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『最弱』の汚名は返上する。~不遇だなんて、言わせない~  作者: パタパタさん・改
第一章『アルテイン編』
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第一章28 『独白』

 ”線”状の一撃必殺攻撃。――『雷撃』。


 雷雲の持つ膨大な数の電子の向きを”制御性”で完全に統一し、”想像力”で構成された”線”にその電子を流し込む。


 そして万に一も満たない完成を信じて”大技”を発動する”吹っ切れ”。


 必要時間は四秒。撃ちだせるのは”太線”で、威力も大地の一点に地面を揺らしつつ軽く穴を作る程度。


 ・・・本来であればの話だ。


 オレはその全てを越える程の一撃を極限集中状態で作り上げた。


 その一撃はオレの眼前に、虹の極光を迎え撃つ斧に”属性”ではない”自然の力”を纏わせて、斧すらも『雷撃』の一撃に加える。


 現状オレの扱える最高峰の一撃は、いとも容易く虹の崩壊の指向性をぶち抜いて五色の属性が大気で爆散した。


 ――だが、


 オレはその後の事を全く持って考えてすらいなかった。


 

 A A A 


 

 「――――あ―――――――――」


 虹が崩壊する。根本から容赦なく、その力の方向性が木っ端みじんに砕け散る。


 歯車式の時計に金属の棒が突き刺さったように、その勢いが頓挫し、それどころか重要部分が破壊されたことによってその存在の維持が一気に綻ぶ。


 虹の極光は暴かれ、その爆滅の属性の力が全方向に捻じ曲がる。


 両手が握っていた一撃の加担具の存在が消える感覚を覚え、疑問に思う暇もなく、視覚が、聴覚が、嗅覚が、触覚が虹色に染まる。


 身体が衝撃と衝撃の板挟みになりながら、痛覚を置いてけぼりにオレを余波が嬲る。


 前後左右も分からずにただただ属性の二次被害に巻き込まれたオレが解放されたのは、爆発の余波に呑まれて数秒後。―――遅れた視界に土色に塗れた芝生が見えた時だった。


 「―――あがッ! おごッ!? ぐぴッ!!?」


 爆発の体内をめぐり、最終的に排泄されるような形で大地に投げ出される。


 産み落とされた感覚は最悪。受け身を取る暇もなく、全身のあちこちが大地に跳ね飛ばされて身体と意識がもんどうり打たれる。


 「がぺっ」


 止まったのは大木の枝部分に腹を打ち抜かれて、全身から酸素が消えた瞬間だった。


 幹がオレの衝撃を受け止めきれず、その付け根を衝撃と重さに引き千切られ、オレの身体が地面に落っこちる。


 「ごほッッ!!」


 絞り出された酸素が口から逃げ、数十秒ぶりに地面に身体が着く。


 「(やったか・・・・?)」


 全身が痛みに悲鳴を上げながらも、オレはその身体を無理矢理起こす。


 「あー、クソ。むっちゃくっちゃにぶっ飛ばしやがって。ゲホッッ!!・・・・―――ッ!」


 なんとかまだアドレナリンの効力は残っているようで、震えるが足は立つし、脚も立つ。



 だが問題は表面化していないだけで、身体の奥底でその異常はしっかりと根を張っていた。



 喉から込み上げるものがあり、自然と咳をすると、出てきたのは吐瀉物でもなく酸素でもなく、血塊だった。


 手を当てて口元を確かめると、鼻血も出ていることに気が付いた。それも、尋常ではない量が、だ。


 全身の血液が全部出てるんじゃないかと、そう思ってしまう程に鼻血も血咳も止まらない。


 「ゲホッ!ゲホゲホゲホッ!! あ゛、ヤベェやつだなこれ・・・」


 おそらくは今のオレが身体の限界に収まりきらない集中力を使ってしまったせいなのか。


 だが、オレがここまで重症だと言うことは――、


 「あいつも、無事では済まされねぇ、はずだ・・・・」


 アルテインの一撃は確実に、アルテインの持つ全ての力を凝縮した一撃だった。


 指向性も制御性も想像力も能力量も集中力も、全部つぎ込んだ一撃だった。


 灰獅子戦の事もある。あんな一撃を撃った後だ。絶対に五体満足に歩くことも出来ないはずだ。


 そうであるべきなのだ。


 そうであるべきなのに・・・・。


 


 「―――――まだ、ボクは、」


 

 

 「・・・・・は?」


 何とか四肢を脳内物質で支えているオレの目の前、虹の粉塵が舞い散る中、一人の男が制服を色っぽくはだけさせながらその姿を現した。


 ふわふわの髪もぼさぼさになり、肩も不自然に小刻みし、背中で息をしている始末。


 それなのに、不思議とその男子の目は何故か未だ倒れぬ闘志を患っていた。


 「(こんなこと、あり得るのか・・・??)」


 灰獅子戦から一週間も経っていない。それなのに、その男子は満身創痍にも関わらず此方に向かっておぼつかない足取りで進む。


 そして一言一言をゆっくりと、しかしながらはっきりと、意思を込めてオレにぶつける。


 

 「ボクは、君に、勝たなければいけないんだ・・・・!!」


 

 「・・・・」


 

 「ボクは、君に、電気属性を宿す君に、打ち勝たなければ、いけないんだぁッ!!」


 

 天使のようなふわふわした癒しの声からは想像もできないような雄叫びが、世界を通してオレの耳に響いた。


 その時、初めてこいつの答えが、真意が分かった気がした。


 そんな、”本音の目”が籠った、初めての声だった。


 

 A A A 


 

 「なんでだ?」


 「・・・」


 オレはお互いに満身創痍でありながら、いつぶっ倒れてもおかしくないのにも関わらず、ことばを紡いでいた。


 単純な興味か?それとも、イドに言われたからか?


 「(―――違う)」


 頭の中に生み出された疑問がオレに問いかけるが、オレはそんな奴らを切り捨てる。


 違う。違うな。そんな浅い想いなんかじゃねぇ。これはある意味、アルテインとの会話だ。アルテインが初めて、オレに語り掛けてくれたのだ。


 明確な”宿敵”だと、認めてくれたのだ。


 モンスターのように見る価値もないのとは違うし、ただの敵みたく、ただ潰そうともしない。


 会話を挟んでオレと言う人物を知ろうとしている。それはある種の信頼的な敵関係というものではなかろうか。


 「なんで、そんなに”オレ”への勝ちにこだわるんだよ。プライドが許さない的な事か?」


 「違うよ。そんな、生半可な事じゃない」


 「じゃぁ、なんだって言うんだ?」


 「電気属性がでしゃばるな」の精神の持ち主だとばかり思っていたが、違うようだ。眼を目を見ようにも、オレが顔を上げたと同時に俯かれたため視界から外れてしまった。


 アルテインはその唇をきゅっと引き結び、そっと、そして強く心情を吐露した。


 「君は、模擬試験の時に灰獅子を倒した。でも、その手柄は、君には渡らなかった」


 「あぁ、そうだな」


 「ボクには、あの時のボクにはあまりにも不相応なものだった。周囲からの評判だって良かったし、冒険者連合の副隊長に”期待してる”と言われてしまったんだ」


 「実際”複数属性(マルチスキル)”で莫大な能力量持ってんだから、当たり前じゃね?今さっきの虹の一撃だったら灰獅子も消し飛んでる」


 「でもッ!! ボクは灰獅子を倒していない!!いくら君に太鼓判を押されようと、中身のない手柄を渡されて喜べるような人間性はしていないッ!!」


 「ッ!」


 当たり障りのない素直に称賛の言葉を送ったが、アルテインの逆鱗に触れたようで、怒号と共に深紅の憤怒を宿した瞳がオレを射抜いた。


 驚きに固まるオレに、アルテインは続けて忌々しく口を開く。


 そんな怒髪天をついた一言の次に出てきた言葉は、


 「・・・・いつか君は、世界の常識をひっくり返す。”電気属性”を戦闘向きの、下手をすれば基本四属性どころか希少属性すらも凌駕する力を持つ属性だって、世界に知らしめる。――そういうことをすると、そう思っている」


 「!??」


 曇りも穢れもない。純粋なままの素直な感想。――称賛だった。


 急な評価の移り変わりにオレが目を白黒させていると、


 「――だからこそ、ボクは君に勝たなきゃいけない」


 「―――」


 「灰獅子を倒した手柄を持つボクが、実際に灰獅子を倒した君に勝たないと、皆の期待に応えられない。そうでないと、嘘になっちゃうし。・・・それに、」


 「それに?」


 「――――っ」


 オレがアルテインのノリに合わせて、その真実を聞こうと神妙な声音で尋ねる。


 一瞬そのまま真実を話す口が開かれるが、すぐさま自我を取り戻したアルテインは開いた口を強引に両手で塞ぎ、強制的に音をもみ消す。


 なんとか心情を暴露する口を閉ざすことに成功するも、変なところで区切りをつけた事に雰囲気が悪くなるのを感じ、代わりに本物の、その上での別の言葉を付け加える。


 「・・・君と、関わり合いたくない」


 一種の拒絶に近しい言葉が、鈍器のような衝撃を持ってしてオレの脳を貫く。


 だが、オレはその言葉を聞いた直後に分かった。


 目が、”それ”を理由にしているのではないと。そう物語っていたのだから。


 だが、嘘とも言っていない。今、そういう風に頭の中で置き換えられたのだ。


 「君と関わっても、君が不幸になるだけだから」


 「そんなこと」


 「”ない”とでも言うつもりだった?いくらでも言えるよそんな事。君の周りは、そんなことすら考えてなんかいなかっただろうけどもさ」


 「ッッ!!!」


 言い返す言葉が無くなった。


 いや、ある。言うべきことは沢山ある。だけども、言ったところで彼の本音を引き出すどころか、逆してやられてしまう未来が見える。


 事実、オレの属性を知った友人は全員オレから離れた。どこぞのクソ女のせいでもあるわけだが、属性に関して言えばオレの方にも原因が、・・・・いや無いな。100%あいつらが悪い。


 だからだろう。100%完全完璧にあいつらに非があったからこそ、そんなのと友人関係にあったオレの言葉には力が籠らない。騙す誑かす欺くって話なら言い訳できるが、アルテインはオレの下落劇を見ている大多数の内の一人だ。


 だからこそ、言い訳も口のうまさも通用しない。逃げ場はない。八方ふさがり四面楚歌。


 そんなオレが唯一返せる反応は奥歯を噛む以外にない。


 だが、奥歯を噛みながらも、オレはまっすぐにアルテインの目を見て離さない。


 本来ならここでお話はおしまいだが、それはオレの頭の中を駆け巡る膨大な熱量がそれをさせない。


 オレの世界が熱量を持ってして世界を回す。オレの熱であり、ここまで来た意地だ。


 オレは、「なら――」と話を終わらせようとするアルテインに待ったをかける。


 「オレにも、お前と同じで、ちょっくら話せねぇってか、話しづらいことがあるのは、マジだ。友人にも、親にも、赤の他人にも、なんなら世界にすらも裏切られたオレだから、な。今の言葉に信用がねぇってのは、そうだな分かるわ」


 「・・・・・・・それなr」


 「でもな」


 「」


 アルテインの目の色に残る闘志の灯。それがひとたび大きくなろうとするのを遮って、オレは循環した熱世界を通した情報で言葉を作る。


 それも、アルテインが用意した建前であり本音の一部。それを焼き断つ一言を。


 オレはビシッと、震える脚を無理矢理にも落ち着かせ、左手を腰に、人差し指をアルテインの眼前へと叩きつける。


 目尻が開かれるアルテインの口が開こうとする前に間髪入れず、


 「世界に裏切られて”電気属性”を発現して、友人に絶交されて、親から”要らない子”扱いされて、他人の目が見えなくなって、模擬試験ですらも正式に参加させてくれなくって、赤の他人からもいじめられて、陰口叩かれて、それでもなんとかやっていこうと思った矢先に、五属性と膨大な能力量を見せつけられて、絶望突っ切ったオレが、これ以上ぉ!!」


 「   」


 「これ以上、不幸になるわけがねぇし、それ以上の不幸があるはずがねぇッ!!だから、アルテインに関わっても、オレは不幸にはならない。アルテインのせいで不幸になんか、ならない!!」


 「―――ッ」


 「不幸の奈落に叩き落とされた最強のオレに、”不幸”は、効かねぇんだよ!」


 「だから、オレはお前に何が何でも関わる。お前のその本音が、どっからきてんのかは聞かねぇし、言う必要もねぇッ!」


 「なんで・・・?そんなにボクに関わりたがるの?意味分かんない!完全にデメリットなんだよ!事故物件なんだよ!?それなのに、それでも関わりたいとか人の思考じゃない!!」


自虐ネタを披露してくれるアルテインだが、なんか最後の部分オレの事ディスってませんでしたかね?


 ――それでも、オレの口は止まらない。一言発するたびに、頭の回転力が増す。感情が丸ごと言葉になるのだ。だから、言って言って、言い尽くす。反論の余地は、与えない。


 「オレは言った!お前には、もうオレが『不遇な人』だって言わせねぇし、思わせねぇって。そのためにも、お互いなんも知らねぇところから、お互いの事を知る!お前の心情がどうとかは知らねぇッ!お前と関わって、オレが『不遇じゃねぇ』ってことを思い知らせる!お前の隣で、お前の視界の中で、お前の人生の中で!」


 「お前が無意識にオレを蔑んで、打ち負かして”不遇”の烙印を押すなら、オレはお前をそのさらに上の衝撃で魅せてやる!そんで無意識にオレを讃えさせてやる!」


 「なんと言おうが、オレはお前に関わる。人生の片棒担いで、共犯者にでもなってやる!一方通行?なめんな。恋だろうが友情だろうが、初めは一方通行。オレが如何にお前にオレを印象付けるかにかかってんだ!」


 感情が沸騰し、絞りカスのアドレナリンが限界を超えて分泌されていき、オレの集中力が再び”線”の形を取る。


 オレが大きく息を吸いあげた直後、圧倒された顔をしつつもまだ”言い訳”をしようと、目を泳がせながらアルテインの口元が歪み始める。


 そしてその”線”が描かれたオレは、その瞬間を見逃さず、アルテインの脳天に飛び込んで”一撃”を、――頭突きを食らわせた。


 ―――ごィンッ!


 と、骨と骨のぶつかり合う音がオレの視界を明滅させる。鋭い痛みが走り抜けて、衝撃に火花が散る。アルテインはなにが何やらで痛みが迸る額を抑える。白い綺麗な素肌が赤く腫れていた。


 「―――ぐぅッ!!?」


 「がッッ! いっつぅぅ・・・」


 後からくる鈍痛に遅れて神経系が軒並み刺激される。なんせただでさえ大技喰らって地面に叩きつけられた身だ。


 オレの打撃に立っていた脚すらも地面につけられたアルテインが、ゆっくりと立ち上がるオレを見る。混沌とした暗い眼の奥に光る琥珀の彩が、オレを捉えていた。


 オレはそんな小さな光を脚光にして立ち上がり、バックステップしつつファイティングポーズを取る。人相手に喧嘩をしたことはないが、大体こんな感じだと思う。


 オレが戦闘態勢を整えると、額を抑えながらアルテインもまた立ち上がり、その愛らしい顔を若干曇らせる。


 口には出さないが、未だオレの存在の干渉をあまりよく受け入れていないと言うことはよく分かった。


 ならば―――!


 オレはグッと握り拳を作り、片方をオレの胸に当て、片方を突き出す。


 「だから、ここでケリをつける!建前なんかいらねぇッ!!――お互い、本音(こぶし)でやろうぜ!」


 属性と言葉の後は、もう拳しかねぇだろ!


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