犬と猫
ある小さな国の小さなお城に双子の王子様と王女様、そして犬と猫が住んでおりました。
犬は王子様の犬で猫は王女様の猫です。
王子様の犬は、王子様のお父様つまり王様がつれてきた犬で、王女様の猫は、いつのまにか気づいたらお城にいた猫でした。
ある日のこと、王子様が犬の自慢話をはじめました。
王子様の犬はとても勇敢な犬でした。
時々、城に忍び込もうとする悪者を捕まえてくれるのです。
王子様は犬の活躍が嬉しくて仕方がありません。
「僕の犬はすごく強いんだ。きっと世界一の犬さ」
王子様が黒くてツヤツヤした犬の背中を撫でながらいいました。
「あら、私の猫だってとてもかしこいのよ。ネズミをいつも捕まえてくれるもの。きっと世界一の猫よ」
王女様が負けじと言いました。
そして、膝の上の猫をなでようとしました。
けれども、猫は王女様の膝からストンと降りて塀のうえに登ってしまいました。
体を丸め欠伸をひとつ、ふぁあとしています。
王子様がそれを見てくすくす笑いました。
「ネズミぐらいじゃダメだよ。悪いやつを捕まえられなくちゃ」
それを聞いて王女様は、悲しくなりました。
「なによ。お兄様なんて嫌い」
王女様は頬を膨らませて、涙目でお城へと走っていきます。
「あ、おーい。まってよ。ごめんてば」
慌てて王子様は王女様を追いかけます。
お行儀よく座った犬と寝ている猫だけがその場に残されました。
「猫殿。起きているのか?貴殿は、今の話を聞いていたか?」
犬が塀を見上げながら猫に話しかけました。
再び欠伸をふわぁぁとしながら猫は片目を開きました。
「起きているともさ。というより、起こされたがね。こうキャンキャンと話しかけられちゃあ眠れるもんかね」
猫がとても面倒くさそうに答えます。
「貴殿の主君は泣いておられたぞ。追いかけて慰めるべきだろう」
「どうせ、あいつら明日には仲直りしてるよ。無駄な労力を使うことなんてないのさ」
犬は、かぶりを振りました。
「主君にあんな顔させたままでいいのか。さっきの話も......」
犬が言いかけた所で猫はストンと塀の反対側に降りました。
「猫殿‼︎まだ、話は終わっておらぬ‼︎」
猫を引き止めるように犬が吠えます。
「やれやれ。昼寝をするつもりだったのに、お前の話を聞いてたら夜になっちまう。静かな所に行かせて貰うよ」
猫はそう言うと犬の言葉を聞かずに行ってしまいました。
遠くでは王子様が犬を呼んでる声がします。
犬はひとつため息をつくと声のする方へ駆けだしました。