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第4話 発進!たじからお

音速を遥かに超えた速度で、46cm主砲弾が天使に向けて飛んでいった。発射から数秒後、ひと際大きな命中音が太平洋上空に響き渡った。


すさのおが発射した09式撤甲焼夷弾は対オロチ用に開発された最新エレクトロニクスの固まりと呼ぶべき主砲弾だった。主砲弾の基部には誘導装置が組み込まれ、正確に目標を打ち抜くだけでなく、硬化チタン弾芯を用いることで、貫通性を高めた主砲弾だった。さらに命中すればノイマン効果による熱噴流によって、敵装甲の内部を溶かす高熱を発するガスを噴射する威力抜群の砲弾だった。


「やったか!!?」


千歳基地所属の鋭光隊長、鷹野三佐は爆煙に覆われた天使を見た。


『に、人間の分際で・・・人間の分際でぇぇぇ!!!!』


すさのおの主砲弾と鋭光のミサイルとのコンボは確かに、天使メタトロンにダメージを与えた。しかし、それは小さな小さな傷に過ぎなかった。

見下していた人間相手に自慢の機体に傷をつけられたメタトロンは、激昂した。


『よくも・・・よくも僕のメタトロンを!!!』


メタトロンは辺り構わずに高出力ビームを発射した。それはビームの乱射というよりも、エネルギーの爆発と言った方が正しかった。鋭光隊24機は直ちに回避しようとしたが、間に合わず、10機が攻撃に巻き込まれ、一瞬のうちに消滅した。巻き込まれたのは鋭光だけではない。天使に悟られないように幾分距離をとっていたすさのおでさえも、ビームに巻き込まれかけた。


「急速潜航!!いそげ!!」


メタトロンがビームを乱射し始めたとき、艦長の末永は即決した。


「しかし、それでは主砲が水没します!しばらくは撃てなく・・・」


「構わん!!!」


末永は副長の進言を一喝して退けた。すさのおは潜水可能な戦艦であり、船底に電磁誘導推進潜水艦であるつくよみをマウントしていることから、最高で80ノットまで出せる。ビームが減衰する水中深く潜水し、海域を離れる以外に天使から逃れる術はなかったのである。しかし、この手にも問題はあった。主砲を収納しないまま潜航すると、主砲が撃てなくなるばかりか、水圧で主砲塔に浸水する可能性があった。しかし、このときの末永は攻撃力の低下より、艦の生存を最優先した。


「・・・」


末永は天使を仕留めきれなかった悔しさと、敵から逃れる自分への怒りで無言のうちに拳を握りしめた。すさのおは主砲を収納しながら、海中深くに没した。


『はぁはぁ・・・』


メタトロンが攻撃を終えたとき、周囲には敵はいなかった。そのことごとくが破壊されたか、退却したあとだった。誰もいない空と海を目にして、メタトロンは笑い出した。


「はははははは!!そうだよ!僕は天使なんだ!!一番強いんだよ!!だれも僕を倒せやしないんだ。」


メタトロンはそういうと東京に向けて進路を取った。はるかメタトロンの遥か上空で3機の影電が張り付いていた。ステルス性能に特化した機体でもある影電は天使のセンサーにも引っかかっていないようだった。


「司令。天使が再び動き出しました。」


市ヶ谷司令部のオペレーターが山根に報告した。


「まいったな・・・まだ防衛線がはれていないぞ。」


山根は頭をかいた。天使発見から一時間も経っていない。このような短時間で部隊を展開させるのは不可能だった。メタトロンの目標は東京にあることは分かっていたので、山根は霞ヶ浦で天使を迎え撃つことに決めた。


「たじからお。出られるか?」


山根は筑波に連絡を取った。


「応よ!!任せな!!」


たじからおのパイロットである沼田二佐が答えた。


「たじからおは直ちに発進。目標のコースと速度を算出すると、霞ヶ浦で接敵するはずだ。撃破しろ。いいか。たじからおは俺たちの切り札だ。くれぐれも大事に扱えよ。」


山根は防衛大以来の旧友に言った。


「任せろって。やいのやいの言うなよ。くれぐれも大事に戦ってやるよ。」


「それが一番信用出来ないんだが・・・」


「あぁ!?何か言ったか!!?」


「生きて帰って来いって言ったんだよ!たじからお、発進!!」


山根はたじからおに発進命令を出した。山根の命令一下、筑波ではたじからおの発進シーケンスが開始された。たじからおを拘束していたクレーンなどがはずれ、天井のシャッターが一つずつ開き始めた。格納庫の床では、防火板が競り上がり、ロケットの噴射に備えていた。


「たじからお。いってくるぜ!!」


沼田はそう言うと、たじからお背面のブースターを点火した。爆音が轟き、たじからおの巨体が宙に浮かび、舞い上がっていった。

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