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『最弱』の汚名は返上する。~不遇だなんて、言わせない~  作者: パタパタさん・改
第一章『アルテイン編』
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第一章22 『属性』

 「オレが意識的に?冗談はよしてくれよ。オレはむしろ、急にあの変な感覚になって困惑した方なんだぜ?」


 「えー、マジかよ。意識的にやってねーとあそこまで脳と身体が分裂した状態にはなれねーよ」


 「でも実際なった訳だし・・・」


 「うーん・・・・」


 オレの困惑した回答にイドが腕を組んで首を傾ける。口が酸っぱいものでも食べたかのように困惑と疑問の味は酸味を増していた。


 それは何もイドだけではない。


 このオレもだった。

 

 「(オレの話なのに、肝心のオレが知らねぇことだからなぁ・・・。なんとか原因でもなんでも知っとかないと、副作用とか有ったら怖いし・・・)」


 オレと共に在る電気属性。あの時の覚醒状態が本当に電気属性の力だったならまだ良かっただろうけど、もしもそうでなかったら、別の力が働いてたとかだったら、今度はそれを制御するために色々しなければならない。


 変に使い続けて廃人コースとかまっぴらごめんなのだ。


 悩み続けるイドに今度は口で質問を投げかける。


 「結局、オレのあの時の状態ってどういう奴だったんだ?電気属性の、効果だよな・・・?」


 最後の言葉に疑念と焦りが混じっていたのは電気属性を信じるオレの心が揺らいだか。それとも変なものにでも目覚めてしまった可能性を踏まえてか。


 オレのすがるような声にイドは軽いノリで答える。


 「うん」


 「いや『うん』て・・・・」


 案外軽めの雰囲気で出てきた言葉にオレは少しばかり息を着く。


 ちょっと危ない黒い、なんか「先祖代々の呪いが云々」みたいなスケールの暴力みたいな話が飛んでくるのを想像して、――なんなら期待もしてたわけだが、やっぱオレは残念ながら選ばれた人ではなかったので、新しい要素が増えることはなかった。


 だがそれはそれで気になると言うものである。


 「具体的に、どういう状態だったんだよ・・・」


 当の本人であるオレがほとんど考えていなかったことだ。正直、こればかりは人に聴くしかないのである。


 そんなオレの問いかけに、イドは事細かに詳細を説明してくれた。


 「ありゃー、一種の集中状態。無我の境地の逆バージョン。限りなく自我を線にする事よりも、限りなく世界を自我で覆って平面を作る状態だ」


 「平面を作る状態・・・?」


 「これだけなら別に普通だな。電気属性特有の電気信号操作。これでその平面状態となるためのセロトニンとアドレナリンが大量に分泌されて、本来以上の演算を脳がすることとなる」


 「それだけじゃない」


 「あー。脊髄が脳みそとほとんど同じ状態にあったな。簡単に言えば、平面になる自我に電気を這わせたっつーか、電気を波として射出して、周囲の状況の全てを把握できる状態だったってことだなー」


 「!!」


 欲しい答え、というか、俺の知らないことが白日の下にさらされたことに衝撃を隠せない。


 なぜなら、その技はまだ―――、


 「まだ教えてねーんだよな。これが、面白いことに」


 はっはっは!と笑うイドに対して、コッチの内心は混沌を極めていた。知っている記念日と知らない記念日が同時に来た時の感触だ。


 無理もない。


 イドの言う、『レーダー』と言う技は、モンスターの頭の中のセロトニンやアドレナリンを分泌する鍛錬にてさらっと紹介された程度のものなのだ。


 だからこそ、今のオレがその技の伝授すらされずにその技を発動したのはおかしなことなのだ。


 「なんで、オレはまだこれは――」


 やはりオレの知らない内で”電気属性”ってものは、オレの想像をも超えた事をして一体オレに何の影響を与えようと――!?


 「そりゃルナ。お前と言う人間に意志があるのと同じよーに、属性にだってあるんだよ。”自我”っぽい意思がな」


 「―――は?」


 素っ頓狂な声を上げて、オレは目を丸くして呆けた顔をイドに向ける。属性に、意思がある?一体何を言ってるんだ???


 オレの表情から何を見たのか、イドは「そーだな」と顎を掻きながらその”属性の意思”とやらを説明する。


 「まーそーだな、ルナ。属性は”指向性”を付与するよりも、”制御性”を磨いた方が良い。ってのは、言ったな?」


 「あぁ、効率がいいとかの理由だったっけ?」


 「そーだ」


 イドが頷きながら、オレに復習の問題を与えてくる。オレがその問題に見事満点を勝ち取ってやると、今度は虚空から黒板とチョークを生み出してきた。

 

 「(また原子の融合が云々みたいなよく分からない原理で作られているんだろうが、もうそんな芸当にも慣れたもんだ。最近は太陽とか出してくるけど、大体はもう驚かねぇ)」


 一回、模擬試験の為にイドと手合わせをしたわけなんだが、掌の握る・叩く動作で原子を結合・分離させて膨大な熱を放つ”疑似太陽”に焼かれそうになったことがある。意味分からん攻撃&意味分からん原理のせいで危うく逃げそびれそうになったのだ。


 と、オレがそんな地獄の夏休みに思いを馳せていると、黒板に何かを描き終わったイドが声を発した。


 「さて、今からちょっと哲学&啓蒙的な分野の話をしよーと思う。これを聞ーて、自身の存在と属性の在り方がどう関わっているのかをしっかりと身体に教え込ませたまえよ」


  

 ジォス=アルゼファイド。――イドの講座が始まった。


 

 A A A 


 

 まず、初めにだが、属性は一種の実態を生み出す人間的な思念体だと考えて欲しー。


 中には”複数属性(マルチスキル)”と呼ばれる分野の人間がいる訳だが、コイツ等は簡単に言えば、人より少しだけ多めに自分の思念を伝えることのできるものだと考えてくれ。


 これから話すのは実践に持ち込めるよーになったお前が知ることのできる、新たな成長への鍵だ。


 まずはその成長の鍵、その構成要素であるルナ。――人の固有する属性。


 ・・・何故、”指向性”を付与することが効率が悪いのか、それを教えてやろーか。


 

 属性は、簡単に言えば生まれた時、――発現したときはまだまだ小さい赤子だ。


 ルナなら、まだ静電気程度しか力を発することができねー赤ちゃんだ。


 赤ちゃんは簡単に言えば脆くて儚ねー属性の卵だ。感情のままに力を振るーけど、全力を出しても小さい力しか扱えねー。これは分かるな?


 だから先に生まれた俺達が、その赤ん坊に正しい力の扱い方ってのを教えてやらねーといけねーんだ。


 属性の赤子は、人の赤子と違って、人の手がねーと外見も内面も進化しねーんだ。だから放置主義とかほざくクソ親には、属性の赤子は応えねー。


 で、ここで登場するのが、ルナが学校で習った”属性強化”の三項目だ。


 ”見ること”、”触ること”、”指向性”を付与する事。


 これは確かに属性を強化する上で大事なことだ。でも、これをした赤子はどうなるか。


 属性保持者()の言う事をよく聞く、立派な子に育つだろー。日本で言う、エリートの道を生きる為の英才教育って奴だ。この際日本はどーでもいーんだが。


 で、だ。


 一見、完全な属性の鍛錬結果に見えるが、実際はそうじゃねーんだ。さっき言ったよーに、赤子は人だ。人間性のある思念体。だから、この方法は、時として自滅の足掛かりともなるんだよ。


 その根幹な原因が、前に言った”指向性”な。


 指向性って言葉。属性の力の発散される向きを(強制的に)変えることなんよ。


 それって人の赤子に例えると、どー言う事なのかって言うと、自分自身の行くべき道を、やりたいっていう感情を無理矢理抑えられて、別の方向に向かせることなんよ。


 ルナだってあるだろ?ホントならみんなと同じよーに、ちょっと味の濃い屋台の食べ物食べたいけれども、その欲求を父親によって『食べ物を食べる』から『知識を食べる』っていう目的にシフトチェンジさせて祭りの間ずっと勉強させられるとかさ。


 ストレス溜まるよな?せっかく友人が家に遊びに来てくれてんのに、親が勝手に「勉強してる」って言って追い出すあの感覚。腹立つよな。


 そんなストレスを、発現した(生まれた)直後から一身に受けるんだぜ?


 そりゃーいつか、親に反旗を翻そーと、その力を暴走させるときがくるよなー?


 それは人としての破滅だ。


 属性は勘付いたんだ。自身は愛されてなんかねー。親のステータスを高める為だけに生まれたのだとな。だからお前みてーに親に反旗を翻す。最も、お前の場合は親よりも凄い事して見返そーとしてるけど。属性らは違うからな。ありゃ完全に親と言う存在を自身の存在全てを賭して消し飛ばすっつー憎悪だ。


 だから”指向性”は、王道だが、同時に破滅への道でもある。


 この方法をやり続ければ、いつか属性が何らかの拍子に大暴発することとなるだろーな。


 

 んで、ここでオレが過去に説明した”制御性”ってのが”指向性”とどー違うのかを説明しよー。


 制御性ってのは、細かい分類になっちまうが、”客観性”と”吹っ切れ”と”想像力”が追加で必要になってくる。でもって、”指向性”が無くなって合わせて五つの項目の総称が”制御性”って話だ。


 めんどくせーとは思うが耐えてくれ。子育てと同じ。めんどくせーんだ。


 んで、この”制御性”は意味としてはまんまだな。何かを制御するって訳だが、ここで言う制御の対象は”属性”だけじゃねー。


 ―――”オレ達”もなんだよ。


 属性は赤子で、鍛錬するオレ達は親。子育ては何も子を育てる為のもんじゃねー。赤子をしつけるなら、同じくしてオレ達もまた同じ土俵に立って赤子にしつけられねーといけねーんだ。



 自身の属性の鍛錬(子育て)が本当に正しーのか、確認するための”客観性”。


 どんな子に育つのかを赤子の思考を頑張って考える”想像力”。


 自身の属性(赤子)がどんな形になろーと信じる”吹っ切れ”。


 

 これが、必要なんだよ。


 自身を、属性を、育てる。


 だからそんな育ち方をした属性には、親の心情がもろに反映されたよーな人間性ある属性になる。


 そー言う子はどんなことをしてくれるのかって言うと、ルナの”完全状態”がそーなんよ。


 周りに電波を送って状況把握。俺がサラッとしか紹介してない技を自力習得したんよ。


 これはどー言う事なんかって言うと、親思いの属性になるから、宿主の危機に真っ先に立ち向かおーとするんだよ。家族愛って奴だな。相棒にも近いんだけど、相棒と言うよりかは家族って感じ。


 そんな家族愛故に、属性が意思を持って宿主を支えよーとする事。それが”制御性”の本質であって、正しー属性の鍛錬の仕方なんだよな。


 つまりはこういう事。


 親と子の立場が完全に同じ場所。これが大事。


 ルナはもっと、自身の属性を信頼する事。もう一人の自分って仮定したらいーんじゃねーか?そっちの方が親近感あっていーよな。



 これにて、俺の属性講座は終了だ。


 後はルナ。お前の存在にかかってるんだぜ!


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