第16話 まほろば最後のとき
最悪な状況だった。二体の天使を倒したのもつかの間、東京を消滅させた天使、ガブリエルがまほろばの前に現れた。しかし、もはやまほろばには天使と戦う力は残されていなかった。
「主砲選択。51cmレールガン。速射で片をつける。」
昇は現状唯一天使にダメージを与えられる兵器を選択した。唯一使用可能だったブリッジに近い第二砲塔の砲身がすぐに変わった。
「撃て!!」
準備が整うと、昇はすぐに発射を命じた。発射弾数は毎秒10発。100発近い砲弾がガブリエルに向かって放たれた。ガブリエルはまほろばの最後の攻撃にも慌てる様子はなく、緩やかに、それでいて、決して遅くはない動きでライフルを構えると、高出力ビームを発射した。
ビームは海を先、砲弾を蒸発させながらまほろばに向かって行った。
「回避ぃ!!!」
昇はすぐさままほろばを避けさせたが、左舷が言うことを聞かないまほろばの動きは遅く、紙一重で左に避けたに過ぎなかった。それは単に直撃を避けたというだけであって、まほろばはさらに甚大な被害を受けた。
「右舷反重力制御翼融解!!」
「右舷側全火器、使用不能!!」
「第二砲塔、大破!!」
左舷と右舷の全火器が使えず、主砲も沈黙。まほろばはこのとき、全ての戦闘機能を失った。
「全乗員をコアモジュールへ避難。急げ。」
重力制御を失ったまほろばはロケットの噴射により辛うじて浮いていられる状態だった。
ガブリエルはまほろばに狙いを定めると、トリガーを引いた。
「せめて、汝らの魂が幸いならんことを・・・」
ガブリエルの祈りをこめた一撃が、まほろばを貫くかと思われたその瞬間、ガブリエルの高出力ビームは横から襲来したビームの一撃を受け、霧消した。
「あれは・・・」
「かぐづち!!」
コクピットの中のガブリエルと昇が同時に言った。まほろば級2番艦かぐづち。まほろばを凌ぐ戦闘力をもつ、現在地球で最強の艦だった。