第17話 かぐづち対ガブリエル
「艦長!ご無事ですか?」
まほろばの副長から、かぐづちの艦長に昇進した真田誠が昇に回線を開いた。
「手ひどくやられたが、なんとか大丈夫だ。」
昇は誠に無事を伝えるとまほろばを戦場から下がらせた。
「艦長。あとはかぐづちにお任せください。」
かぐづちは天使とまほろばの間に位置どると即座に攻撃態勢をとった。
「橘花。全艦砲雷撃戦用意。目標、前方の天使。」
モニターに桜花そっくりの十二単を着た少女が映し出された。かぐづちの管制コンピュータ橘花である。まほろばと異なり、かぐづちは砲雷撃戦に特化した重武装艦である。そのため火器管制は非常にデリケートでM機関とは独立したコンピュータシステムが必要だった。それが橘花である。
橘花の導入により、かぐづちは驚くほどの省力化を成し遂げていた。火器制御、索敵のための人員を必要としなかったことで、まほろばの3分の2までクルーの数を減らすことが出来た。
「了解。主砲51cm陽電子砲。放射性物質除去フィールド形成開始。」
かぐづちの主砲が天使に向けられた。かぐづちの主砲もまたまほろば同様、三種類の選択が可能だったが、その砲力は段違いだった。主砲塔は6連装主砲塔が5基、30門。まほろばの三連裝3基9門に対して、実に3倍以上の攻撃力を有していた。
また、その砲塔の異形さは見るものを圧倒した。三連装の主砲が入れ違いに上下重なっており、敵にその禍々しい牙を向けていた。
「撃てぇ!!!」
誠の号令とともに凄まじいエネルギーの奔流が天使ガブリエルに向かって放たれた。
ガブリエルはかわそうとせず、もう一度ライフルを発射した。
莫大なエネルギー同士がぶつかり合い、スパークした。両者の攻撃の威力はほぼ互角だった。天使ガブリエルは素早く身を翻すとかぐづちの真上に飛び出した。
「艦長!天使直上!!」
誠が上を見たとき、ガブリエルはすでに攻撃態勢に入っていた。
「対空レーザー照射!」
200を超える発射口から、レーザービームが照射された。まほろばのように緩やかな曲線を描きながら、レーザーはガブリエルに向かっていった。
「くっ!!」
すでに発射態勢にあったガブリエルは敵の思わぬ反撃に対応が一歩遅れた。七大天使一の軽量を誇るガブリエルはスラスターの出力を全開にして回避することは成功したが、ライフルだけはレーザーに捕まり、破壊された。ガブリエルは右腰にマウントされたハンドガンを手に構えた。
「もはやそちらには攻撃オプションはない。降伏しろ。」
誠はガブリエルに呼びかけた。
「いいえ。私はあなたたちなどには屈しません。この世界の浄化を成し遂げるために。私達は決して屈服はいたしません。」
そう言うと、ガブリエルはハンドガンのトリガーを引いた。三連射のあと、周囲は煙に覆われた。