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○○にとってのアイの物語

 これは、私のアイの物語…。


 私は愛が分からない。

衣食住を与えたらそれは愛?おもちゃを与えたら愛?好きだよって言われたら愛?


 私は母と小さなアパートに二人暮らしだった。貧乏…までは、いかないけど日々の生活でいっぱいいっぱいだった…。

 母は、私のために朝から夜中まで働いていた。朝からは、普通に事務で働き、夜は会社に内緒で飲み屋で働いていた。

 子供一人しかいないのに、なぜそこまで働いていたのかあの時は分からなかった。

 父?…父の事は知らない。だって、写真もないし母も話したがらない。だけど母は「私は死んでもお父さんとアナタを愛しているよ」と必ず言われた。誕生日には、ケーキと、おもちゃ。そして、愛してると、言われて育った。

 しかし、小さかった私には愛してるの意味が愛とはおもちゃやケーキを与えられることなんだ!とよく愛について理解をしてなかった。…いや、今も愛がなんなのか分からないままだ…


 私の母は、世間的にはダメな親だろう…だって、物心ついたときから夜中目が覚めても母は居なかった。それは、病気の時も…。苦しくてキツくて…さみしくて…それでも母は居なかった。

体調悪くても病院に連れていってもらったことは数少なく、病院に行くときは必ず入院レベルのひどい症状の時。毎回、お医者さんに「もっと早く連れてきていたらここまで酷くはなりませんよ」と、怒られていた。そんなことを繰り返す物だから虐待を疑われた事もあった。

その時の母は泣くでも笑うでもなく、「私は子供を愛してます」だった。

 そんな親の元で私も大きくなり高校生になった。その頃から母の顔をほぼ見なくなった。朝起きるとお金と愛してると書かれた手紙があった。私もバイトしたり、もらったお金で遊んだり非行にはしったり、友達の家に無断で泊まる事もあったが、母からの連絡は一切なかった。

 その頃から愛ってなんだろう?って思うようになった。

愛してる人間が何をしても心配にはならないの?愛ってなんなの?

人は、抱かれると愛を感じると友人が話していた。愛を知りたくて人肌恋しくて体を売ったこともあった。行為事態は気持ちよく好きだったが、知らない異性に身体中を触られるのは少し気持ち悪かった。

抱かれてる最中は、かわいい、愛してる等といい、それを信じ愛を求めると去っていく。これが愛なの?なのに、また人恋しくて…行為中の偽物の愛を…その瞬間だけは私をみてくれてるのを感じたくて行為を重ねた。終わった後の孤独感が耐えられなくてやめられなかった。

なのに、段々と自分の存在が分からなくなっていた。ただの、汚いモノ……愛ってなんなの?そんなことばかり考えて何度か自殺しようとしていた。


そんなときアイツに会った。

 「どこで死のうか…どうしたら一瞬で死ねるか…死ぬのは痛いのか苦しいのか……ドウシテワタシハコウナッタンダ…」そんな事考えながら公園のベンチに座ってた。


トントン…肩を叩かれ振り向くとアイツがいた。

パッと見どこにでもいる人。顔も中ってところだが、優しそうな顔立ちだった。「大丈夫ですか?さっきから、ここにずっといますよね?体調がお悪いなら病院につれていきましょうか?」

親切心だったのだろうが、初対面の人にそんな事言われて驚いて声が咄嗟に出なかった。

「あっ!いきなりすみません!実は5時間前にここを通って、普段あんまり人がいない公園だったんでアナタをみて珍しいと思ったんですが、今も居たので、怪我して動けないのか体調悪いのかと心配になりまして…」と一生懸命弁解していた。

心配そうな顔をみているとなぜか涙が溢れた。

アイツはそんな私を見てビックリして「やっぱりどこか悪いんですか?大丈夫ですか?」と心配そうに私の手を握った。

『あたたかい…』

思わず声に出てたらしい。

アイツは少しだけ驚いて、困ったような?何かを察したような顔をして「じゃあ、温まるまでいますよ」っと優しい顔で笑ってくれた…。


そう、これが私とアイツの出会い。アイツは本当にいてくれた。何を話すでもなくただ、そばにいてくれてた。

変なやつ…。なのに、ただ手を繋いで横にいるだけなのに、抱かれる以上の温かさを感じた。そして泣いてることに気づいた。あー、だから困った顔をしたんだ…。そんな事を考えながら手を握り返した…。



その後は家に帰ったし、よくあるみたいなLOVEな事なんてないし、連絡先もしらない。ただ『また冷たくなってたらこんな僕でいいならあたためますよ』といって去っていった。不思議な人だが、初めて自分を見たくれた人のように感じた…

その時は少しだけ…ほんの少しだけ…何かが動いた気がする…


なのにさ、家に帰ると…現実に戻るとさっきまで気持ちが戻る気がした…。

人肌恋しくなってるはずなのに、行為より無性に手を繋いで欲しかった。


第一章おわり

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