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春雨さんとエスカレーター
「この間子どもがエスカレーターを逆走して遊んでたわ」
「やりたい気持ちはわかりますけどね」
「あなたも子どもの頃やったクチね」
「誰だって一度はやりますって」
「誰もいなければ一億歩譲ってまだいいけど危ないのよ」
「人に迷惑がかかることはしちゃだめですね」
「でもあの手すりで平行棒してみたくなる気持ちはわかるわ」
「足を浮かせたくなりますよね」
「あなたそれもやったクチね」
「誰でも子どもの頃はやりますって」
「大怪我したら元も子もないのよ」
「いまはやりませんってさすがに」
「でもエスカレーターって不思議な魅力があるわよね」
「歩かずに進むってのがいいんでしょうねえ」
「自分を犠牲にしてまでわたしたちを運んでくれる慈愛の精神よね」
「そこまでか」
「エスなのにどちらかというとエムよね」
「ん?」
「エムカレーターって名付けたほうがいいんじゃないから」
「どこからつっこめばいいんだよこれ」




