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モニカのおばあさんの家は、イーラさんの家から歩いて5分くらいのところだった。
「ここよ。 おばあちゃーん!」
モニカは玄関を開けて勝手に中に入っていく。
「ユリウスさん、入って。」
僕はモニカに促され、中に入る。
「お邪魔します。」
「おじゃましまーす。」
放置したにも関わらず、勝手にくっついてきていたストーカー男が、これまた勝手に中に入ってきた。
「ちょっと、あなたは呼んでないわよ!」
と、モニカがプリプリ怒ったが、家主のおばあさんが「いいじゃないの。どうぞ、お入りになって。」と、通してしまった。
「さぁさぁ、お掛けになって。」
僕達が椅子に座ると、モニカが早速切り出した。
「おばあちゃん、ユリウスさんに魔具を作ってほしいの。」
「魔具だって?それまたどうして。」
「実はね、そこのお兄さんにかかってる呪いのせいで、ユリウスさんが迷惑してるんだよ。」
「どういう事だい?」
モニカかは僕とルクスの状況を説明した。
「なるほどねぇ、そりゃああんた災難だったね。」
そう言いながらも、おばあさんは笑いを堪えているようだった。
「でもねぇ、あんた方が言うような、吹っ飛ばすだの動けなくするだのの魔具は、私には作れないよ。」
「そうなの?じゃあ、呪いを解くのは?」
「かけた本人が解けないものを私が解けるわけないだろう?他人のかけた呪いを解くのは難しいんだよ。」
「そんなぁ~。何かいい方法はない?」
「要はそこのお兄さんが正気に戻ればいいんだろう?話を聞いてると、殴られたり衝撃を受けると我に返りやすいみたいだね。」
「確かに、殴られると戻りますね。」
「じゃあ、ユリウスさんに私のフライパン貸してあげるよ。」
僕に常にフライパンを持ち歩けというのか。
「そんな物持ち歩いてたら邪魔だろうよ。」
おばあさん、わかってらっしゃる。
「んー、じゃあ木の棒とか?」
何そのどっかの世界の初期装備みたいなの。
「待ってくれ、俺は殴られる前提なのか?俺だって呪われた被害者なのに。」
「あなたは自業自得ですね。」
「そうだな。元はと言えば全てお前が悪い。」
「大体、恋人がいながら浮気するっていうのがありえないのよ。」
「あぁ、最低だな。お前は反省すべきだよ。」
「イーラさんが気の毒だわ。」
「ユリウス、許してくれ。俺は二度と浮気しない。生涯あなただけだと誓おう。」
「誓うな!いいか?僕とお前はただの顔見知りだ。お前が謝るべきはイーラさんと、今まで遊んできた女性達だ。」
「でもユリウス、俺はあなたが好きなんだ!」
「でもじゃない!いいか、そこから動くなよ。それ以上僕には近付くな!また殴られるぞ。」
僕達の様子を見ながら、モニカとおばあさんがコソコソ話しているのが聞こえてきた。
「ね、面白いでしょ?」
「初めて見たが、恋の呪いとはおかしなもんだねぇ。」
「あの人、本当は女の子大好きなんですって。」
「どれ、ちょっと正気に戻してみてくれ。」
「いいわよ。」
ゴンッ
モニカは奴をフライパンでぶん殴った。
「ってぇ~......」
奴は涙目でモニカを睨む。
「なぁ、あんた。俺を止めてくれるのはありがたいんだが、そう何度もフライパンで叩かれるのはキツいんだが。」
「あら、やぁねぇ。兵士をしてるような男に、食堂の娘が平手打ちしたところで、大したダメージないでしょう?そもそもあなたが悪いんじゃないの。お兄さんてば心も狭いのね。」
「む、そんな事ないだろ。そもそもあんたには関係ないだろ。」
「まぁ!あたしはユリウスさんから、直々に助けを求められてるのよ。」
二人が睨み合いを始めた横で、おばあさんがふむふむ言っている。
━━プチッ「痛っ」
すると、おばあさんは突然奴の髪を数本抜きとった。
「どれ、ちょっと待ってな。」
「おばあちゃん、何作るの?」
「簡単なお守りだよ。2~3時間ありゃあ出来るやつさ。」
どうやら何かのお守りを作ってもらえるらしい。ありがたい。
「ありがとうございます。」
「じゃあ、あたし達ちょっとモーモー屋行ってくるね!おばあちゃんにもお土産買ってくるよ。」
「そうかい。じゃあ、いちごのやつにしとくれ。」
「おっけー」
僕達は待っている間にモーモー屋のクレープを買いに行くことにした。
奴も当然の様についてくる。
「あなたは来なくてもいいのよ。」
「危なくて、あんたみたいな凶暴な女とユリウスを二人になんて出来ない。」
「何ですって?あたしより、お兄さんの方がよっぽど危険じゃないの。」
道中二人ははずっと言い争いをしていた。
奴が僕の手を握って頬を赤らめだした時は、「気色悪いのよ!」とフライパンでお尻をぶっ叩かれていた。
この二人は相当相性が悪いらしい。
モニカはいちごのクレープと、一番お高いモリモリモーモーキャラメルいちごクレープカスタードチョコバナナのせという何味かわからなさそうなクレープにしていた。
僕が約束通りに支払いをしていると、奴がまたごねだした。
「なぜユリウスがあんたのクレープ代を払うんだ!自分で払えよ。」
「そういう約束だからよ。」
「俺のユリウスがお前に貢ぐなんて納得いかない!」
「あなたが納得出来なかろうが、ユリウスさんから奢るって言ってきたのよ~。」
モニカは勝ち誇った顔をしている。
「ユリウス、俺にも買ってくれ!」
僕はげんなりした。
「嫌だよ、自分で買えよ。」
なぜ迷惑かけられている相手にクレープをご馳走しなければならないのか。
むしろ、モニカのクレープ代もお前が払えよ。
「何でこんな女贔屓するんだよ!」
「贔屓って......、まぁ、お前よりは世話になってるわな。」
「ひどい、ユリウス......」
「ひどいのはお前の頭だよ。」
モニカはざまぁ見ろと言わんばかりのニヤニヤ顔でクレープを頬張ってる。
奴があまりにうるさく騒ぎ立てるので、僕は一番安いクリームのクレープを買ってやった。
なんて無駄な出費......。
奴はぽーっとクレープを眺めている。
「なに、食べないの?」
「ユリウスが初めて俺にくれたプレゼント......。どうやって保存すればいいのだろうか。」
僕は奴からクレープを奪い取ると、奴の口に詰め込んだ。
「食・え・よ!」
はぁ、疲れる。




