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«地球は、蒼かった»


かつて世界を二分した超大国の冒険者が残した言葉は、人々の憧れを宇宙へ駆り立てた。その過程で幾多の技術が開発され、そして廃れていった。

西暦202X年───

人類は未だ、宙に手が届かないでいる。


「ったく、呼び出しておいて遅れるってどういうことだよ」

今夜星を見に行こう、とバイト先のミサキからメッセージが送られてきたのは昨日の事。

正直あまり話した事は無い相手だったが、かなり可愛い女子であった事もあり二つ返事で了承してしまったのだ。

準備に時間が掛かっているらしい旨のメッセージがさっき届き、少なくとも俺はここで──公園丘の頂上で待ちぼうけを余儀なくされた。

「あれがデネブアルタイルベガってね。何だかあの曲みたいだ」

もっとも、あの曲は1種の失恋曲。こちらからすれば始まってもいない。自意識過剰かもしれないが、ミサキが好意を持ってくれていたとしてもまだ終わるような出来事は無かったはずだ。


「まぁ……空は綺麗だし悪くはないよ」

独り言も冴える。ぬるい風が身を包み、夏の終わりを告げようとしていた。


その時、数条の煌めきが視界の上端でチラついた。

「お、流れ星」

どうせならもっとしっかり見えないか、と目を凝らす。幸いにも直ぐに次を目にすると───

「……今日って流星群だっけ」

いや、そんなニュースは無かったはずだ。それにしてはやけに流れ星が多い。しかも明るい。何条も何条も、光の尾を曳いて。

「しかも何か、だんだん激しくなってる気が───」

気のせいではない。確実に明るくなっている。

しかも───近寄って来てる?

「お………おいおい何だよありゃ……」

幾重にも連なる流星を写真に納め、SNSにアップしようとした。しかし圏外。

「チッ、SBCの回線は相変わらずだな」

流星は激しさを増す。しかも集まってきている。まるで俺の視界の中心を解っているかのように。

「いや………何だありゃあ!?」

突如一際大きい閃光が煌めき、ソレは姿を現す。白色とガンメタリックな輝きを放つ、巨大なトラックのようなモノ。

それはジェット噴射の轟音を上げて俺の前に着地した。それの壁が倒れ、スロープ状に開く。中は無機質な白色の光で満たされ、俺を手招いているようにさえ思える。

「は………え…………?」

訳が解らない。何だこれは。フィクションだってもうちょっと脈絡があるだろう。


現実味の無い状況に響くメッセージの着信音。画面を見ればミサキからのメッセージ。

「ごめん、遅れた───って、まさかコレで来たとでも言うのか!?」

ますます訳が解らない。彼女は宇宙人だったのか?何で地球でバイトしてるんだ?

「…………本人に聞くか」

俺は踏み込む事にした。

スロープを駆け上がり、中の空間に目を配る。有名なSF作品によく似た内装のそれは、確かな現実感をもってそこに鎮座している。

後ろでドアが閉まった。何の金属でできているかは分からないが、そう簡単に壊せもしなさそうだ。

もう戻れないかもしれない──

ふと、そう思った。

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