第28話 ミカエルの光
「総仕上げだ!全員で破片を粉々にしろ!!」
山根は残った戦力のすべてを破片の破壊を投入した。
かぐづちもちはやもミサイル以外のすべての兵器を解放して、破片を粉々にしていった。
崩壊するヴァルハラの中でミカエルは疾走した。完全な計画だった。あと少しで人類は絶滅する。絶滅するはずだった。なのに今、ヴァルハラは崩壊し、その破片は粉々に砕かれている。
計画が完全に潰えたことをミカエルは知った。
崩壊するヴァルハラから脱出したミカエルは月を見た。計画をつぶした元凶、許されざる存在がそこにはあった。ミカエルは生まれて初めてかもしれない憎悪のまなざしを月に向けた。だが、天使ミカエルの力をもってしても、月の敵は倒せない。
ミカエルは眼下の敵達を見た。破片を砕くのに夢中で、自分のことには気づいていない。奴らさえ倒せば、人類滅亡は容易い。ミカエルは残忍な笑みを浮かべた。
ミカエルはかぐづちに狙いを定めると機体を翻し、高速で突進した。
ミカエルは七大天使のなかでも最強の機体。ガブリエルを倒した敵とはいえ、たやすく倒せる。しかもまだ自分にはきづいていない。いや対応出来ないのだ。どんどん近づいているのに破片の破壊に夢中だ。だが、待てよ。近づいているのに、なぜ、破片の攻撃を続けている?まるで、ミカエルがいないかのように・・・ミカエルは数秒で思考を巡らせると一つの結論に達した。
「罠か!!?」
気づいたときには遅かった。七本のワルキューレがミカエルの五体を貫き、その自由を奪ったのである。
「くそ!」
ワルキューレはミカエルをとらえると、パワーを全開にして地球の重力圏を離れていった。
「放せ!放せぇ!!!」
ミカエルの視線の先には、ヴァルハラを破壊した巨大戦艦の姿があった。ミカエルは自分の運命を悟った。
「くそ!・・・くそぉぉぉぉ!!!」
すめらぎが一瞬煌めいた。すめらぎのエネルギービームはミカエルを飲み込み、原子の塵に還していった。
宇宙の片隅で人類の勝利を告げる光が瞬いた。