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71 クォーチ歓楽街

 


 今日は、みんなでクォーチの街に遊びに来た。


 この街、これまで何度も来てるんだけど、いつも通り過ぎるだけだったから、どんなところかとても楽しみだ。


 *


 俺たちが今いるのは、街の中央にある円形広場。


 観光案内所の脇に設置されている、大きな街路マップを見ている。



「この、東西に走っているのが、『ホリゾンタル大通り』で、南北に走っている方が『バーティカル大通り』」


「ホテルと、それに併設されているカジノは、全てこの大通り沿いにあるのか。分かりやすいな」



 2本の大通りが、この中央円形広場で垂直に交差することにより、クォーチの街は4つのブロックに分けられている。


 そして、大通りの両脇には、様々な趣向を凝らした何棟ものホテルが立ち並んでいた。


 典型的なリゾートホテルもあれば、ピラミッド型だったり、童話に出てくるお城みたいだったりと、何かテーマを掲げたホテルも多くて、見ているだけでも楽しい気分になる。



「ほとんどのホテルに、カジノが併設されているんだったよな」


「ホテルによって雰囲気は違うが、どこのカジノでも気軽に遊べるって聞いたぞ」



 カジノには、各種カードゲームやルーレット、ダイス、スロットマシンなどの他に、ビリヤードや麻雀、ゲームセンターなど、リアルと同じ遊びが取り揃えられていて、クォーチ歓楽街専用の通貨、Q(クォーチ)通貨で遊ぶことができる。



 以前、ジオテイク川のエリア解放時にもらった、


 ・「歓楽の街クォーチ」リゾート施設利用券 1


 っていうのが、そのQ通貨の交換券だった。


 Q通貨は、この街のカジノ以外の遊戯施設でも使用できる共通通貨で、ゲーム内通貨であるGからQ通貨へは換金はできるが、その逆はできないようになっている。



「ユキムラの泊まるクォーチ神殿は、どのブロックにあるんだ?」


「海側の北東ブロックにあります。そこに大きなショッピングモールがあるんですが、その中の一画です」


「ずいぶん、カジュアルな場所にあるんだな。便利そうだが」



 北東ブロックには、ショッピングモールの他に、ショーハウスやダンスホール、クラブ、映画館に演芸場などが設置されている。


 低層の建物が多く、ところどころに休憩できる公園やカフェなどもあり、この街の中では、比較的落ち着いたエリアになっている。



「北西ブロックがアトラクションエリアか。リアルの遊園地をパワーアップした感じって書いてあるのを掲示板で見たけど、どんなアトラクションがあるんだ?」


「結構激しいみたいだぞ。リアルだったらあり得ないだろう軌道を描くジェットコースターとか、ブンブン振り回されて遠心力をいやというほど体感できる乗物とか、おっさんにはしんどそうな乗物ばかりだった」


「それはちょっと、遠慮したいな」


「俺は、レイルウェイパークっていうところだけ行ってみたいかな。地上・地中・空中のいろんな場所に線路が敷かれていて、好きなコースを選んで、機関車や電車を操縦して走らせることができるんだって」


「それは面白そうだな」


「俺はレース場がいい。サーキット場で遊びまくりたい」



 一方の山側。


 南東ブロックには、四輪、二輪、様々な車種の車に乗って遊べるサーキット場や自転車、ボート、馬などに乗って遊べる各種レース場がある。そして、南西ブロックには、闘技場。



「闘技場はどうする?」


「あんまり興味ないかな。参加する気はないし」


「そうだな。せっかく来たし、ちょっと覗いておけばいいかって感じかな」



 対人戦がメインの施設だから、みんな気乗りしないみたいだ。もちろん俺もだけど。ここだけは、ゲーム内のステータスそのままで遊べる仕様なので、見るだけならともかく参加する方は、戦闘職のために存在する遊戯施設と言っても過言ではない。



「じゃあ、今夜の宿を決めたら、順に回るとするか。カジノやショーハウスは夜時間帯に行くんだったよな。昼間はアトラクションかレース場となると、先にレイルウェイパークに行ってからレース場でいいか?」



 ということで、レイルウェイパークに移動した。



 地上・地中・空中に線路っていうから、網の目のように線路が敷かれているのかと思ったら全然違った。


「地上コース」は、そのコースの種類が非常にバラエティに富んでいた。


 ・自分で作成したジオラマをリアルサイズに変換した中を走れる「ジオラマコース」


 ・江戸時代みたいな街並でも、恐竜の跋扈する大地でも、好きな時代の風景を選んで、その中を走ることができる「時代巡りコース」


 ・近未来的な工場地帯や爆破・火災の中を走り抜ける「エキサイティングコース」


 ・美しい湖沼地帯や山岳地帯、大瀑布の裏側や海峡など、雄大な自然風景を楽しみながら走り抜ける「絶景コース」



 ……など、本当に様々だった。どれもやってみたくなるような魅力的なコースばかりだ。



 そして「空中コース」はというと、発射台のように地上から空へ向かって斜めに伸びる線路からスタートし、そのまま大気圏を突き抜けて宇宙空間へ乗り込む。煌めく星々を眺めながら縮小版太陽系の中を巡って旅をするという、非常に夢のあるロマンチックなコースだった。


 そして最後。


 俺とキョウカさんが一緒に乗ったのは、定員2人までの「地中コース」。


 トロッコみたいな車両に乗り、地中に張り巡らされたトンネル内の線路上を、障害物を避けながら、右に左に舵を切りながら走り抜けてゴールを目指すというものだ。



「次は?」


「右! …じゃなくて、やっぱり左!」


 進路を見てくれているキョウカさんの指示に従って、右に倒しかけた舵を、力いっぱい左へ戻す。


 うおっと。


「次は、また左!ちょっと線路が切れてるけど、きっと大丈夫!」


 左!


 ブワッと浮遊感に襲われたと思ったら、ガゴン! と着地…いや、着線路? の衝撃でトロッコが揺れた。


「よし! 行けたわね。次は、今度こそ右! 」


 どわっ!


 なにこの急カーブ。もの凄い遠心力が働き、身体が反対方向に引っ張られる。


「きゃっ! ええっと、次は、また左! 」



 *



 集合場所に戻ると、既にガイアスさんとジンさんが戻って来ていた。



「よう! 2人共、随分とヘロってるけどどうした? 地中でラブラブデートじゃなかったのか?」


「いや、その、なんか、走り切るのに精一杯で、すっごい疲れました」


「楽しかったけど、思った以上に緊張感溢れるというか、大変だったのよね。」


「俺は宇宙を旅して来たぜ。いやあ良かったよ。思わず『地球は青かった』とか言っちまったぜ」


「俺も快適。綺麗な景色を眺めながらのんびり旅をして来た」



 と、そこへ、



「よう! みんな早いな。エキサイティングコース、メッチャ楽しかったぜ。お勧め」



 って言いながら、トオルさんが戻って来た。



「いやいや。その言葉には騙されないぞ。お前の楽しいには絶対乗らないからな。俺が乗ったら緊急ログアウト間違いなしだ」


「本当ですって、マジ楽しいって。ところでアークは? まだ戻らないのか? あいつ、ジオラマコースに行ったんだろ?」


「さっきアークから、今日はしばらくここにいるから、自分を置いてサーキット場に行って構わないって連絡があった」


「ジオラマがよほど気に入ったのか?」


「すごく凝ったのを作っているみたいだ。あいつ結構凝り性なところがあるからな」


「そうか。俺も、もうちょいここにいてもいいけどな。ここに残りたければ残って、サーキット場に行きたいなら自由に行くってことでどうだ?」


「そうするか。みんなもそれでいいか?」



 ということで、その後は自由行動になった。


 俺とキョウカさん、ガイアスさんとジンさんは、「空中コース」や「絶景コース」、「時代巡りコース」の好きなところを回り、その後は、サーキット場へ移動して、ボートレースに参加して遊んだ。


 残りの2人も後ほど合流して、結局最後は全員で遊ぶことになった。戦績はイマイチだったけど、小型ボートを操って水上を高速で滑走するのは、とても爽快で楽しかった。



 *




 一旦ログアウトして、夜時間帯に再ログイン。


 最初の予定は、「ひと昔前の世界的に有名なキャバレーのショーを再現」という触れ込みのディナーショーだった。


 いや、すごい。


 衣装が、ちょっと目のやり場に困るような露出度で、上半身なんかほとんど何も着ていない。ポロンポロンって出ちゃってる。


 なのに背中には凄いボリュームのフサフサした羽根の束をしょっていて頭にもよくあれで踊れるなっていうくらいの羽根飾り。わずかにダンサーの体表を覆ったラインストーンやスパンコールが、舞台照明を浴びてキラキラしてる。


 最初は、そういった衣装にドギマギしてたんだけど、その内、そんなことも忘れて舞台に見入っていた。


 ほぼ半裸な姿で踊ってたりするんだけど、なぜかいやらしい感じじゃないんだ。


 そのうち、イケメンダンサーなんかも出てきて、男女共に踊りはキレッキレ。


 フリフリの何重にも布が重なったスカートに衣装を変えてのラインダンスとかも、足の上がる高さや、角度、リズムの全てがきっちり揃っていて、凄い迫力があった。


 華やかな衣装に華麗なパフォーマンス。


 こんな世界もあるんだね。


 ダンサーの露出度が高いので、女性の反応はどうかなとちょっと心配になったが、キョウカさんは、ダンサーの衣装にかなり興味があるらしく、ダンサーの動きに合わせて効果的に舞う衣装のデザインに、すっかり感心しているようだった。



 *



 そして、やってきました。カジノです。歓楽街に来て、これをしないという選択肢はないよね。


 どこにしようか迷ったけど、みんなと相談して、とりあえず、この街で一番大きいっていうヴェネチア風リゾートホテルのカジノに来てみた。


 いやもうびっくり。


 カジノ施設内は、ものすごく広い上に内装がゴージャス。目に眩いくらいだ。


 まず中央に2階ぶち抜きの広い吹き抜けのホールがある。


 周囲を取り巻く柱は、全てキンキラキンのゴールド。天井には発色の鮮やかなフレスコ画が、美しい男女や風景、妖精たちが飛び交う花園などの不思議な光景を描き出している。


 床は、色大理石を組み合わせた花模様のタイルが全面に貼られていて、照明を照り返してピカピカだ。


 このホールからは、放射場に四方に通路が伸びていて、ホールの周りに配置されている各プレイエリアに移動できるんだけど、そのプレイエリアがまたとにかく広い。


 何卓あるか分からないくらい、はるか遠くまで埋め尽くすように置かれているゲームテーブル。


 スロットコーナーでは、ここでいつまでも隠れん坊ができますよっていうくらい、林のようにスロットマシンが据えられている。


 こんなに広さに見合うほど、まだプレイヤー数が増えていないと思うんだけど。これから増えるのを見込んでなのかな?


 でも、テーブルでプレイしている人をよく観察すると、NPCの客も相当混ざっていそうだ。プレイヤー以外にNPCとも一緒に遊べるのか。


 カードゲームはよく分からないので、ルーレットをちょっとやってみたけど、これが当たらない。


 他のみんなは、ボチボチ当たっているみたいで、いい感じ。


 みんなの邪魔はしたくない。どうしようかなって考えていたら、トオルさんがスロットコーナーに移動するっていうので、俺も一緒について行くことにした。


  Qコインを入れ、バーを倒してスロットスタート。


 そして、ストップボタンをポチ・ポチ・ポチ。


 むむむ。ハズレだ。


 もう一度。


 ポチ・ポチ・ポチ。


 ハズレ。


 うーん。何回かやってみたけど、今日はついてないみたいだ。俺、ギャンブル運がないのかも。


 すると、近くでスロットを回していたトオルさんが、



「キターーーーーーー!」



 見ると、見事に777。


 ジャラジャラジャラジャラって、凄い数のQコインが次々と出てくる。



「ユキムラ! コインを入れる箱を持ってきてくれ!」



 これは大変と、急いで持っていくと、やっとコインの排出が終わったところだった。



「度々使って悪いけど、コインを箱に入れるのを手伝ってくれるか?」


「いいですよ。それにしても凄いですね。一体何枚あるんだろう?」


「分からん。でもこれで遊ぶ軍資金ができたな。みんなにも配布するから、今日は思いっきり遊ぼうぜ!」



 そうして、トオルさんが気前よくくれた箱入りQコインで、何をしようかなって考えてたら、



「ユキムラ、ゲーセン行かないか?」



 ってアークに誘われたので、今度はゲームコーナーに移動。


 そこで、対戦ダンスゲームというのをやって、アークにボロ負けをした。


 マス目状のパネルが敷かれた専用ステージに乗って遊ぶゲームで、宙にもたくさんの透明タッチパネルが浮かんでいる。


 曲に合わせて光ったパネルをタッチしたり踏んだり、時に見本の映像に合わせて決めポーズをとったりするんだけど、足のステップに気を取られると、手の振りがおろそかになり、手足を両方とも意識し過ぎると、リズムが乱れる。



「アーク、メチャメチャ上手くない?」


「まあね。ダンスゲーはしょっちゅう、リアルでやってるから。でもユキムラも初めてにしてはいい動きをしてたと思うよ」


「マジ? 」


「うん。反射神経がいいんだね。もうちょっとリズムを意識したら、すぐスコアが上がると思うけど」



 アークはお世辞を言わないのを知ってるから、これはちょっと嬉しい。



「だから、もうちょっと付き合ってよ。俺、ユニットで踊るダンスがしたくてさ。でも、あのおっさんたちじゃ無理じゃん?」



 あれ?


 俺が買われたのは若さ?


 まいっか。結構楽しいし、ちょっと乗せられてやってみるか。



「わかった。この際、すっごく上手くなってやる!」


「そうこなくっちゃ!」



 その後、何回かやって、だいぶリズムに合わせられるようになってきた。


 そして、そこにキョウカさんが乱入。キョウカさんも、こういう身体を使うゲームが好きなんだそうだ。


 その後は、3人でメチャクチャ踊った。


 ……もう揺れる揺れる。あまりの迫力に、気になって目が離せない。


 何がって? それはもうキョウカさんの素晴らしいアレです。



「すげえな。俺、きょぬーには興味ないけど、さすがにあれは気になる」


「俺は興味があり過ぎて、目が……目がどうしても引き寄せられてしまう」


 こんな風に、ひそひそと男同士で話していたのは内緒だ。


 対戦以外にも、ユニットで踊れるマルチプルステージに移動して、ユニットダンスで奮闘したり、球状の重力軽減ドームに入って遊ぶエアリアルダンスで遊んだり、それからとにかく踊り倒した。


 ログアウトしても、頭に音楽が流れてたけど、今日は本当に楽しかったな。


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