人に話すのって何か恥ずかしいもんだな。


「コウは、やっぱマジカルチ〇ポとかか?」


「おい急にノクターンノベルみたいな話をするな。ビックリしちゃうだろ」


 マジカルチ〇ポとはその名の通りマジカルなチ〇ポだ。検索は別にしなくても良い。


「確かにマジカルチ〇ポも魅力的だけど、俺だったらやっぱり、外れスキルで追放される悪役令嬢に転生してざまぁしながらスローライフかな」


「流行りのごった煮すぎるだろ。あと俺の希望をマジカルチ〇ポにするな」


「けっこうそういうのあるじゃん」


「……あるか?」


 でもまぁ正直なんでもありなジャンルだしな。


「とにかくさ! 異世界転生でも異世界召喚でもいいからしてみたいよな!」


「そうか……? 俺は別に……ああいうのは物語として楽しめれば良いって言うか、どっちかっていうと俺は現代ラブコメの方が好みだし」


 とはいえ異世界モノも勿論好きなジャンルではある。異世界チーレム無双(チートハーレム無双)に憧れない思春期男子などいないのだから。


「イヤミか貴様ッ! それはコウが現在進行形で現代ラブコメ主人公してるからだろぉぉぉぉおおおん!? …………ってコウ……? お前、足元が光ってないか……?」


「足元……?」


 言われてみると俺の足を中心に地面が淡く発光している。

 その光はだんだんと強くなり、範囲が広がっていく。広がるにつれて光は紋様に変化し、俺を取り囲むように円が成形されていった。まるで魔法陣のように。


「ななななななななにこれ!? え、何これ!?」


 あわててその丸い円から出ようとするも、円の縁にそって形成された柔らかな見えない壁に阻まれて出ることが叶わない。


「こ、これは異世界召喚の魔法陣か⁉」


 翔が慄いた声を発する。


「コウッ! 手を伸ばせ! 手を掴むんだ!」


 翔が魔法陣の中に手を差し出す。外からの侵入者を拒むように閃光が走り翔は苦悶の表情を浮かべた。

 翔、お前……自分の身を顧みずに俺を助けようと……⁉


「う、ぉおおおおおおおっ! コウッ! 手をッ!」


「翔……! すまない……!」


 力ずくで差し込まれた翔の手を掴む。


「掴んだァ! しゃッ、オラァアアアアア……!」


 俺の手を掴んだ翔は、俺を引っ張り出すのではなく、逆に魔法陣に突っ込んできた。


 こ、こいつまさか……⁉


「させるかよォ⁉ コウだけ異世界召喚なんてさせてたまるかァ⁉ 俺も行くッ! 行くんだよォ~!」


 不測の事態なのか明らかに魔法陣の光が異常に点滅し、バチバチと閃光を鳴らす。絶対良くない状況だよこれ!?

 俺の腰に抱きつきながら翔が叫ぶ。


「異世界編の始まりじゃァ~~~~~~!」


 翔の叫びと共に魔法陣の輝きが最高潮を迎え、――バシュンという音と共に白い光に包まれた。上も下も無い不思議な感覚。


 そして――――――俺は異世界に転移したのだった。


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