星の国
初投稿なので色々と分からないことだらけですが、少しでも読んでくださると嬉しいです。
──ここは星の国。
願いがなんでも叶う、夢のような場所だ。
その国に、1人の美しい少女が舞い降りた。
「ねぇ、起きて。……大丈夫?」
少女は誰かの声で目を覚ました。フードを深く被っており、声の主の顔はよく見えない。
腕に力を入れる。地面に横たわっていたせいか、体が軋むように痛い。
少女は少し顔を歪めた。
「誰ですか……?」
少女が体を起こしてそう言うと、フードを被った人は「え? 私?」と、自分を指さして言った。
声色からして、どうやらこの人も女性のようだ。
「私はルタ。あなたは?」
その女性──ルタがフードを外してそう言うと、少女は少し恥ずかしそうに顔を伏せた後、自分の名前を言った。聞き返されるとは思っていなかったのだろう。
「ステラ、です」
ステラは、ルタの後ろをちょこちょこと着いて行って、ルタと会話をしていた。
「あなたは何をしにこの国へ? もしかして、願いを叶えに?」
ルタに問いかけられ、ステラはふるふると首を横に振った。
「分から、ないです。私は各星を転々と回っていて──何か呼ばれたような気がして。それで気の向くままに行ったら、ここに来たので」
「という事は、他の星の人なの?素敵ね」
ルタはうっとりと言うと、ステラはまた顔を伏せてしまう。照れ屋なのだろうか?
「たまに、あるんです。そういう事」
「そうなのね。……ねぇ、夜は好き?」
ルタが優しく問いかけると、ステラは伏せていた顔を上げ、こくりと大きく頷いた。
「星々がきらきらと輝いているのを見るのが、本当に好きで。月を眺めている時も、不思議な力を分けられているように感じられるので、とても好きです」
「私も夜は好きよ。……月には何か、特別な力が宿っているのかもしれないわね」
ルタがそう言って少し笑うと、ステラもつられて小さく笑みを零した。
「あの。ルタ、さんはどこに向かってるんですか?」
「呼び捨てでいいわよ。ルタで。私は“願いの叶う鐘”がある丘に向かっているの」
ステラは、その“願いの叶う鐘”という言葉に、強く興味をひかれた。
「“願いの叶う鐘”、ですか」
その言葉を忘れないように、ルタの言葉を繰り返してそう口に出す。
「そう。私の聞いた噂によると、その鐘は美しく虹色に輝く月の石を使ってるみたいなの。1度でいいから、この目で見てみたくて。それで、私はこの場所に来たのよ」
そうなんですか、と、ステラはルタの言葉に驚きながらも相槌を打った。
ステラはそれまで、ルタはこの国の住人だと思っていたから、違う場所から来たと知って、少し親近感が湧いたのだ。
「ルタは、どこから来たの?」
ステラは気になって、そう聞いてみる。
「この星の国の隣。夜の国からよ。暗闇だらけで、なんにも見えないの。私がここに来たのは、もしかしたら“願いの叶う鐘”を見るのよりも、なにか口実を付けてそこから逃げ出したかった、って理由の方が本当なのかもしれないわね……」
ルタはそう言ったきり、なにも言わなくなってしまった。
ステラもそんなルタを見て少し気まずくなり、黙ってルタの後を付いて行った。
しばらくすると、ルタが立ち止まった。
「…どうしたの? ルタ」
おそるおそるステラがそう言うと、ルタはくるりとステラの方に体を向けた。
「着いたのよ。“願いの叶う鐘”の所に」
え、とステラが、ルタの後ろからちらりと顔を覗かせる。
なにかきらびやかなものが、視界の端に映る。
ゆっくりと近づいてみると、それは大きな鐘だった。
きらきらと、虹色と金色に星や月の光を反射させて佇んでいる鐘には、重いようでいて、儚さが感じられる。
「綺麗……」
思わずそう声に出してステラが言うと、ルタもこくりと頷いた。
「本当に綺麗だわ。思っていたよりもずっと」
そう言って鐘を眺める。
空には無数の星が瞬いていた。
「…ルタは、何を叶えたいとかあるの?」
ふと気になって聞くと、ルタは少し考える仕草を見せた。
「そうね……。お金が沢山欲しい、とか?」
「ルタって結構現実的なんだね」
そう言うと、ルタは「こら」と軽く私をつついた。
ステラは、今までの事をふと思い返してみる。
物心ついた時からずっと一人で、たまに他の星に行ってみたりするだけで……。
「あなたは、この世界にある全ての星をまわり、その状況をまとめること」
「何かあれば、他の者と協力すること」……。
それから、ずっと頭の中にある2つの言葉。
前者はずっとやり続けている。だが、後者は他人とあまり交流がないステラの頭を悩ませてしまうものだった。
「ねぇルタ」
「何?」
ステラの呼び掛けに、ルタが返事を返す。
「私と、旅をしてくれない? ──この世界にある、色々な星を巡る旅」
ルタは少しだけ、目を見開いた。
「良ければって話なんだけれど。ほら、ルタ、帰りたくないとか言っていたし……」
慌てて言葉を付け足すと、ルタは吹き出した。
「ふふ、そんなに慌てなくていいのに。……私でよければ、勿論よ。一緒に色々な世界を見てみたいわ」
鐘が小さく、カランカランと揺れる。
ルタの“抜け出したい”という思い。
ステラの“他人と交流がしたい”という思い。
この地に降り立ったことで、2人の願い事は本当に叶ったのだ。
「ありがとう、ルタ」
ステラには、その鐘の音が祝福を告げているように思えるのであった。
end
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
良ければここをこうした方が良いなどのアドバイスをくれる方がいたら、教えてくれるとありがたいです。m(*_ _)m