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『最弱』の汚名は返上する。~不遇だなんて、言わせない~  作者: パタパタさん・改
第一章『アルテイン編』
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第一章10 『やり方』

 「まず、言わせてもらうがー、学校で習っている属性の強化条件。アレ嘘な」


 イドが軽いノリで言ったのはオレの今までを粉砕するような言葉だった。


 嘘ねぇ、・・・嘘・・・、


 イドの口からはみ出た、如何にも無知な人の単語を頭も中で噛み砕き、咀嚼して理解する。


 とりあえずイドには申し訳ないが、ここは反論させてもらおう。

 

 「いや、嘘じゃない。実際その方法で何百億の属性を強化できると言う科学実験の証拠が存在するんだ。だから嘘じゃない」


 「でもルナの目じゃ見た事ねーだろ?」


 「・・・・ッ!それを言ってしまえば終わりだイド。証拠は出せねぇけど授業で習ったし本でも見た」


 「そー言う風に、『この条件下でなら強化できます』っつー世界のついた嘘だったらどーするんだよ」


 「ッッ!!」


 イドの容赦ない言葉にオレの息が詰まる。

 

 でもなんとかすぐに同じく言葉を絞り出して反論を作り出す。


 「で、でもそれじゃぁすぐに嘘がバレるか、何か例外があるのかでやっぱり嘘がバレるんじゃ・・・」


 不思議と喉から出た声はオレ自身でもはっきりしない声だった。最初の部分で躓いていた、というよは最初からオレもイドの言葉に揺らいでいたのではないかと、そうオレ自身が痛感してしまうほどには。


 「いーや違うぜルナ。――限りなく真実に近い嘘。誤差がたったのコンマだったら嘘を嘘と証明するのはかなり難しー。9割の人間にそれが当てはまっていれば、残り1割なんて「誤差だ」と、「当てはまらないお前らに問題がある」って踏み潰せる」


 ゾワッと恐ろしい事を言うイドにオレの心が握り潰される感覚がする。


 最近になって、一番経験した言葉をイドがそっくりそのまま言ったのだから。


 「・・・・・」


 「実際、目で30秒間ずっと目で見て触れて、指向性を与えられるように念力を込めるってやり方は真実に最も近い嘘だ」


 「」


 「なぜならこれは応用系。かなり無理矢理なやり方で属性を操作する方法だからな。感情の抑制で例えるなら、悲しみに対して”合理化”って手法を取ることは王道なんだが、悲しみに対して別の悲しみをぶつける、――簡単に言えば、居るだろ?クラスに一人は「皆もっとつらい思いをしているんだよ。だから泣いちゃだめだ!」って相手の感情を否定する奴。あれが嘘のやり方」


 チョークをくるくる回しながらイドが例えでオレのクラスに居る”アイツ”を言う。

 

 現実に即した例を上げれば上げる程、それがオレの周りで起こっている事なんだから信憑性の塊だ。


 「無理やり指向性を与えるってやり方はいつか暴走を引き起こしかねねー。ルナ、お前は属性って何だと思う?」


 結論と疑問の押し寄せ。結論を噛み砕いて言うなれば”属性”は意志を持った何かということになる。だがオレは属性発現するまでに身体に寄生虫だの、新しい脳ミソを入れられた思いではない。

 

 此処からくる結論はたった一つ。だがしかし、それが正解なのかと言うと怪しいところだ。


 相手はイドと言うキチガイマシマシ変態大盛みたいな奴だ。先生相手に満点を取れる答えでもイドの前では不正解かもしれない。


 だからここは慎重に言葉を選ぶべきで―――、


 「何か別の意志のある生物でない何か・・・・・、とか・・・」


 俺がひねり出した答えはそれこそ矛盾の塊だった。意志を持っているのに生物じゃない。矛盾だ。非生物が意志を持ってるわけがないと言うのに。


 「すまねぇ、やっぱオレ自身何言ってるのかさっぱりだ」


 「いやいや、大体合ってるよ。間違ってるんだけど、遠くはねー」


 存在が常軌を逸しているイドから、それこそ発言が矛盾している返答をもらった。


 大体あってて、間違っていて、遠くもない。・・・なんだそりゃ?


 なぞなぞにしか思えないような解答に、オレの頭がこんがらがる。


 よく分からない表情をしているオレに対してイドは指を突きつける。


 「正解は、お前自身だぜルナ」


 「――――――――」


 ビシッと「犯人はお前だ!」的なノリで言われても分からねぇ・・・。


 オレ自身が正解、それはいったいどういう事や?と、オレの中で疑問が沸騰する。


 出てきたのはたった一言。


 

 「―――は???」


 

 だった。


 

 A A A 


 

 「簡単な話だ。属性の発現ってのはいつだったかな?確か指標があるはずだ。こういう時から何日目~みたいな指標が」


 「・・・・第二の聖誕」


 オレが一番思い当たる節があるのは倫理で習った”心と身体”の成長期、――第二の聖誕だ。個人差はあれど、大体14歳辺りでそうなるんだったか。

 

 それであってるのかと、イドの方を向くと当の出題者が固まっていた。


 「え、第二の聖誕・・・。なにそれ?」


 「えッ!?違うのか!!?」


 オレの国はこの第二の聖誕を区切りにしてその約十日後と言う指標が出ている。


 イドの事だから大抵はその眼に映っているのではないかと思っていたが、何というか、当てが外れた様な表情だった。


 だがすぐさまオレの頭を読んだのか、はたまた何か別の視点でも見つけたのか「アッー!」と手を打った。


 「あーそーか。此処日本じゃねーからなのか!あーそーかそーか、第二の誕生と第二次性徴が同時に来てるのかこの世界の人って、はー!なるほど。こりゃ盲点だったぜ!心と身体の両方が同時並行で、か」


 「なに言ってるんだ?」


 知らない単語が三つほどイドの口から溢れ出て、自身に向けて発信させる。


 いや、多分追及しても意味は無いんだろう。オレが知っても多分意味自体は無い。イドの使う造語は意味があってないようなものだ。


 イドは勝手に一人で何かを納得し、言葉を続ける。


 「話戻すが、属性ってのは第二の聖誕に深く関係してる」


 「そうだな」


 「で、その属性ってのはほぼ100%が遺伝子依存になっちまう訳だが、その力の根源は何処にあるかってゆーと、その宿し主自体にあるんだよ」


 「そうだな。能力量ってのが個人にはあるし、それ自体が人の作るエネルギーから生み出されるって生物で習ったな」


 「おー!ルナの物わかりが良いな!それで、この属性ってのは人の心の成長ってのに深く関係してるんだ。分かりやすく言やー、”新しい自分自身の証明”ってところか。それだな、まさにそれ。自分自身を社会的に知らしめる一つの手段。それが”属性”」


 「・・・・?つまり、イドが言いたいのは”属性”は生物自身が社会的に目立てるようにするための一つの手段で、それを無理に使おうとするのは自己を無理矢理酷使しているって事か?」


 不思議とするすると頭の中に情報が入って行き、自然と処理されてまとまった答えが口から飛び出した。


 今さっきまでの意味不な情報を乱射するような情報拡散妨害野郎ではなかった。


 オレの問いにイドは首肯する。


 「歴史的観点から見れば、属性ってのは一種の力。生物にとっちゃ良ー音色を鳴らす事や、綺麗な巣作り、筋肉量とかエサの取りやすさに類似したもの。言っちゃー社会で生き延びるための雌に魅力的な男性に見せる超常的な力だ」


 「・・・なるほど」


 「んで、本題に入るわけだが、その真実99%の嘘。これの欠陥は何なのかと言うと、パターンが一つしかないこと、これに尽きる」


 「一パターンしかない。そういうことか・・・?」

 

 「そゆこと。『眼で見て触れる』これだけってのが間違い。属性の強化ってので自身の研磨ってのはそーなんだが、最初っから自分自身だけの力で強化。これはまーこれで合ってるんだが、もー一つやり方がある。―――ルナは、”制御性”って言葉は聞ーたことあるか?」


 イドの問いかけに、オレは少し唸り―――回答した。


 「それはつまり、属性の能力量。これの出力を制御する力ってことなのか?」


 「――――――――、合ってるが、少し違う」


 これじゃね?と思った答えが違った。


 前半の溜めは何だったのかを問いただしたくなってくる。


 あまりにも長い溜めのせいで、それが正解だと思ってしまったオレと、間違いを促す真似をしてくれたイドを殴りたい。


 だが表っ面の怒りだ。すぐになくなったが。


 「別に対象は自分自身だけじゃねーんだよ。他者でもいーんだ」


 「・・・・それはというと?」


 「簡単な作業だ」


 そう言って、イドは持っていた黒板にチョークで絵を描く。


 ――棒人間。見た目からしてオレを模しているのか電気を想起させるマークを入れている。


 そしてその次に雷雲を描いた。


 「落雷って100%電気な訳。これは分かるな?」


 「あぁ、・・・・・・ん。まさか・・・・」


 オレが次のイドの台詞に勘付いた。

 

 もしかしたらこの男、そういうことを言ってるのか?――と、

 

 「避雷針を立てて、そこに雷直撃!鉄の伝導性から伝わる電気を鉄を通して触り、普通の人が浴びても平気な電気量にまで抑え込む。この方法でも、というかこの方法の方が、属性の強化はしやしーってもんだ!」


 オレの勘が当たった。いやそれどころか越えてきた。


 「(避雷針を伝った電気を念力で封じ込めるとかじゃなくて、避雷針に触ってやるんだ。へぇ~、って死ぬだろ馬鹿!こちとら電気属性っちゃ電気属性だが、急にそんな事言われてやったら死ぬわ!)」


 確かに、強化方法としては間違ってはいない。だが急にそんなことが出来る訳ないのだ。


 オレが目をひん剥いて抗議すると、イドはさして想定済みといった余裕な腹立つ顔で言う。


 「別に最初っから雷とかは言ってねーだろ。そりゃあの轟音が直に聞ける場所までわざわざ近寄ったら五月蠅すぎて制御に集中出来ねーってのは分かる。だからもうちょっと、簡単なので良ーんだよ。火属性素人を太陽に投げ込んでら火傷するよーに、急に素人が玄人の真似をするもんじゃねー」


 それじゃ、どうしろと・・・・。と、片を落とすと、イドが再び、オレに問いながら棒人間を描く。


 今度は人の脳を半分にした断面図を描いて―――、


 

 「生態電気、初心者はやっぱこれから始めるべきだよな!」

 


 

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