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金魚掬い

作者: こーへ〜

金魚救い


店主


今年も祭りの季節がやってきました。通りには色んな屋台が並びます。

中でも金魚掬いなんてのは涼しげで大変夏らしいですね、私も昔よくやりましたよ…でもね屋台ですくった金魚は寿命が短いんです、売られてる間弱ってしまうんですかね…小さい奴はチラホラ掬われていきますが一際大きな出目金なんぞはが中々に掬うのが難しいってなもんで誰にも掬われずには飼われないで寿命で死んでしまうなんて可哀想なもんです。


店主「さっ!ちょっと寄ってて!金魚掬いやってて!」

男「ふぅー久々の祭りだ、さぁーてどこから行こうかねー、色々あって目移りしちまうなぁ…まぁでも金はたんまり持ってきたんだ!今日は遊び尽くしてやらぁ!」

店主「兄さん!そこの兄さん!」

男「ん?俺かい?」

店主「そうだよ、そう!金魚掬いやってみない?」

男「おっ!金魚掬い、懐かしいね、いいね!おっちゃん!ポイ1つくれるかい」

店主「あいよ、300円だよ」

男「んっ、300円」

店主「毎度!」

男「さてさて、どいつにしようかー、おっ!出目ちゃん居るじゃない」

店主「あーそいつは無理だよ無理、でかいし活きがいいから破られて終わりよ」

男「そんなもんやってみなきゃわかんねぇだろ!」

店主「威勢がいいねぇ、取れるもんならやってみ」

男「よーし見てなよ、よっと!あら?」

店主「兄さん下手くそだね〜、言う事に腕が付いてってないね」

男「たまたまだ、たまたま!おっちゃんもう1つ!」

店主「ありがとね、ほら」

男「そらっ!あっ!またかー」

店主「駄目だねー兄さん、水に垂直にポイ入れて動かしゃ、そりゃ破れるよ、並行に水に入れて動かしてすくうんだよ」

男「並行に、なるほど…案外優しいねおっちゃん、よし!それでやってみる…おっちゃんもっかい!」

店主「あいよポイ」

男「そーっと…そっと…出目ちゃんの下にポイを…」

店主「おっ!いいね!いい調子だよ」

男「よーしあとは掬って」

店主「いいね、いけそうだよ」

男「よしよしいけるいける…ここだっ!」

店主「お!いけたね!普通のが」

男「だーっ!!お前じゃないんだよ」

店主「すくう時に普通の金魚達が出目退かしちゃったね…まぁ3匹纏めてきたんだ…付いてるね兄さん」

男「普通のなんて要らねぇよ、俺はこの出目ちゃんだけ欲しいんだ」

店主「あらら、水ん中戻しちまった…いいのかい?」

男「いいんだいいんだ!俺はこの出目ちゃんだけ!出目一筋よ!」

店主「出目一筋…凄いねあんた…たかが金魚だろ」

男「されどとも言わぁ」

店主「なんだってそんなにコイツが欲しいんだい」

男「不細工に見えるけど可愛ぇらしいじゃねぇの出目はよ、それにデケェってのがいい!みみっちいのはいらねぇ!だからよ、俺ぁこいつを絶対掬ってやんのよ!」

店主「なるほどね、まぁあんま意地はっちゃ駄目だよ、はいよ追加のポイ」

男「あんがとよ、それ、もう一回!そらっ!だー!まーたお前らか!あっち行け!しっし!あ!破りやがった!こいつらー」

店主「兄さん遊ばれてんね」

男「うるせぇやい!ん?なんだ?ちっけぇ金魚達が集まって出目ちゃん追いやってる?おい出目ちゃんお前虐められてんのか?可哀想にな…待ってろよ俺が助けてやっからよ」

店主「兄さん優しいね」

男「当たり前よ!可愛い子には優しくしなきゃよ!男なら」

店主「人じゃなく金魚だけど」

男「関係ないな、おっちゃんポイくれ」

店主「はいよ」

男「よぉし!絶対掬ってやるからなー…おっと焦らずそーっとそーっと…ああ!またお前らか!くそー!おっちゃん!」

男「そりゃ!うりゃ!くぅー…ポイ追加ァ!」


掬えど掬えど一向に取れる気配がない出目金、それもその筈、なんの因果でしょうか出目金が取れそうなところで他の金魚がポイを破って邪魔をします。


男「こいつら…しつけぇなぁ!こちとらてめえらなんか要らねぇんでい!」

店主「出目狙いだから嫉妬してるのかねー」

男「うーん、嫉妬ねー、やめて欲しいもんだ」

店主「そうだねぇ恋じゃないしね」

男「鯉なんてここに居ねえじゃねぇか」

店主「いやその鯉じゃねぇんでな」

男「俺はこの出目ちゃんに惚れてんだ、他は邪魔でぃ」

店主「恋じゃねぇか」

男「鯉じゃねぇや、金魚だい」

店主「いやまぁそうだけども、そうじゃねぇんでな…」

男「あん?まぁいいや、さぁて出目ちゃん取ろうとすると他が邪魔する…どうしたもんかな…あ!そうだ!」

店主「うぉっ!?どしたい、いきなり」

男「ああすまねぇな…おっちゃん店のポイ全部くれるかい?」

店主「えっ!?全部って…い、いいのかい?」

男「いいんでい!金ならたんまりある!ほら持ってきな!」

店主「ひぃーふぅーみぃー……確かに残りのポイの金額分あるね…でもこんなに買ってどうするんだい?」

男「おっちゃんそこのバケツ貸してくれるかい?」

店主「いいけど何する気だい?」

男「何って邪魔もん退かすのよ」

店主「まさか全部掬う気なのかい?」

男「たりめーよ!邪魔なやつら全部掬って最後に出目ちゃん掬って救えば終めぇよ、虐められて可哀想な出目ちゃん持って帰って万々歳ってなもんよ…さぁーて準備万端!行きやしょうかね…あ、そぉらよ!」

店主「おお!1匹!兄さん凄いじゃない」

男「あー破れちまった…でもまだまだたっぷりあんだ」


買い占めたポイでどんどん掬っていきます


店主「あんた…上手くなったね…」

男「はぁはぁ…そりゃなこんだけやりゃあな…ガキやカップルなんぞが来やがるから掬った金魚持っててもらったけどいいよな?」

店主「ああ構わないよ」


更に金魚を掬っていきます…数千あったポイも、もう残り一個…残った金魚は黒く大きい出目金だけ


男「やっと来た…」

店主「やっとだね…」

男「絶対掬うからな」

店主「ああ掬ってやりな」

男「そーっとそーっと…ここだ!」


出目金の下にポイをやる…そーっと沿わせてここだと言うところで一気にすくう、勢いあまってポイが破れてしまいますが出目金は水面からピョンと跳ね上がりスーッと持っている器へ吸い込まれる、堪らず店主がおおと声を上げます…出目金がチャポンと音を上げ器に収まります


男「はぁ〜やっと掬えた」

店主「いやーありがとね見事にすくわれたよ、金魚も俺も」

男「俺も?」

店主「ああ…兄さんのおかげで金が仰山、金仰山ってなもんで」

屋台のおじさん金魚さんで救われた。




【オチ違い】

出目金の下にポイをやる…そーっと沿わせてここだと言うところで一気にすくう、勢いあまってポイが破れてしまいますが出目金は水面からピョンと跳ね上がりスーッと持っている器へ吸い込まれる、思わず店の店主

「うぉおお」と声を上げます…出目金がチャポンと入る…と思ったが器から外れて水の中にチャポン


男「あー…掬えなかった…助けて…救えてやれなかったー!あぁ…うっうぅ…」

店主「惜しかったね…まぁ…店のポイ全部買ってくれたんだ…ほら…この出目持って行きな」

男「え?いいのかい?」

店主「いいよ」

男「ああ…俺が救われちまった」

落語的なの書きたかったんです。

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