第23話 戦闘開始!
3日後、まほろばのコアモジュールは月の裏側にいた。地球から常に見えることのない月の陰でM機関は最大最強の奥の手を完成させていた。名をすめらぎ。まほろば級を遥かに超える超巨大宇宙戦艦だった。平面から見ると剣のようなシルエットを持つ艦の中心にまほろばはたどりついた。すめらぎの中心がまほろばを受け入れるように開くと、まほろばはゆっくりとすめらぎの本体にドッキングした。
「コアモジュール、ドッキング完了。各部接続開始。」
「主機球形直列S機関との同調接続に入ります。」
「火器管制システム接続開始。」
オペレーターが次々とすめらぎとのドッキング作業を開始した。めまぐるしく変わるモニターの隙間から見える地球を見て、昇は山根達を案じた。すめらぎが攻撃可能になるまで2時間、まほろば級2隻をもってしても、天使達を相手に苦戦は免れない。昇は今は仲間を信じるしかなかった。
地球衛星軌道上、人類は持てる戦力のすべてを投入していた。M機関はまほろば級万能戦艦2隻、零式桜花III型宇宙戦闘機仕様「雷閃」100機、アメリカ側はX−40宇宙往還戦闘機100機、スウェーデンからは万能飛行戦艦ドラケン。そうそうたる戦力だった。
山根はまほろば級2番艦かぐづちに座乗すると陣頭で指揮をとった。
捕捉不可能だったヴァルハラに初めて人間が攻勢をかけて来たのである。ラファエルは驚いた。
「馬鹿な・・・奴ら、どうして・・・」
「ガブリエルの動きをトレースしたんだね。ふふ。大した奴らだ。」
その答えをミカエルは知っていた。ミカエルは何事もなかったような口ぶりで言った。
「私が出ます。ミカエル様は攻撃を続行なさ・・・」
「差し出がましいぞ。ラファエル。君は僕に命令するのかい?」
ラファエルが主を慮って言ったことが逆に主を怒らせる結果になった。ラファエルはミカエルに非礼を謝った。
「いいさ。考えていたことは同じだからね。目の前にいる邪魔者を排除して来ておくれ。」
ミカエルはラファエルに出撃を命じた。
数分後、ヴァルハラから姿を現した天使を見た山根は攻撃開始を宣言した。
「まほろば級とドラケンで天使の相手をする。宇宙戦闘機隊は敵性構造物を破壊せよ。」
人類と天使の最後の戦いが始まった。