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50 シークレットクエスト② [遺跡・ユグドラシル]

 



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 さて、残る採取物は3つ。


  ➕ヒソプの朝露 →古代草・遺跡

  ➕神銀の林檎[落果実]→霊峰の頂き

  ➕ウルズの泉水 →ユグドラシルの根の直下


 ・ヒソプはジルトレの東にある古代遺跡


 ・林檎はおそらく霊峰ミトラス


 ・泉水は北の大森林


 霊峰は遠過ぎるから最後にしよう。泉水か朝露か、どっちが先か……。



 迷ったが、古代遺跡を先にした。


 朝露っていうくらいだから、早朝にしか採れないだろう。

 連泊になるかもしれないが、キャンプ用品は揃っているし、いざとなれば近くの獣人の集落に寄ればいい。聖水瓶も沢山補充した。



 よしっ!出発だ。



 寝静まる牛の群れを眺めながらまだ暗い高原を横断する。

 真東に向かうと獣人の集落があるが、遺跡があるのはやや北寄りだ。



 *

 *

 *



 初めてきた古代遺跡は、とても神秘的な感じがした。



 暁闇に浮かぶ白い巨石の群れ。


 最周辺部から中央に向かって、同心円状に配置されたストーンサークル。

 遺跡の最も内側には、門の形をした巨大な組石が立ち並び、中心部には祭壇と思われる一枚岩の巨岩が据えられている。


 祭壇?の石に一礼をしてから、古代草ヒソプの捜索を始めた。まだ夜は空けていないが、【フィールド鑑定】を使えば大丈夫だ。拠点結界も忘れずに掛けておく。



 ……ないな。



 珍しいと書いてはあったが、ぐるっと見渡した限りでは見つからない。陽が昇るまではまだ時間があるし、根気よく探そう。



 *



 東の空が明るくなってきた。



 地平線が、ゆるりと青く染まってきたかと思うと、透き通ったオレンジ色の光がふわりと浮き上がり、その光に照らされて雲が輝き始める。



 そして……、空全体が燃えるような赤一色に染まった。目が離せない。



 空は、次第に鴾色に変化しながら、紫とオレンジのグラデーションを描く。ため息が出そうなくらい綺麗だ。


 おっと!


 いかん。


 見惚れている場合じゃなかった。

 先ほど見つけておいたポイントは3箇所。まずは目の前のここからだ。



 朝露の採取は無事終わった。


 一つの株から5-6滴採れたので、全部で17滴。うん、上出来だ。

 さて、すっかり夜も明けたし、獣人の集落をチェックしたら牛でも狩りながら帰りますか。




 *-----*-----*-----*-----*-----*-----*




 そして、日が変わって、本日はエルフの里に来ている。もちろん、「ウルズの泉水」を採取するためだ。


 ……実はここも初めてきた。


 凄い賑わいだ。右を見ても左を見ても、男も女も耳が長い美男美女。エルフエルフエルフだ。


 どうやら、第四陣にはエルフが多いみたいだな。ここはエルフ族のスタート地点だから、まだ拠点にしているプレイヤーが残っているのだろう。



 第一陣でたった3人しかいなかったエルフは、第二陣で50人弱に増え、情報サイトでキャラメイク時のビルドが公開された第三陣以降、その数を急激に伸ばした。


 変わったビルドだったはずだが、元々ゲーマーに人気の種族だしな。


 俺はあんまり好きじゃないが。


 だってなんとなく意地悪そう。あくまでイメージで、偏見かもしれないけど。それに、金髪碧眼、ロリっぽくてスレンダーな人が多いし。そういった意味でも興味ない(俺はやっぱりボン・キュッ・ボン派だ)。



 そして、ユグドラシルへの地図を求めて冒険者ギルドの資料室へ。もうこういったのも慣れてきたな。


 ……わりと近いんだな。


 エルフの里を出て北東に進んだ、大森林のほぼ中央付近だ。他の図鑑類もひと通り見終わり、ギルドホールに降りた。食堂くらいは見ていくか。



 ・ローストコーンとアボカド、紫オニオンのサラダ


 ・エシャロットとグリーンビーンのサラダ


 ・赤大根・黄色人参とルッコラのサラダ。森の木の実を添えて


 ・フリル茸とリボン茸のオリーブ油炒め


 ・新鮮な川魚の日替わりプレート。ディル風味。



 えっ?普通じゃん。


 サラダばっかりだけど普通のメニュー。凄いな普通だなんて。エルフの里には職業料理人がいないってことかもしれないけど。


 しかし、いつの間にか食材が増えたな。獣人の集落でも新しい食材が目についたが、ここにもいろいろありそうだ。後で買いに行こう。


 さて、何を頼もうか。……と、俺がメニューを眺めていると、



「あれ?珍しい人、発見!ユキムラちゃんじゃん。久しぶり!」



 アカギさんだ。バジリスク討伐以来だな。あの時、結構仲良くなったけど、その後俺が施療院の仕事で忙しくなって、それっきりだった。



「本当だ。俺たちついてるんじゃないか?このタイミングでユキムラ君に出会うなんて」



 ヘイハチロウさんもいた。このタイミングって何だ?



「ご無沙汰してます。お二人でパーティを組まれたんですか?」


「そうなんだよ。二人共通の目的があるんで、臨時パーティ中。ユキムラちゃんは一人?」


「はい。個人的なクエストで来ているので、一人です」


「それは、ますますラッキー!ちょっと食事しながら相談していいかな?」



 *



 話の内容はこうだった。


 アカギさん、ヘイハチロウさんは、二人とも槍士だ。正確に言うと、騎士の中級職である「小隊長」で槍使い。上級職への転職を控えている。


 そのまま正規ルートで進むと、中隊長になるわけだが、先日の大型アップデートで実装された「竜の谷」に、「竜騎士」への足がかりがあることが分かった。


 ところが、「竜騎士」への転職に必須の【騎竜】スキル取得コースを受講するのに際し、受講条件であるSスキルが足りない。


 でも、空きスキル枠もスキル券も、どちらも余ってないってことで困ってしまったわけだ。



「それで、S/Jスキル選択券を貰えそうなイベントを探して、ここに来たってわけだ。だからお願い」



 お願い?って、拝まないで下さいな。



「この通りだ。協力して欲しい」


「うわっ。頭上げて下さい。よく分かりませんが、イベントに参加するお二人を、支援すればいいんですか?」


「そう。そうなんだ。ユキムラちゃんが力を貸してくれれば今度こそ倒せる気がする」



 今度こそ?



「討伐?いったい何が相手なんですか?そして何回目の挑戦になるんでしょうか」



「『ニーズヘッグ』。ユグドラシルの『フヴェルゲルミルの泉』に棲むドラゴンだ。次で俺たちは2回目、通算5回目になる」



 *

 *

 *



 お礼の先払いということで、2人が「ウルズの泉」に付いてきてくれた。


 戦闘職がいると非常に楽だ。2人とも強いし。

 何の問題もなくウルズの泉に着き、泉水を確保した。念のためこれも多めに汲んでおく。



 ◆連続シークレットクエスト『**のレシピ』

 進行状況 : クエスト① 未達成 4/5

 クエスト① レシピの材料を全て集めよう。

  ➕楽園の花蜜 [クリア!]

  ➕ヒソプの朝露 [クリア!]

  ➕神銀の林檎[落果実]

  ➕ウルズの泉水 [クリア!]

  ➕神餐水 [クリア!]

  ➕採取にあたっての諸注意



 よし!クリアになってる。これでOKだ。



「ありがとうございます。これで大丈夫です」


「いや。この程度のお礼で申し訳ない。本当にいいのか?」


「はい。レイドに成功すれば俺も報酬が貰えるし、大丈夫です」


「成功すれば……なんだけどな。これだけ強敵なら、報酬は期待できると思うが」



 2人が欲しがっているS/Jスキル選択券。俺も貰えたらかなり嬉しい。



「スキル選択券があるといいですね」


「多分ある。無かったら運営に文句を言ってやる」


「きっとあるさ。そういうところは、ISAOの運営は抜かりないからな」


「今回は前線組も参加するんですよね」


「ああ。上級職パーティが2組来てくれることになった。参加上限人数が50人。後方支援も含めて、6人パーティが6組、5人パーティが1組。残り9人の枠に俺たちが入っているんだが……」



 言葉を濁すなんて。何か困ってるんだろうか?



「何か問題が?」


「ある。上級職パーティの参加を聞いて、急遽方針を変えて参加を申し込んできた6人パーティがいてな」


「そう。俺たち、2人パーティだろ?あと、3人パーティが1組に、俺たちと同じ槍士のソロプレイヤーが2人いて、合わせて7人。その内の誰かを弾いて捩じ込もうって交渉し始めたわけだ」


「割り込みってことですよね。そういうのってありなんですか?」


「リーダーはちゃんとした人だから断っているが、バラバラのプレイヤーを集めるより、連携に慣れたパーティを入れた方がいいんじゃないかと考える参加者もいるんだ」


「でも、ユキムラ君が来てくれることになったからな。これが決定打になる。俺たちの参加が覆ることは、まずないだろう」





7000字を越えたのと、話の節目なので、2つに分割しました。昼に次話更新予定です。

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