第19話 その名はヴァルハラ
「敵の基地が分かった!?」
特殊戦術研究旅団所属の最新鋭戦艦すさのおで司令官の山根は言った。
「はい。三体目の天使をRF-4EJが追尾した映像です。」
特殊戦術研究旅団戦略研究部の赤石三佐が報告した。映像にはかぐづちによってライフルを破壊され、上空に退避するガブリエルが映し出されていた。
「この上昇角と映像を解析した結果、衛星軌道上に大きな建造物の存在が確認されました。」
RF-4EJのカメラ映像にはうっすらとだがあまりに巨大な構造物の姿があった。
「だが、衛星軌道上にある物体だぞ。どうやって攻撃するかが問題だ。」
山根は頭を抱えた。攻撃のオプションがない。場所が分かっていても、攻撃は不可能に近かった。
「・・・待てよ。たしか開発中の宇宙往還機があったはずだ。小森博士に連絡を取ってくれ。」
山根は直ちに部下に連絡を取らせた。
「山根君。東京では大変だったな。」
小森はテレビ電話で簡単な挨拶を交わすと、本題を切り出した。
「震電II。完成も初飛行も済んでいるが、たった一機しかないぞ。今、映像を見たが、あの大きさの物体が無防備だとは思えない。2,000機の戦闘機が天使を前に全滅したのを知らない訳ではあるまい?」
「そうですね。」
大気圏内なら、まだ十分に戦力はある。いくらでも戦い様はある。だが、宇宙はそうはいかない。今、特殊戦術研究旅団にも、世界にも宇宙を往還出来る戦闘機は存在しない。作戦は暗礁に乗り上げた。