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ISAO二巻SS ふわふわスフレパンケーキ

本日書籍2巻発売です。

記念SSの掲載を致します。

 王都の冒険者ギルドの食堂で食べたスイーツ。

「ふわふわスフレパンケーキ」王女様の幸せ。蕩ける愛情クリーム&木苺ソースを添えて


 これがめっちゃ美味かった。生地がふわっふわで、口の中に入れると舌の上で優しく溶けていく。わざわざ王都へ行かなくても食べられたらいいなと思い、レシピを探してみた。


 メニュー名から判断してプレイヤーメイドのレシピだと思ったから、クリエイトの仲間の伝手を辿って製作者を問い合わせてみた。そうしたら、とある調理系の生産クランに行き当たったわけだ。


「気に入ってくれたのは嬉しいけど、本当にあなたが調理するの?」


 そのクランは王都に拠点を構えていて、製菓を中心にレシピを開発している。それだけでなく、王都のNPC飲食店にレシピ提供をしたりメニューを考案したりと、飲食プロデュース的なプレイもしている気合いの入った人たちだった。


 だから当然、レシピは転売不可、店舗などでの提供も不可。私的利用に限る。さらに、直接会って話をした上でレシピを提供するかどうか決めると言われて、王都の生産ギルドで待ち合わせをしたわけだ。


 だけど、そこに現れたのが神官服を着たデカい男(俺)だったのが、かなり意外だったらしい。でもここは押しの一手。平凡だけど好青年風の見た目を生かし、早速交渉に入る。


「はい。職業柄、神殿で賄いをしていて、趣味でお菓子作りもしています。その証拠というわけではありませんが、手土産に自分で作った焼菓子を持ってきました」


 そう言って、お手製のバフ付き菓子を詰め合わせたバスケットを渡すと、彼女たちは興味深そうにチェックをし始めた。


 専門家に見せるのは恥ずかしい気もしたが、私的にレシピを使うだけだという点を強調したかったからね。


「へぇ。一般スキルでこんなに沢山の種類の属性バフをつけられるてことは、かなりスキルレベルが高いってことよね?」


「そうですね。【調理】はレベルMAXです。その他に職業的な生産スキルもあるので、その両方を使って作っています」


「カンスト? それは凄い。以前、聖属性のお菓子を神殿の物販所で買ったことがあるけど、ああいうのはプレイヤーが作っているの? それともNPC?」


「両方ですね。俺がホームにしているジルトレの大神殿では、プレイヤー産が多いと思います。それもお務めの一環なので」


「お務めで一般スキルがカンストするなんて、神殿ってよっぽどブラックなのねぇ」


 ……うん。それは否定できない。


「このお菓子も出来がいいし、うちのクランに勧誘したいくらい。でも、上級職の神官を引き抜きしたらNPCにめっちゃ恨まれそうだからやめておくわ」


 持参したお菓子を褒めてもらえて、レシピも譲ってもらった。レシピ通りに作れば、スキルで量産できるようになるはず。今は忙しいから無理だけど、転職クエストが一段落した後のお楽しみができた。



 *



 そして、ようやく戻ってきたウォータッド大神殿で、パンケーキ作りに取り掛かる。


 最初が肝心なので、いつものように厨房のおっちゃん(フランシスさん)に、手ほどきをお願いした。


「スフレパンケーキを失敗しないで作るには、メレンゲが肝心です」


 なぜかそこで胸を張るメレンゲ(妖精の方の)。いやいや、君のことじゃないでしょ。卵白を泡立てて作る方のメレンゲだってば。


「メレンゲが元気なく萎んでしまうと、スフレパンケーキも上手く膨らみません」


 脱力したようにフラフラと調理台に降りてきて、ヨヨヨとヘタるメレンゲ。女優か!


「コツはメレンゲに艶が出て、しっかりと角が立つまで泡立てることです」


 もしもーし? メレンゲが鹿みたいになってる。


 頭に何さしてるの? その角みたいなのをどこから出した。えっ? 香草(ハーブ)の茎? だから黄緑色なのか。ならいいのかな? 衛生的には。


「では、早速始めましょう」


 材料は……卵、砂糖、小麦粉、膨らし粉、牛乳。うん、ちゃんと全部揃ってる。


「まず卵を卵白と卵黄に分けます」


 これはやったことがあるから楽勝だ。メレンゲを泡立てるのも、マカロンを作ったときにしたことがある。でもここは、順番にレシピ通りにやってみることにした。


 卵黄に牛乳と振るった小麦粉と膨らし粉を合わせてよく混ぜ、生地を作っておく。それからメレンゲ作りだ。お湯を沸かしておくのも忘れずに。


「いいですね。そのままの強さで根気強く泡立てて下さい。途中で砂糖を数回に分けて加えます。角が立つ瞬間の見極めが大事です。そこは気をつけて」


 メレンゲの応援ダンスを横目に、メレンゲにしっかり角が立ったところで、次の工程に入る。なんかメレンゲだらけ。


「メレンゲを潰さないように、さっくりと全体を混ぜましょう」


 先ほど作った生地にメレンゲを混ぜ合わせる。メレンゲが飛び込みそうな格好をしているが、もちろんダイブなんてしたら生地がダメになるからNG。


 まさかしないよね? って状況だが、色妖精はいたずら好き設定だから、やりかねないところが恐い。メレンゲはそこでハウスだからね!


 よし! こんなものかな? あとは弱火で蓋をしながら蒸気でじっくり焼いていく。


「最後に蓋を開ける時は慎重に。急激に温度が変化するとパンケーキが萎んでしまいます」


 気を抜かずに、優しく丁寧に焼き上げたパンケーキ。うん、バッチリな仕上がりだ。事前に用意しておいたクリームやフルーツソースで彩よくトッピングすれば出来上がり。


 俺、メレンゲ、おっちゃん、それぞれの前にふわっふわのパンケーキを載せた皿がある。じゃあいくよ。


「いっただっきまーす!」


 うまっ! なんかもうめっちゃ幸せ!

2巻の売れ行きで続きが出せるかどうか決まるので、ご購入頂けたら大感謝です。

よろしくお願い致します。

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