第21話 よみがえる友情
「ニューヨークが消滅!?」
山根がオペレーターに問いただした。
「それだけではありません。ほぼ同時に、ボストン、フィラデルフィア、ボルチモア、ワシントン。他アメリカの主要都市が消滅しました。」
映像には燃えるものもなく、ただのクレーターと化した都市の名残があった。
「司令、ロンドン、リバプール。イギリスの主要都市が消滅したとの情報が!」
「ヨーロッパの各都市も攻撃を受けています!」
山根は戦慄した。
天使の攻撃のペースが早すぎる。そして、世界には衛星軌道上にあるヴァルハラを攻撃出来る武器も攻撃を仕掛けるだけの兵力もない。
何も出来ずに滅びの時を待つしかないのか。山根は歯ぎしりした。
「手はない訳じゃないぞ。山根。」
整備班長の米沢から突如通信が入った。
「改造した8式自走砲だ。こいつなら衛星軌道上の敵にも届くはずだ。」
米沢の後ろには1年前に大破した8式自走砲の生まれ変わった姿があった。
「司令官。敷島昇と名乗る者から通信が入っています。」
オペレーターが山根に報告した。山根は懐かしいその名前を聞き、すぐに回線を開いた。
「こちらはまほろば艦長、敷島昇です。白い戦艦と言えば、わかるでしょう。山根・・・久しぶりだな。」
山根は面食らった。10年前に死んだはずの親友が元気に話している。幽霊でも見ているかのような感覚に襲われた。昇はそんな山根に構わずに話し続けた。
「山根。俺たちは秘密機関として戦ってきた。だが、天使の攻撃を前に俺たちだけでは戦えない。お前達、いや、世界の助けが必要なんだ。」
昇は話した。天使はあと2体。攻撃準備が整うまで3日はかかる。それまで天使の攻撃を防がねばならないと。
「だがこちらには天使に攻撃を仕掛ける武器も、防ぐ武器もないんだ。」
山根は昇に言った。
「そこは俺たちがなんとかしよう。この座標に来てくれ。それから、お前に天使撃滅作戦の立案と指揮を頼みたい。世界中でお前以外にこの作戦を委ねられる者はいない。頼む。」
昇は防大以来の親友に頼んだ。
「受けてやれ。山根。俺も、お前以外はこの作戦の指揮が出来る奴はいないと思うぜ。」
米沢も昇に同意した。
「分かった。やらせてもらう。」
山根は力強く頷いた。昇と米沢は微笑むと通信を切った。