第8話 策謀の宇宙
そのころ、地球の衛星軌道上にある天使の秘密基地、ヴァルハラでは消滅した東京を見て笑っていた。
「あははは・・・一瞬だ!もろいものだね。人間は。」
「ミカエル様・・・」
高笑いをするミカエルの背後でラファエルはミカエルに対して恐れを抱いていた。残酷な笑みを浮かべながら、数千万人を一瞬で殺戮する存在。自分たちは世界を浄化するためにその力を使っているのではないのか。ラファエルの中にミカエルに対する不信と疑念が生まれ始めていた。
そんなラファエルの感情を読んだのか。少年は振り向いてラファエルに言った。
「僕が怖いかい?ラファエル。」
図星をつかれたラファエルは一瞬返事をためらった。
「・・・いいえ・・・」
「そう・・・」
少年は残酷な笑みを絶やさずに恐ろしいまでの殺気をラファエルに放った。人間の持つ根源的な恐怖をラファエルを感じていた。心臓は高鳴り、白く美しい顔には冷や汗が滴り落ちた。ミカエルが一歩近づくたび、ラファエルは無意識のうちに下がった。
「それでいい。ラファエル。君は、君だけは僕を恐れてくれていて欲しい。・・・永遠に・・・」
ラファエルは主の言葉を聞くと部屋を辞した。ラファエルは廊下で出撃から戻ったガブリエルと出会った。ロングヘアに眼帯の美女はいささか物騒な形容であるがガブリエルはそれ以上に周囲を落ち着かせる不思議な雰囲気を持った女性だった。
「出撃、ご苦労だった。残酷なことを君にはさせてしまった。」
「いえ。これも計画のため、世界のためですから。」
ガブリエルの声には迷いがなかった。ガブリエルはラファエルの表情を見て、微笑んだ。
「優しいのですね。」
「そうなのだろうか。私にはわからない。」
ガブリエルの唐突な一言にラファエルは返した。
「はい。私達の計画のために犠牲になった人々のことを思っていらっしゃるのですから。」
「そうか。」
ガブリエルはラファエルに頷くと自分の部屋へと戻っていった。
ガブリエルと別れたラファエルは、窓から見える地球を見た。未だ美しさを保っている青い海が、ラファエルの目に映っていた。
東京消滅の翌朝、天使による初攻撃から四日目、天使ラギエルと天使ラグエルは太平洋上空で静止していた。眼下には島も何もなく、ただ、青い海だけが広がっていた。
「用意はいい?ラグエル。」
コクピットのラギエルはラグエルに通信を開いた。ラグエルはコクピットのモニターごしにうなづいた。
「よぉし!計画の第二段階!発動だ!!」