転生したら下位貴族だったので、推しの悪役令嬢を幸せにするためメイドになることにします。
デビュタントが終わり、家に帰ってきたら急に倒れた私、サリナ・ミラフォード男爵令嬢。
前世の記憶の一部を思い出したのはこの時です。
国の名前、国王の名前から、この世界が剣と魔法のファンタジー恋愛シミュレーションゲームだったことを思い出したのだ。
慌てて、自分のもともとある記憶や貴族年鑑を引っ張り出し確認したところ、どうも私の知っているゲームの時間軸よりも、十数年前な気がしてきたのだ。
私の推しである悪役令嬢こと、スカーレット・アシュレイ公爵令嬢がまだ生まれていないのだから。
なんなら、王太子殿下も生まれてねーよ。
現在15歳。
婚約者もいない、就職先も未定のしがない男爵令嬢である私。
兄もおり、家を継ぐわけでもないし、文官の父の給料を考えれば、下手をすれば平民落ち。
であれば、今からメイドとしての知識を習得し、うまいこと公爵家のメイドになれば、前世の推し、スカーレット様にお仕えすることができるのではないか?
なにせ、スカーレット様がお生まれになる時、出産時の負担から公爵夫人が死去され、宰相の父は家庭にほとんど帰ってこないことから、一人っ子のスカーレットは親に無視される悲しさから我儘放題に育つのだ。
見目麗しいことも有り、王子の婚約者になるも、そこはテンプレ的な落ちで断罪処刑されてしまう。
ならば、私が推しのママもとい、お世話係つまりはメイドになればいい!!
天才!
早速、高位貴族のメイドとして働くと父親に了解を得て、メイド募集中の伯爵家に斡旋してもらった。
この伯爵家は、アシュレイ公爵家の派閥。
上手いこと実績を積めば、公爵家のメイドに推薦してもらえるかもしれないし、何なら転職すればいい。
伯爵家で1年ほどメイド修行をすると、貴族メイドとして重用され始める。
そして、現王太子殿下、のちの国王陛下の王太子妃に第一子の懐妊との知らせが、入る。
ベビーブームの到来だ!
だが、私は結婚などする気はない。
他の貴族メイドがやめていく中、残っていた私は、アシュレイ公爵家に引き抜かれることになった。
侯爵家以上になると、メイドの身辺調査の関係上、貴族出身の次女、三女が奉公するのは普通だからね。
子爵家や伯爵家の妙齢のメイドが減ったことから、男爵家だが私が引き抜かれたわけだ。
あとは、公爵家で実績を積み、今後お生まれになる公爵令嬢付になれれば万々歳である。
お屋敷で働き始めて半年、レイチェル公爵夫人と仲良くなった。
何と同い年だったのだ。
まだ16歳ですわよ。
てか、逆に言えば、低年齢出産だったわけだ。
すでにご妊娠済み。
良い人なので死んでほしくない。
私は前世の知識を総動員して、栄養がある物や、適度な運動などを進めている。
スカーレット様が生まれるのは多分、5ヶ月後。
なんとか、母子ともに助かってほしい。
気が付いたら、レイチェル様付筆頭メイドになりました。
おかしいな、スカーレット様につきたいんだけど。
まぁレイチェル様はスカーレット様似なので、全然推せるのでよい。
悪役令嬢で高圧的な態度をとっていたスカーレット様も可愛かったが、深窓の美女って感じで、お優しいレイチェル様もなかなかよい。
で、いよいよスカーレット様がお生まれになりました。
3,500g、立派な赤ちゃんです。
それと、何が結果的に良かったのか、レイチェル様も健康を維持できております。
この一週間は油断できませんが、何とか母子ともに健康というところ。
お優しいレイチェル様は、生まれたばかりのスカーレット様を抱っこさせてくれたんですよ!
あぁかわいい。ぷにぷに。
今後はこの二人に仕えていくことになりそうです。
スカーレット様がお生まれになって3年が経ちました。
レイチェル様もお元気で、スカーレット様は母乳で育てられておりましたよ。
いま、レイチェル様は二人目を妊娠中。
今度は男の子がほしいとか。
跡取りの関係もあるもんね、そうだよね。
さて、3歳になられて歩き回られるようになった「これなぁに星人」のスカーレット様ですが、私に完全になついております。
仕事をしていてもスカートを引っ張られて、拉致られ、「これなぁに」をお見舞いされます。
乳母は別にいるんですけどね、なんだか私が教育係のようになっておりますよ。
いいんですけど、どちゃくそかわいい幼女スカーレット様にちょこちょこ付け回されるなら本望です。
スカーレット様と、「なんでしょうねぇ?」といいながら、一緒にお庭のテントウムシやお花、また屋敷の中では、ランプや掃除道具など興味を持たれるものを一緒にみて、どんなものか考えてもらいながら教えます。
あぁ幸せ。
私は、レイチェル様からの信頼も篤いので、とても働きやすいです。
このまま素直に育っていただけるといいのですがねぇ…
スカーレット様に弟が生まれました。
これで跡取りの心配がなくなりますね。
そのせいで、スカーレット様が私に余計べったりになりました。
「お母様を取られたから、私はサリナをもらうの」とのこと。
かわいい。
別にレイチェル様も全く相手にしていないわけではないんですが、やっぱりかまってあげられる時間は減りますからね。
私がしっかり導いてあげましょう。
そのせいで、私がスカーレット様専属侍女となりました。
やった!当初の目標をクリアした!
このころからゲーム本編では我儘放題だったとあったはずだが、このスカーレット様そんなことはなく、非常に素直ないい子に育っております。
爵位を振りかざしたりもしませんし、何がよかったのでしょうね?
いまでは家庭教師もつけ始め、普通のお勉強のほか魔法の使い方なんかも習い始めました。
ライバルは私です。
勉強はともかく、魔法は私も苦手で、何とか卒業できたレベルですから、お嬢様と一緒にお勉強です。
公爵家の雇う家庭教師ってすごいですね。
私も魔法が使えるようになってきました。
まぁスカーレット様のほうが上達が早いんですけど……
スカーレット様が10歳になり、王城に呼ばれ、王子殿下の婚約者に内定したそうです。
5歳からコツコツ勉強を進めたお嬢様は、同世代では右に出る者がいない魔法使いになっております。
勉強も優秀でいらっしゃる。
初顔合わせで、殿下がスカーレット様に魔法勝負を挑んだらしく、殿下をコテンパンにしたそうです。
大丈夫でしょうかね?
そしたら、スカーレット様が男の子とはどう付き合えばいいのか?と聞いてこられたので、忖度は不要ですが、甘えてきたら甘えさせてあげるとよいと教えてあげました。
公爵令嬢ではありますが、素直に育ったスカーレット様は貴族の割には表情がコロコロ変わりますし、様々なお茶会での評判も良いので、全く問題ないかと。
このまま学園が始まっても悪役令嬢にはならないのではないですかねぇ?
よきよき。
12歳になってお嬢様が学校に通い始めました。
なんでも、殿下に付きまとう恥知らずな男爵令嬢がいるとのこと。
ヒロインちゃんですかね?
この2年で、スカーレット様はちゃんと殿下と恋愛をされていたようなので、それほど心配していないんですが、年頃の女の子からすれば心配ですよね。
なので、「いっそ男爵令嬢と仲良くなってしまいなさい」とアドバイス。
目くじらを立ててもしょうがないです。
お嬢様は懐深く育たれましたから、きっと断罪もされませんよ。
お嬢様の卒業となりました。
結果的にお嬢様と殿下の仲は良好。
断罪云々もなく、無事立太子された殿下と結婚する流れとのこと。
かなり初期から未来をゆがめた気がするので、バタフライエフェクト成功ってことでしょうか?
しかも、お嬢様の要望で王城でも専属として働くことができるそうです。
うーん、メイドの下克上ってことでOKすかね?
いやーよかったよかった
おわり
よんでいただきありがとうございました。




